
原作は押見修造の実体験(中学2年生の頃より吃音を患う)に
基づいて描いた同名のウェブ漫画
高校に入学した志乃は吃音のため
自分の名前さえ上手く言うことができない
音楽好きだけど音痴で歌うことがコンプレックスな加代は
歌っているときはどもらない志乃とバンドを組み
文化祭で披露する決意をしますが
そこにいつも志乃をからかう菊地が入ってきたため
志乃と加代の関係までギクシャクしてしまいます

お互い不器用な3人がバラバラになったまま
ハッピーエンドにはならない
気持ちよく終われない
かとって、バッドエンドでもない
自分が傷つけられる事には敏感なのに、人を傷つけても気付かない
相手を気遣えず、ずいぶん自分勝手な志乃だと思ったけど
奇跡って簡単に起こらないほうが普通
喧嘩して、素直になれなくて、後悔して
寂しい思いをしながら成長していく
中高生の頃の友情ってそんなもんだったかも

高校の入学式の日、大島志乃は朝起きてから学校に到着するまで
自己紹介の練習をしています
担任の小川先生が教室に入り、志乃の自己紹介の番がやってくると
あんなに練習したのに緊張で声が出ず
やっと「しの、おおしまです」と言うと
真っ先に自己紹介をはじめた男子の菊地が「外人?」と声をあげ
他の生徒たちも菊池に煽られて笑いします
そのことは入学早々志乃のトラウマになってしまいます
学授業で先生に教科書を読むよう当てられても
志乃は声を出して読むことが出来ず、先生が「パス」と次の人に当てると
菊池は志乃だけパスできるのは「ずるい」と騒ぎます
下校時の自転車置き場で志乃の姿を見つけると
「名前言ってよ、名前」「シノ・オオシマでーす」とからかいます
菊池は決して志乃に対して悪気があるわけではありません
ただウケたい、皆を笑わせたい、人気者になりたいだけ
そのことがどれだけ志乃を深く傷つけているかもわからずに

担任の小川先生は、話せない志乃に
緊張するのはたぶんみんなと打ち解けてないからだと
「名前ぐらい言うようになろう」と励ましますが
クラスの皆が昼休みにグループになってお弁当を食べるようになっても
志乃は校庭の片隅でひとり芝居をしながらお弁当を食べています
(ひとりだと、どもらないで喋ることができる)
すると、すぐそばの階段でクラスメイトの岡崎加代が音楽を聴いていました
加代に話しかけようとする志乃に
「喋れないなら書けばいいじゃん」と自分のメモ帳とペンを渡し
「なにか面白いことを書いてよ、そしたらあげる」と言うと
志乃がメモ帳に書いたのは「おちんちん」

放課後、志乃は「一緒に帰らない?」とメモ帳に書いて加代に見せ
加代が「家に遊びに来る?」と志乃を誘うと頷きます
加代がドーナツを「食べる?」と聞くと
(「ありがとう」と言えず)「サンキューです」と答えます
志乃は母音から始まる言葉が特に苦手で、だから自分の名前も言えない
原因は分からないことを(メモに書いて)説明します
加代の部屋にはたくさんのCDとアコースティックギターがあり
志乃は加代にギターを「きかせて」と頼みます
「笑わない」ことを条件に「あの素晴らしい愛をもう一度」を弾き語りする加代
しかし加代のあまりの音痴に志乃は笑ってしまい
怒った加代はギターを投げ捨て「帰れ!」怒鳴ります
泣きながら家に帰る志乃

翌日、書店で立ち読みしている加代を見つけた志乃は
書店から出た加代の後をついていきます
加代がカラオケ屋の前にくると中学の同級生とバッタリ会い
同級生たちは中学での合唱コンクールで
加代の歌がいかに音痴で笑えたかを話し合い
もう一度カラオケで歌って欲しいと加代を誘います
それを聞いた志乃は突然加代の前に飛び出し
「か、か、かよちゃんは、わ、わ、わたしと、約束がある」と叫び
同級生たちを追い払うと
「わ、わ、わらって、ごめんなさい」
「かよちゃんは、わたしのことを、わらわなかったのに」と
加代に謝るのでした

「歌はつっかえずに歌えるの?」と、加代は志乃を誘ってカラオケ屋に入り
「翼をください」を選曲しマイクを渡すと
志乃はどもることなく歌うことができました
しかもその美声に加代は驚きます
志乃に一緒にバンドをやろうと誘う加代
「私がギターを弾いて、志乃が歌うの」
それから志乃と加代は一緒に歌の練習をするようになり
志乃は加代と話すときは、いつの間にかどもりが消えていました
加代は志乃に一緒に文化祭に出ようと誘い、バンド名は「しのかよ」
夏休みになり、ふたりは人前で歌えるよう特訓することにします

最初は人気のない公園の橋の上で
加代のギターに合わせて志乃が「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌う
観客は公園の用務員のおじさんひとり
やがて足を止めて演奏を聞く人が現れ、曲のレパートリーも増えていきます
ふたりは少しだけ人の多い場所で路上ライブに挑戦しようと
駅前で「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌っていると
そこに偶然、自転車でやって来た菊池が
「何やってんの?お前ら」と声をかけたのでした

志乃にとってクラスで一番苦手で、大キライなやつ
志乃は歌えなくなり、その場から逃げ出してしまいます
加代にはわけがわかりません
夏休み明けの登校日、志乃を心配する加代でしたが
そこに菊池がやってきて、クラスメイトの皆の前で
「何とこのふたり、路上ミュージシャンなんです~」と紹介し
「昨日みたいに歌ってくれよ」と志乃にしつこく頼みます
思わず菊地の顔を平手打ちしてしまう志乃

放課後になると、自分も楽器が出来る、タンバリンを演奏できるから
バンドに入れてほしいと頼みにきた菊池
さらに翌日には、志乃と加代が音楽を聴いて楽しそうに笑っていると
菊地が「注目!」とタンバリンの演奏を始めます
しかしクラスメイトたちからは無視され
志乃と加代は菊地が校舎の裏で吐いているのを見てしまいます
加代は菊地が中学生の頃いじめを受けていたことを志乃に教え
菊池に同情した加代は、「しのかよ」で
バンド体験させてやってもいいかもと提案します
「かよちゃんが、いいのなら」と答える志乃

意外にも菊池は音楽に詳しくCDも多くもっていて
加代と意気投合します
ふたりの会話に入っていけない志乃は
歯医者だった、と嘘をつきひとりで帰ってしまいます
加代の家で、オリジナル曲の詞を書いてみないかと加代に誘われた志乃
そこにまた菊地がやって来て「いいじゃん、書いたら?大島」と
勝手に口を出してきます
それから加代と菊池が「あの素晴らしい愛をもう一度を」を演奏しますが
志乃は「あ、あ、あ・・う、う、う」と声が出なくなってしまい
加代の家を飛び出し浜辺まで逃げます
志乃を捕まえた加代が
「何か気に入らないことした?菊地がうざい?」聞くと
志乃は砂地に「しのかよもうやめる」と書き、走り去ってしまいます
体調不良を理由に学校を休むようになる志乃
(登校拒否の原因は吃音だと思ってる)志乃の母親が
志乃に催眠療法のチラシを見せると
志乃は母親に本を投げつけ、家を飛び出してしまいます

町をぶらぶらしていると、買い物に来ていた菊地にバッタリ会い
「アイスおごるから」と無理やり誘われ
「また、しのかよやろうぜ!3人で」と志乃を励まそうとしますが
志乃はうつむいたまま、菊池の顔さえ見ることが出来ないのです
菊池もやっと悟ったのか、志乃のこと馬鹿にしたことを
「あれ悪かったな」謝ります
そしてどうしても「しのかよ」をやりたい気持ちを打ち明けます
「お前らの中に入れて貰えたら、もしかしたらすげぇ楽なんじゃないかって」
志乃は「な、な、なんで」「うるさい!」と怒鳴り
アイスを投げ捨てフードコートから出て行ってしまうのでした

菊池もクラスの皆から浮いていてひとりぽっちでした
だからいつもひとりでいた志乃と、ひとりでいた加代に
自分と同じものを感じていたのかも知れません
でも志乃は菊池を許すことが出来ませんでした
翌日も志乃が部屋で寝込んでいると、 加代が家を訪ねて来て
志乃の部屋の前で泣きながら 「わかんないよ、言ってくれなきゃ」と訴えると
志乃は黙って部屋の扉を開け家を出ていき
路上ライブをやった橋を過ぎ、漁港近くのバス停留場のベンチに座ります
志乃の後をついてきた加代が「バス、行っちゃったね」と話すと

「こ、こ、こんなに、つ、つ、つらい、おもいするなら」
「ひ、ひ、ひとりでいい、だから・・」と言う志乃
加代は「もう分かったから」と告げ、ひとりで帰ることにします
それから志乃は登校するようになりますが
加代とも誰とも関わることはなくなります
菊地は加代に言われて脱退し
加代はひとりでオリジナル曲を作っていました
菊地は志乃に「しのかよ」をクビになったと明かし
文化祭では加代がソロで歌うと教えます、さらに志乃に対し
「空気消して私なんてどこにもいないってふりして、だせーよ」
「お前は死んだ魚の目だ」と苛立ちをぶつけるのです
逃げる志乃
文化祭当日、志乃が登校すると、教室に加代と菊地の姿
志乃はふたりを避けると、校舎の隅に行き丸くなって座ります
やがて体育館で「バンドコンテスト」が行われている音が聞こえ
司会者が次の出番は「しのかよ」だと呼ぶ
加代は友だちが詞を書いて歌うつもりが叶わなかったこと
初めて作った曲をひとりで歌うことを説明します
「魔法」聴いてください

♪魔法はいらない 魔法はいらない
♪みんなと同じに喋れる魔法
♪魔法はいらない 魔法はいらない
♪みんなと同じに歌える魔法
体育館に入り加代を見つめる志乃
曲が終わるとひとり大きな拍手をする菊池
司会者が「気を取り直して・・ 次の出演者」と言おうとすると
突然志乃が「私は自分の名前が言えない!」と大声で叫びました
体育館の全員が志乃に注目する

言えない!言えない!言えない!言えない!言えない!
なんで!どうして!知らないよそんなこと!
緊張してるから!みんなと打ち解けないから!
そんなの関係ないんだ、どうして私ばかり
怖い怖い怖い、だから、だから逃げた
誰にも喋らなければバカにされない、逃げて逃げて逃げて
言えない言葉を別の言葉に置き換えて
それでもっと喋れなくなって、でも私が追いかけて来る
私が私を追いかけて来る
私をバカにしているのは、私を笑っているのは
私を恥ずかしいと思っているのは、全部私だから
私は、私は、お、お、お、大島志乃だ!
これからも、これがずっと私なんだ
舞台の上から志乃を優しく見つめる加代
文化祭が終わり、生徒たちはいつも通りの授業に戻り
菊地は(入学したころの志乃のように)校舎の隅で昼休みを過ごし
加代は屋上でギターの練習
志乃は教室の自分の席でお弁当を食べています

するとクラスメイトの女の子が紙パックのジュースを志乃の机に置き
「あげる」と声をかけてきました
少しびっくりした志乃でしたが「あ、ありがとう」と
お礼を言うことができました
案外クラスメイトたちは、志乃が思うほど
志乃のどもりのことなど気にしていなかったのかも
それより一番助けが必要なのは、菊池のほうかも知れません
【解説】映画.COMより
漫画家・押見修造が実体験をもとに描いた同名コミックを、「幼な子われらに生まれ」の南沙良と「三度目の殺人」の蒔田彩珠のダブル主演で実写映画化した青春ドラマ。上手く言葉を話せないために周囲となじめずにいた高校1年生の大島志乃は、同級生の岡崎加代と校舎裏で出会ったことをきっかけに、彼女と一緒に過ごすように。コンプレックスから周囲と距離を置き卑屈になっていた志乃だが、加代にバンドを組もうと誘われて少しずつ変わっていく。やがて、志乃をからかった同級生の男子・菊地が強引にバンドに加入することになり……。林海象監督や押井守監督のもとで助監督を務めてきた湯浅弘章監督が長編商業映画デビューを果たし、「百円の恋」の足立紳が脚本を手がけた。
2017年製作/110分/G/日本
配給:ビターズ・エンド