ザ・フライ(1986)

原題は「The Fly」(ハエ)

 

言わずと知れたデヴィッド・クローネンバーグの代表作

原作はジョルジュ・ランジュランの「蝿」(La Mouche, 1957)で

1958年に映画化された「蝿男の恐怖」のリメイク

原作とオリジナル版があることは知りませんでした(笑)

物質転送装置テレポッドの開発に成功した科学者が

自ら転送を試みると

紛れ込んでいたハエと遺伝子レベルで融合してしまう、というものですが

研究一筋だった科学者の純愛から

ハエと融合し超人的な肉体を手に入れたことで常軌を逸

やがて人間としての姿も精神も失ってしまうまで

なかなか見事に組み立てられたプロット

背中に生えた数本の毛から、徐々にハエ男に変貌していく造形は

こんなグロテスクなことよく思いついたものだと、感心してしまう(笑)

爪が剥がれ、歯が抜け落ち、消化液のゲロ

蛆虫を出産するシーン(産婦人科医を演じたのはクローネンバーグ本人)

公開当時妊婦への鑑賞を控える警告文が出されたというのも納得

カメラはマーク・アーウィン

特殊メイクはクリス・ウェイラス

第59回アカデミー賞ではメイクアップ賞を受賞しています

バートック社の企業パーティー会場で

女性記者ヴェロニカ(ジーナ・デイビス)に一目惚れした

科学者のセス(ジェフ・ゴールドブラム)は

彼女の気を惹くため自分の秘密の研究所に連れて行き

開発中の物質転送装置テレポッドを見せます

それは隣り合う2つのポッドの片方に収めた物体を一度分解し

もう片方へ送り再構築する、というもので

すでに無機物の転送実験には成功していました

ヴェロニカはセスの研究を特ダネとして記事にしようとしますが

ヴェロニカの元恋人で(復縁を迫ってる)上司のステイシス(ジョン・ゲッツ)は

現実的でないと却下

 

テレポッドの完成前に情報が洩れることを避けたいセスは

ヴェロニカに小さな記事ではなく

有機物の転送が成功するまで密着取材して

著者として本を発表したほうがいいと提案します

セスの研究所に機材を持ち込み取材をするようになるヴェロニカ

ヒヒを使った生体実験では

転送されたヒヒの体表が無残に裏返ってしまいますが

 

天才すぎて変人のセスに

(それがチャーミングともいえる絶妙さ)

ヴェロニカのほうも惹かれていき、ふたりは恋人になると

セックスの素晴らしさに目覚めてしまうセス(笑)

ヴェロニカとの食事のためステーキ肉を用意したセスは

肉は「新鮮」であることが大事、と気付き

テレポッドに「新鮮」な肉の情報を新たにプログラミングすると

ステーキ肉の転送に成功

2度目のヒヒ(このヒヒが可愛い)の転送にも成功するのでした

実験の成功に喜ぶふたり

 

そんなときヴェロニカの上司のステイシス

ヴェロニカから復縁を断られた腹いせに

セスの研究を自分の記事として無断で掲載しようとみます

記事の掲載を止めさせるためステイシスのところに向かうヴェロニカ

ヴェロニカがステイシスとヨリを戻したと勘違いしたセス

やけを起こして酒を飲みテレポッドに入ると

酔った勢いで自らを転送させる実験をします

転送は成功しますが、その時1匹のハエがポッド内に紛れ込んでいたことに

セスは気がついていませんでした

ヴェロニカが戻り、彼女が潔白であることを知り安心しますが

転送により強靭な肉体を手に入れたセスは

どれだけ性行為しても満たされなくなり(精液が枯れることがない)

音を上げてしまうヴェロニカ

 

「転送で細胞が分解し再構築されたことで肉体が浄化された」と推測したセスは

ヴェロニカにも(自分が満たされるため)転送するよう強要します

ヴェロニカが拒絶したことでふたりは喧嘩になり

数日後(やっぱりセスが好きな)ヴェロニカが戻ってみると

セスの背中に奇妙な毛が生えているのを見つけます

ヴェロニカがその毛を研究所に持ち込み調べてもらうと

それはヒトではなく昆虫の毛だという結果が出ます

その頃にはセスの身体には著しく変化がおとずれ

ヴェロニカが転送で異常が生じたのではないかと訴えると

セスは転送データを確認

ハエの遺伝子がまぎれ込んでいたことを知ります

それから4週間後、再びヴェロニカがセスをたずねると

セスは壁や天井を這いまわり、口から消化液を出して食事

髪の毛、耳、鼻、歯、陰茎までも身体から剥がれ落ちていました

 

同じ頃セスの子を妊娠したことがわかり、ステイシスに相談

巨大な蛆虫を出産するという悪夢を見てしまい中絶を決意します

セスは産婦人科病院からヴェロニカを拉致

子どもを産んで欲しいと頼むだけならまだしも

セスは転送装置でヴェロニカ(と胎児と融合すれば

(ハエより人間のDNAが多くなり)

一体化し完全な家族になれると言い出します

 

そこにステイシスがヴェロニカを助けるため

ショットガンを持って駆けつけますが

セスが吐いた消化液で手足を溶かされ気絶してしまいます

ヴェロニカの抵抗セス下顎が外れると

セスの肉体はさらに崩壊(羽化)が進み

完全なハエ人間ランドルフライなります

ランドルフライはヴェロニカを片方のポッドへ押し込むと

転送装置のタイマーをかけもう1つのポッドに入ります

その時意識を取り戻したステイシスが

転送装置とヴェロニカの入ったポッドを繋ぐケーブルを銃で破壊

ヴェロニカは逃げ出し

ヴェロニカを阻止しようとランドルフライもポッドの外へ出ようとしますが

その途中でタイマーが作動し転送がはじまってしまいます

ポッドの部品と融合してしまうブランドルフライ

もはや立つこともできない異形となったセス

わずかに残った自我でショットガンの銃口を自分の頭部へ向けると

ヴェロニカに殺してほしいと懇願します

 

かって純真だったセスへの愛を捨てきれず

泣きじゃくるヴェロニカでしたが

最後は彼の要望を受け入れたのでした

この役柄を大いに気に入ったという

ジェフ・ゴールドブラムジーナ・デイビスは交際に発展し翌年結婚(笑)

ふたりの結婚生活は3年ほどでしたが

 

ジーナ・デイヴィスは次の夫のレニー・ハーリン監督で

続編の「Flies(フライズ)」を企画

映画化には至りませんでしたが

ザ・フライ」がいかに愛された映画だったかがわかります

(でも万人にはおススメ出来ません 笑)



【解説】映画.COMより

科学者のセスは記者のベロニカに開発中の物質転送装置を公開する。生物の転送実験で失敗が続くが、やがてセスは自らの体を転送することに成功。しかもその後、彼の体には驚異的な活力が備わる。セスは、転送装置に一匹のハエが紛れ込んでいたこと、そしてそれが転送後にセスの体と遺伝子レベルで融合したことを知る。彼の肉体はみるみる変化し、ついには惨たらしい姿に……! 58年作「蝿男の恐怖」をリメイク。おぞましくも悲痛なドラマが展開する。

1986年製作/96分/アメリ
原題または英題:The Fly
配給:20世紀フォックス映画