冬の旅(1985)

原題は「Sans toit ni loi(屋根も法もない=バガボンド)

冬のブドウ畑で身元不明の若い女の凍死体が見つかった、という実話を基に

インタビュー形式を織り交ぜたドラマ作品

これから何者にでも成り得ることのできるはずの若者が

なぜ世捨て人となり旅を続けたのか

助けようと手を差し伸べる大人には背を向け

食べ物や寝床を得るため、安易に売春や犯罪に走ってしまう

現代風にいうなら、トー横キッズや

やりたいことが見つからないまま

特殊犯罪に巻き込まれてしまう若者の姿とも重なってしまう

自由を求めているようでも結果、過酷で悲惨な運命が待ち受け

堕ちていってしまうのです

そんなひとりの少女と、錆びれた田舎の農村を

長回しで横移動のカメラが追いかけていくと

それは不思議と優雅な風景で、画面から目が離せなくなります

日本ではスポットを浴びなかったそうですが

フランスでは大ヒット、批評家から絶賛

ヴェネツィア映画祭では金獅子賞を受賞しています

南フランスのガール地方

ある寒い冬の朝、農夫がドウ畑で若い女の遺体を見つけます

地元の憲兵外傷がないことから彼女が凍死した浮浪者であると判断

「ポッター(陶芸家の畑に埋葬することにします

(見知らぬ人、貧困に苦しんでい人、犯罪者などを埋葬する共同墓地)

そこから彼女の死の数週間前までに出会った人々の証言によって

物語は綴られていきます

さらに数週間の出来事にスポットを当てているので

住民たちはなにかしら繋がりがあるんですね

少女は18歳で名前はモナ(サンドリーヌ・ボーネール)

彼女は最初海から現れ(身体を洗うため水浴していたのだろう)

ヒッチハイクとキャンプをしながら旅をしています

男たちが車に乗せるのは身体目的なことはミエミエ

といっても、ホームレスの女にも男を選ぶ権利はある

おなじく放浪するユダヤ人の青年ダヴィッドと

宿(といっても民家に不法侵入)を共にしたり

ガソリン・スタンドの主人や

彼女の自由な生き方に憧れるメイドのヨランドや

山中でヤギを飼う(元学生運動のリーダーの)夫婦に助けられ

仕事の手伝いをして(たまに献血)食事や寝床にありつきますが

モナは真面目に働いてお金を稼ぐ、という感覚を全くもっていない

長続きすることはなく、直ぐに飽きて再び旅に出ます

そしてこの映画に登場するさまざまな「犬」たち

野良犬、首輪をした犬、ペット、番犬
犬を人間の象徴として描いていることがわかります

ヒッチハイクで知り合い、スズカケ(プラタナス)の木の病気を調べているという

女性教授マダム・ランディエ(マーシャ・メリル)に気に入られ

モナは「モナ・ベルジュロン」というフルネームと

一時は大学に行き、秘書として働いたことがあることを打ち明けます

(本当か嘘かはわからない)

マダム・ランディエ はモナに秘書にならないかと誘いますが

「私は楽して生きたいの」と断り、マダムのもとを去ってしまいます

助手のジャン・ピエールにモナを探させるマダム

メイドのヨランドが仕えていた老婆が、このピエールの叔母リディであり

ピエールはリディの家と財産が欲しいピエールの妻エリアンにたぶらかされ

リディは財産を奪われたうえ高齢者施設に入れられてしまいます

その頃モナは駅でたむろし飲酒、麻薬、軽犯罪を繰り返す

不良グループと一緒に過ごしていました

(不良グループのリーダー?のパウロはメイドのヨランドの恋人)

駅でモナを見つけたピエールですが

以前よりさらに汚れて手を付けれないと感じたピエールは

マダム・ランディエに報告するのを止めます

不良グループのアジトに(マリファナ売買のいさかいで)火がついてしまい

昼寝中だったモナは毛布1枚だけ持って逃げ出します

火事のせいでテントも寝袋も失い

農家のビニールハウスで寒さをしのぐことにしますが

空腹に耐えかね町に食べ物を求めに行くと

突然男たちにワインを浴びせられてしまいます

それは収穫祭(ワイン祭)を祝う町民たちでしたが

何も知らないモナは恐怖におびえて逃げ出します

ワインで濡れた衣服せいで、モナの身体はさらに冷え体力も奪われる

つまづいて堀に落ちたモナは、起き上がることが出来きず

そのまま夜を迎え翌朝には息絶えていたのでした

ほんとうのロード-ムービーとは夢や憧れに満ち溢れたものではない

生きるためには苦難に立ち向かい、時には男に身を委ねなければ現実

アニエスは女性映画人として最も活躍し成功したひとりだけど

彼女にしかわからないとてつもない苦労があったのだと思います

そのことが余計この作品に、リアリティを感じさせるのかも知れません

 



【解説】映画.COMより

冬の南フランス。片田舎の畑の側溝で、18歳の少女モナが凍死体となって発見された。ヒッチハイクをしながらあてのない孤独な旅を続けていたモナが命を落とすまでの数週間の道程を、彼女が路上で出会った人たちの証言を通してたどっていく。
仕立て屋の恋」のサンドリーヌ・ボネールが主演を務め、「昼顔」のマーシャ・メリル、「ふたりの5つの分かれ路」のステファーヌ・フレス、「セラフィーヌの庭」のヨランド・モローが共演。フランスでは当時100万人を超える動員を記録し、バルダ監督最大のヒット作となった。

1985年製作/105分/フランス
原題または英題:Sans toit ni loi
配給:ザジフィルムズ