心のカルテ(2017)

「人生は理不尽だ」

「大人になれと?」

「簡単に言えばそうだ」

 

原題はTo the Bone」(骨まで=極度にギリギリまで切り詰めること)

拒食症(摂食障害)の女性が死に直面するまでと

それをきっかけに立ち直ろうとするまでの姿を描いたもの

日本でも拒食症の患者は推定22万人もいるそうで

完全に回復できる人と

部分回復と慢性化(食事とダイエットを繰り返す)の人が4割強

死亡率は5%~7%という「こころの病気」の中では最も高率だそうです

 

監督のマルティ・ノクソンも、主演のリリー・コリンズも

過去に摂食障害を患ったことがあるということ

リアリティが半端ない

なので拒食症の治療を受けている(特に)女性

本気で食事制限をしている女性

厳しい食事コントロールすることに自己陶酔してしまう女性が

この映画を見ることはおすすめしません

 

なぜなら「共感」するところが多いと思うから

本作の公開でも「拒食症を美化している」という批判もあったそうです

主役を演じたリリー・コリンズは健康維持のため

撮影中と撮影後の数ヶ月間に渡って

栄養士と相談しながら減量と体重増加を行ったそうですが

その痩せた姿には(女性の機能を失うなど)後遺症が残るんじゃないかと

見ているだけでヒヤヒヤ

リリーの母親は映画を見て泣いたそうです

 

ちなみに、このような極度な肉体改造を伴った演技のことを

デニーロ・アプローチ」というそうです(笑)

20歳のエレンは拒食症のための入院プログラムで治療中でしたが

本人に改善する気はなく、過激な発言を繰り返し

病院を追い出され父親が継母スーザン(キャリー・プレストン)と暮らす

家に戻ります

スーザンに悪気はないのだけど、どうにかエレンに食事させようという

おせっかいな言動がかえってエレンをイラつかせます

ハンバーガー・ケーキのシーンは監督の実体験らしい)

でもこういう遠慮なしに物を言ってしまう

鬱陶しいオバサンって多いですよね(笑)

父親はもっとトンデモなくて、会議だ出張だと仕事を理由に

一切エレンと顔を会わせません(登場しません)

家や子どものことには一切関与せず、妻にまかせっきり



義妹のケリー(スーザンの連れ子)だけは

お姉ちゃんのことが大好きで、尊敬しているんですね

そして本当にお姉ちゃんのことを心配しているんです

スーザンはエレンに拒食症の治療で有名だという

ウィリアム・ベッカム医師(キアヌ・リーヴス)の予約を運よく確保し

エレンに治療を受けるよう勧めます

ベッカム医師は治療するにあたりいくつかの条件を出します
食べ物の話はしない、自分の言葉で話す、親は口出ししない

最低でも6週間は入院することでした

キアヌ・リーヴスが主治医だったら、私なら何も文句言わない(笑)

エレンはそんなことで回復しないことはわかっていましたが

妹のケリーが励まされ、ベッカム博士の治療を受けることを決意

グループホーム「門出の家」に入居することになり

そこには黒人看護師のロボとセラピストのカレン

拒食症の元バレエダンサーの文学青年ルークアレックス・シャープ

過食したあと下剤を飲む妊娠中のミーガン

重度の拒食で鼻から点滴を受けているパール

過食と嘔吐を繰り返すアナ

(自分も過食症なのに)他人を冷静に観察する少女トレイシー

ピーナッツバターばかり食べる極端な偏食のケンドラ

6人の患者が暮らしていました

ここでは、誰かのお手伝いや雑用をこなすことでポイントを得られ

ポイントが貯まると(外出できるなど)制限が少しずつ解除される仕組みです

食事をすることもポイントになりますが

食べたあと30分はトイレ禁止(嘔吐防止)

(カロリーを消費するための)運動禁止されています

(でも夜中にこっそり吐いたり、腹筋をしたりしている)

エレンの最初の治療はファミリーセラピー

実の母親のジュディは同性パートナーのオリーブと現れ

父親はやはり仕事が忙しいことを理由に来てはくれませんでした

ベッカム医師は今回の目的は家族の全体を知ることだと説明すると

スーザンはジュディが娘を見捨てて、駆け落ちしたことを責めます

また人気イラストレーターとして活躍していたエレンが

Tumblr(タンブラー)に投稿した

(支持を得ようと彼女のやせ細った姿の)イラストがきっかけで

エレンのファンだった少女が自殺してしまったことがわかります

 

3人の母親の互い激しい口論がはじまると

「ごめんなさい 私は人間からお荷物になったんだね」 と

エレンは皮肉を込めて言うのでした

 

最後にベッカム医師が妹のケリーに意見を聞くと

ケリーはもう何年もどんなときも、エレンが死んでしまわないかと

心配で仕方がなかったことを伝えます

(お姉ちゃんが)「死んだら殺すから」

ケリーの言葉に、エレンは少しでも良くなるように努力すると約束しますが

体重は減り続ける一方

そこでベッカム医師はエレンが出来ないなら

名前を「イーライ」変えてみたらどうかと提案します

なぜか「イーライ」をという名前を気に入ったエレン

 

名前を変えるというのは、自分を変えるひとつの手段として

いいアイディアだと思います

イーライはほかの患者、特におせっかいでお調子者のルークと親しくなります

ルークはもともとイーライのイラストの大ファンだったんですね

彼女が入居してきて嬉しくてしかたがなかったと言います

ルークはイーライの好物だったというチョコレート菓子を用意する

ポイントで獲得した外食に誘い、ウェイトレスに(身分証明書がないため)

末期がん患者だと嘘をつきビールを飲み、食事(すぐに吐き出す)をする

こんなに楽しいことはひさしぶり

だけどルークが突然「愛している」と告白したうえ、キスまでしてきた

パニックに陥ったイーライはルークと距離を置くようになります

 

さらに妊娠12週目を迎えたミーガンに、皆でベビーシャワーを祝うことになり

イーライも妊婦のユニコーンのイラストを書き贈りましたが

胎動も感じ、順調に赤ちゃんが育っていると安心したミーガンは

「食べて吐く」「下剤を飲む」を再開してしまい流産したのです

そのことはミーガンだけでなく「門出の家」の全員にショックを与えました

そこでベッカム医師はアナに、皆の前でアン・セクストンという詩人

Courage(勇気)」という詩を朗読するよう頼みます

 

それはささいなことの中にある

赤ん坊の第一歩は大地を揺るがす

初めて自転車に乗って道路を走った時

初めてお仕置きされて心細かった時

弱虫 貧乏 デブ イカれてると言われ疎外された時

あなたはその毒をのみ込んだ

いつか爆弾や銃弾による死が訪れても

あなたは国旗など振らず帽子を胸に当てるだけ

あなたは心の弱さを甘やかさなかった

のみ込み続けた石炭は勇気だ

 

「のみ込み続けた石炭は勇気だ」

鬱に陥ったイーライは食べることを拒否するようになり

「門出の家」を出て行く決意をします

膝の怪我でバレエダンサーを諦めるしかなくなったルークは

「何か夢中になれるものが必要なんだ、俺にとってそれは君なんだ」と

イーライを引き止めますが、彼女はそれを無視し去ってしまいます

夜行バスに乗って彼女が向かったのは実母ジュディのところでした

ジュディとオリーブは宿泊客を扱う観光農場?を経営していて

ジュディはイーライ拒食症になった原因が

もしかしたら自分が産後鬱で充分に愛情を注がなかったことが原因だと考え

専門医から模擬授乳が効果的だと教えられたことを伝えます

そんなことがあるわけないと思うイーライですが(笑)

母親が「もう争いたくない、あなたが死を選ぶなら受け入れる」と言うと

「ミルクを飲ませて」と頼むことにします

母親に抱きかかえられ哺乳瓶(中身はライスミルク)を口にするイーライ

でもそれは彼女が幼児に戻ろうとしたかたらじゃない

大人になったからです

深夜、イーライはベッドを抜け出し岩山へと昇ります

夜空には満月、岩地に寝そべったイーライは夢をみます

大きな木の枝に座っているのは、健康的な身体の自分

となりにはルークがいて、彼女にキスをする

でも木の下を見下ろすと、そこには自分の死んだ痩せ細った裸体

「最低・・」

 

朝になり目覚めたイーライは生きていることを実感

岩山を抜けタクシーに乗ると、向かったのは妹とスーザンの住む家でした

(飛行機か夜行バスの距離なのに?笑)

玄関に現れたスーザンに抱きつき「もう大丈夫」と伝えると

今度こそ治療に専念することを決意し「門出の家に戻るのでした

依存症の患者を救うための確かな治療法も

家族がどうにかしてあげれることも全くなくて

摂食障害というのも社会問題のひとつなんですね

拒食をやめてからも、健康な身体を取り戻すまでには

そこからまた何年も苦労するそうです

 

 

【解説】映画.COMより

摂食障害を抱える女性がグループホームでの生活や仲間たちとの交流を通して再生していく姿を、「白雪姫と鏡の女王」のリリー・コリンズ主演で描いた、Netflixオリジナルの青春ドラマ。複雑な家庭環境で育った20歳の女性エレンは、重度の拒食症に苦しんでいる。継母の勧めでベッカム医師の診察を受けた彼女は、食べ物の話をしないことや最低6週間の入所を条件に、ベッカム医師が運営するグループホームで暮らすことに。エレンはホームの風変わりな規則に戸惑い、時に反発しながらも、同じく摂食障害を抱える同年代の入所者たちと共に、自分を見つめ直していくが……。型破りな医師ベッカムキアヌ・リーブスが好演。共演に「パーティで女の子に話しかけるには」のアレックス・シャープ、「ハッピーエンドが書けるまで」のリアナ・リベラト。

2017年製作/107分/アメリ
原題または英題:To the Bone
配信:Netflix