
Flowは猫の名前だと思ったのですが(笑)
原題は「Straume」(ラトビア語で(川や潮流などの)流れ)
私が動物好き、猫も飼っているせいかも知れませんが(笑)
素晴らしい映画でした

人間がいなくなったアポカリプス(キリスト教における黙示)の世界で
地球温暖化によるものと思われる、水位上昇によって
流された黒猫と、犬と、カピバラと、猿と、鳥が旅するというもの
当然言葉は通じない、習性も全く違う
この4匹と1羽がどう洪水を乗り切っていくのかというもの

オープンソース(誰でもフリーで利用できるソフトウェア)「Blender」を使い
わずか50人のスタッフで製作
確かにメジャー系アニメと比べると精密さでは劣るものの
マットな質感が印象派の絵みたいで、逆に新鮮で良い(笑)

第97回アカデミー賞では、国際長編映画賞と長編アニメ映画賞にノミネートされ
インディペンデント作品では史上初の受賞(長編アニメ部門)を成し遂げたという
今やアカデミー賞も下品な映画が軒を連ねる中で
こういうアート的な作品が評価されるということは
まともな会員もいるという証ですね(笑)
しかも北欧の小国の快挙、受け取ったオスカー像は監督の手元にあるわけでなく

ちなみに監督のギンツ・ジルバロディス(1994生)は
テレビアニメ「未来少年コナン」に触発されて本作を作ったそうです
オブジェに囲まれた猫ちゃんの家なんか、まんまジブリの世界だし
猫ちゃんも「魔女の宅急便」の黒猫の子そっくり
カピバラとワオキツネザルの描写も、伊豆シャボテン動物園のを研究したとか
どれだけ日本が好きなの、って感じで嬉しいすね(笑)

黒猫は監督自身がモデルだそうで
(彫刻家の父親と画家の母親だということが猫の住む家にも現れている)
高校卒業後、アニメを学ぶ学校がなかったため
独学でアニメーション、サウンドデザインを研究し2010年から短編映画を発表
これまでたったひとりでアニメ制作してきたそうで
今回の「Flow」ではじめて他のスタッフと仕事したそうです

そしてラトビアという国の背景を知ることによって
この映画のテーマが、もっと浮き彫りになるのではないかと思います
次はこの「バルト海三国」が攻撃されると言われている存在

しかもラトビアは約18万人もの非国籍者問題を抱えており
それらの人々がほぼロシア系であること
長らくソ連の支配下にあったため共通語がロシア語だったにもかかわらず
公共の場所や教育現場でのラトビア語以外の使用を禁止するという
プーチン大統領がいかにも「ロシア人を助けるため」と言い出しそうな理由がいっぱい

でも今やネット社会
若者たちは家にいても外国の情報を知り、新しい世界に憧れる
もっともっと他の国の人々と仲良くなりたいのです
違う宗教や文化を破壊する、まして命を奪う戦争などなんて愚かしいことか
お互いを知ってこそ世界は面白いのに

その象徴が1羽の若い鳥(ヘビクイワシ)ですね
見た目は美しいけれど、その名の通りコブラまで食するという獰猛な鳥で
主な主食は昆虫や小型の哺乳類だそうです
ヘビクイワシの群れが猫ちゃんを食おうと狙うと
若い鳥さんはヘビクイワシのリーダーに猫ちゃんの命を救うよう懇願し
ヘビクイワシの掟でリーダーに決闘を挑むことになりますが、結果負けてしまいます
さらに仲間から片方の翼を折られ、群れからも追われてしまう
ただ猫ちゃんを助けたかった、仲良くなりたかっただけなのに
それはレトリバー君も同じですね

果報は寝て待ての、いかにも穏健派なカピパラ船長の船の乗組員になった鳥さんは
旅の末、神殿(マヤの遺跡)のような遺跡に辿り着くと、天に召されます
鳥さんは自ら生贄になったのでしょうか
その時から水位が下がり始め、再び森が現れます

わが家に帰ろうとする猫ちゃん
そのとき陸に打ち上げられたクジラを見つけます
猫ちゃんが溺れたとき助けてくれたクジラ
船の帆が木に引っ掛かって動けなくなったときも助けてくれたクジラ
猫ちゃんは動けなくなったクジラに頬ずりすると、考える
それから近くに水たまりを見つけると、また考える

どうしたらクジラを助けれるか
この小さな水の流れに乗せて、水中に帰すことができるのか
水たまりを見つめ、考える、考える、考える
そこにカピパラ船長と、レトリバーと、猿さんもやってきて
一緒に考える、考える、考える

そこでエンドクレジット
amazonプライムビデオではそれで終わり
次のおススメ作品に勝手に移行してしまいましたが
(ホントこれ、余韻を楽しみたいムービーファンにとってやめて欲しい)

実際のポストクレジット(エンドクレジット後の映像)では
クジラが海に浮かんでいる様子が映し出されているそうです

動物には生態系というものがありますが、人間も同じ
誰か様、お偉い様の都合で侵略したり滅ぼそうとすることは
人類の、地球のバランスを崩してしまうこと
その地域に住む人々や動物たちの生活を尊重し、環境を守ること
そのことは国際的に保護されなければいけないのです
そのことが結果、安定した生活に繋がるのだから

そして私たち年寄りは、若いクリエイターにもっと学ばなきゃいけません(笑)
この映画のように、たとえ言葉は通じなくても
彼らこそ次の未来を真剣に考えている
誰もが恐怖に怯えず、安心して生きれることを
私的に今年のアカデミー賞受賞作品のなかでもダントツ1位
たとえ言葉はなくても、アニメの底力を感じる傑作
久々の「お気に入り」を献上させていただきます
【解説】映画.COMより
洪水に呑まれゆく世界を舞台に、1匹の猫の旅路を描いたラトビア発のアニメーション映画。世界が大洪水に見舞われ街が消えていくなか、1匹の猫が旅立つことを決意する。流れてきたボートに乗り込んだ猫は、一緒に乗りあわせた動物たちとともに、想像を超える出来事や危機に襲われる。時に運命に抗い、時には流され漂ううちに、動物たちの間には少しずつ友情が芽生えはじめる。
監督・製作・編集・音楽を1人で手がけた長編デビュー作「Away」で世界的に注目されたラトビアのクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督が、5年の年月をかけて多くのスタッフとともに完成させた長編第2作。2024年アヌシー国際アニメーション映画祭にて審査員賞・観客賞を含む4部門を受賞し、2025年・第82回ゴールデングローブ賞ではラトビア映画史上初の受賞となるアニメーション映画賞を、第52回アニー賞では長編インディペンデント作品賞、脚本賞を受賞。第97回アカデミー賞でも長編アニメーション賞と国際長編映画賞の2部門にノミネートされ、長編アニメーション賞を受賞した。
2024年製作/85分/G/ラトビア・フランス・ベルギー合作
原題または英題:Straume
配給:ファインフィルムズ