心の指紋(1996)

原題は「Sunchaser」(太陽を追う者)

天国の門」(1980)の失敗でユナイテッド・アーティスツを倒産させ

その後映画界では恵まれない境遇を送ることになった

マイケル・チミノのクライム・ロードムービー

 

1996年のカンヌ国際映画祭ではパルムドールを争ったものの

その年の審査員長だったフランシス・フォード・コッポラ

チミノを嫌っていたため受賞できず

結果的にこれがチミノの早すぎる遺作となってしまいます

前科6犯、義父殺しで末期がんの少年が医者を人質に病院を脱走し

グランドキャニオンのナヴァホ族居留地にある“聖なる山”を目指すというもの

ナヴァホ族にはその山の頂にある湖の水にひたれば

どんな病も治るという言い伝えがあったからです

 

でもたとえ病気が治ったとしても、少年の未来が明るいはずはない

一生刑務所で暮らすことはほぼ確定しているからです

私には少年が死に場所を探しにいったとしか思えません

最後は幸福な夢をみたかったのだろうと

ただこの時代だからファンタジー的で感動するけれど

今の若い人には受けないでしょうね

なぜならGoogleマップで発見できてしまうから(笑)

養父の頭を銃で吹き飛ばした罪に問われている

インディアンのナヴァホ族との混血で16歳の

ブルー(ジョン・セダ)が警官に付き添われて診察にきます

ハーバード大卒の医学博士マイケル(ウッディ・ハレルソン)は

ブルーが余命1ヵ月と診断

友人の医師から国立衛生研究所での実験的な治療を薦められたマイケルは

ブルーの移送に同行することになります

ブルーは友人が病院のトイレに持ち込んだ拳銃を換気口から取り出し

警官を撃ちマイケルを人質にすると彼のポルシェで病院を脱走

マイケルはその日、外科部長への昇進が決まる

上司との大事なディナーに妻と共に招かれていました

凶悪犯と逃走だなんて出世を棒にふったも同じ

仲間のところに向かったブルーは

ポルシェからボロボロのキャデラックに乗り換えると

(拳銃をトイレに隠した)友人のところに行き

ウェブスター・スカイホースの電話番号を受け取ります

車を塗装してナンバーを換えアリゾナに向かうふたり

ウェブスター・スカイホースとはナヴァホ族居留地にいる祈祷師で

聖なる山にある伝説の湖への案内人のこと

その湖に入るとどんな病でも治ると言い伝えられているのです

旅の途中で、エリートのマイケルは今まで無縁だったアメリカの実態を知り

底辺に生きる人々に出会います

スラム街、狂信的カルト集団、田舎の白人の不良たち

妻と娘に電話をかけようとしたら

(マイケルに裏切られたと思った)ブルーから

彼はゲイでトイレで襲われそうになったとバイカーたちに殴られる

蛇に噛まれて歩けなくなったため、ブルーに置いていかれたマイケルが

(バッテリーケーブルで電流を流して毒を中和するのか)

レナータ(アン・バンクロフト)という女性の車に乗せてもらうとブルーを発見

ブルーはレナ-タに父はナヴァホで

目的地はフラッグスタッフの北のシップロック

聖なる山にある湖だと伝えると

「そこが好きだ」「癒しのパワーがある」とレナ-タ

西洋医学では病気は薬や手術で治ると思っている

マイケルのことを「医者は弁護士より悪い」と笑うのでした

フラッグスタッフに到着し、レナータと別れると

「ウェブスター・スカイホース」に電話するブルー

マイケルを解放し、ひとりでシップロックに向かおうとします

しかし、今さらブルーを見捨てることなんてできません

マイケルはブルーと同じ16歳で

癌で死んだ兄のことを思い出していました

延命治療に苦しんでいた兄は、彼が欲しがっていた銀の指輪をあげるかわりに

生命維持装置のスイッチを切るよう頼みます

スイッチを切ったマイケルは病室から逃げ出します

マイケルが外科医になったのは

兄のように苦しんでいる患者を助けたい

一方で延命治療にも反対だったかも知れません

だからブルーが病院ではなく、奇跡の湖で病気を治したいという願いを

叶えてあげたい気持ちになっていくのです

ブルーの容体が悪くなると

盗んだ車に乗り、銃を持って病院から点滴機材と薬を強奪する

 

ここでブルー死なせるわけにはいかない

聖なる山まで連れて行くんだ

ナヴァホ居留地に入ったマイケルとブルーは

ふたりを追う警察の検問に気づきます

ナヴァホの若者たちが乗る馬の集団に遭遇すると

彼らの協力で馬と土煙に紛れて逃げることに成功

スカイホースのだという場所に到着すると、誰もおらず

そこでブルーは彼とは8歳の時に会ったきりで

聖なる山のことが書いてある大事にしていた本も

刑務所の図書館から盗んだことを告白します

ブルーの嘘に付き合わされ医師としての地位を失ったと怒るマイケル

そこに銃を構えた女性タリサ・ソト)が現れ

スカイホースの孫だと言います

彼女はふたりのことをニュースを見て知っていて

ブルーが電話にメッセージを残した相手だとわかります

スカイホースは国税庁から逃げていて

「失われた渓谷」に行けばスカイホースに会える

そこはナヴァホにとって精霊が宿る場所で

精霊の言葉に耳を傾けるべきだと言い

失われた渓谷への行き方を教えてもらいます

マイケルとブルーが失われた渓谷に着くと、目の前に聖なる山

同時に盗難車を見つけたヘリがふたりを探します

ブルーを担いで山頂を目指すマイケル

そこに湖はありませんでしたが

突然現れたスカイホースにマイケルは

ブルーを助けてほしいと頼みます

マイケルにも一緒に来て欲しいと頼むブルーに

マイケルは「自分も救われた」と兄の形見の指輪を渡し

家族の元に帰るとことを伝えます

湖を見つけたブルーは小鳥に案内され消えていき

ヘリコプターに発見されたマイケルは逮捕され

迎えに来た妻と娘と抱き合うのでした

 

 

【解説】KINENOTEより

殺人を犯した末期ガンのインディアン青年と、彼の逃避行に巻き込まれたエリート医師が、伝説の湖を目指して西部の荒野を旅する姿を、ヒューマンなタッチで描いた一編。監督は「天国の門」のマイケル・チミノで、「逃亡者」(89)以来6年ぶりに手がけた一作。 製作はチミノと「評決のとき」などのアーノン・ミルチャン、ラリー・スピーゲル、ジュディ・ゴールドステイン、ジョゼフ・S・ヴェッキオ。脚本は、チミノの原案を基に、本作が本格デビューとなるチャールズ・リーヴィットが執筆。撮影は「ラスト・オブ・モヒカン」のダグ・ミルサム。音楽は「雲の中で散歩」の巨匠モーリス・ジャール。主演は「ラリー・フリント」のウッディ・ハレルソン、「真実の行方」のジョン・セダ。また、「ホーム・フォー・ザ・ホリデイ」のアン・バンクロフト、「幌馬車」などジョン・フォード映画の常連ハリー・ケーリー・ジュニアなどが特別出演