ギドラ伯爵より
映画史に残る貴重な名作DVDをいただきました

中でも「シベールの日曜日」は日本語字幕付きソフトが廃版で配信もなく
今や特に見るのが難しい1本(フランス語がわかれば別)
こうしてレビューすることができて光栄です
伯爵、本当にありがとうございます

原題「Cybèle ou les Dimanches de Ville d'Avray」
(シベールまたはヴィル=ダヴレーの日曜日)
1963年ベネチア国際映画祭特別賞とマシェーレ賞

ヒロインを演じたパトリシア・ゴッジの12歳とは思えないコケテッシュな魅力と
大人の女性にも太刀打ちの出来ないような色気、ファム・ファタールぶりに
日本では「ロリコン映画」として強烈な支持を受けているそうですが(笑)
その理由のひとつがタイトルの失敗かもですね
「シベール」の名前は最後まで明かさないほうがよかった気がします

記憶を無くした男と、名前を無くした少女
少女の言葉は魅惑的に男の心を浸食していき
男は少女の虜となり崇拝していく

フランスのインドシナ侵略
(機銃掃射で殺してしまう )目撃したのを最後に
記憶を絶ってしまいます

その男、ピエールはパリ郊外の町ヴィル=ダヴレーで
看護師をしているマドレーヌと暮らし
マドレーヌが仕事の日は駅(現在のオー・ド・セーヌ駅)で時間を潰しています

ある夜、駅でマドレーヌの帰りを待ってると
父親により寄宿学校(尼僧院)に入れらるため泣いている少女を見かけ
「星のかけら」をあげようとガラスの粒を差し出しますが
(父親によって)断られます
父親が少女に渡し忘れ、寄宿学校の前に置き去りした鞄を持ち去るピエール
なかに入っていた「手紙」には、父親が(自身の新しい人生のため)
二度と少女に会いに来ないことが書かれていました

日曜日、ピエールが手紙の入った鞄を渡すため寄宿学校に行くと
シスターはピエールを少女の父親と勘違いし
ピエールと少女はマドレーヌのアパートや、湖の公園で1日を過ごします

「私の本当の名前、知ってる?先生たちがキリスト教的じゃないって言って
勝手にフランソワーズに変えちゃったの」
「本名は?」
「ギリシャ語の、とても古い響きなの
あの(教会の鐘楼にある)風見鶏を取ってくれたら教えるわ」
「私が死んでも、私の墓に名前はない、誰も知らないから
フランソワーズじゃ全然意味がないもの、そして私は永遠にいなくなるの」

中東で生まれたキリスト教は
自然信仰が根付いていたヨーロッパでは新興宗教とされましたが
キリスト教が浸透していくにしたがって
もともとあった信仰を「異端」として否定するようになったんですね
少女は自らを、葬られた女神(大地母神キュベレー)に例えているのです
キリスト教徒が教会に集う日曜日だけ蘇ることのできる女神

お父さんは死んだ(生きている)
代わりに優しいピエールをくれてありがとうと神に感謝する
6年後には自分は18歳になり、ピエールは36歳
そうしたら結婚しましょう
湖の波紋に揺れる水面の下の家は私たちの家
おばあちゃんは魔術師で「魔法の短剣」を持っていた
短剣を樹の幹に刺して、魂の声を聞くのよ

それは夢みる少女の、ただの想像の世界かも知れない
だけどピエールはフランソワーズの言葉の虜になってしまいます
フランソワーズが馬に乗ってやって来た青年を見て
ハンサムだと言ったらその騎手に嫉妬し
公園で他の子どたちと鬼ごっこをして遊んでいる時
ひとりの男の子がフランソワーズに抱きついたら、男の子を殴ってしまう

ピエールは飛行機事故で記憶を失っただけでなく
精神面も10歳の子どもになってしまっていたのです

ある日曜日、友人の結婚式のため休みをもらえたマドレーヌは
1日一緒に過ごせるとピエールを(喜ばせようと)驚かせます
ピエールはフランソワーズに会えないことを知らせることができなかったため
友人たちとの食事会でも気が散り会話どころでありませんでした
皆でお祭りに行き、占い師に占ってもらうことにすると
偶然そこにあった「魔法の短剣」を盗んでしまいます
マドレーヌに占いはどうだったと聞かれ
「とても愛されている」と言われたとピエール
(彼にとってはマドレーヌでなくフランソワーズからの愛)

自分の気持ちを分かってもらえたと喜んだマドレーヌは
ゴーカートに乗るとピエールにキスをしようとします
するとゴーカート乗り場にフランソワーズの姿が(修道院の遠足のようだ)
ピエールがマドレーヌとキスをする姿を見たフランソワーズの絶望した顔
取り乱したピエールはマドレーヌを殴ったのをきっかけに
乱闘が始ってしまいます
マドレーヌは友人たちに、ピエールにワインを飲ませ過ぎたせいだと怒るのですが

ピエールが毎週日曜日を少女と、それも親子ではなく恋人のように過ごしていると
近所の人から聞いてしまいます
友人のカルロスに相談すると、彼は決して危険な付き合いでないと断言しますが
不安になったマドレーヌは次の日曜日こっそりピエールのあとをつけます
公園でただ無邪気に遊んでいるふたりを見て、安心するマドレーヌ

マドレーヌがなんでこんなにピエールに夢中なのかというと
彼女にとってピエールはペットの世話を焼くようなものなんですね
デキる女によくある、ダメンズが好きなタイプ
(ピエールの場合は戦争PTSDでそうなってしまったわけですが)
裏切られているのにも気付かず、尽くしてしまう
クリスマスが近づき、マドレーヌはクリスマスを一緒に過ごす休日を
いつとるかとピエールに訪ねると
(日曜はフランソワーズと過ごすから)火曜がいいとピエール

そしてクリスマスの日曜、ピエールはカルロスの家のドアを壊し
クリスマスツリーとシャンパンを盗み
公園にある壊れた小屋でフランソワーズと乾杯します
フランソワーズはそのツリーにマッチ箱に包んだプレゼントを飾り
ピエールが包みを開け折りたたまれた紙を開くと
そこには「Cybele」の文字
「シベール、これが君の名前なのか」

シベールの名前を教えてもらったピエールは約束通り
教会の鐘楼に風見鶏を取りに行きます
するといままでピエールを苦しめていた”めまい”が消えていることに気づきます
風見鶏を手に小屋で待つシベールのもとに向かうピエール

カルロスからピエールがクリスマスツリーを盗んだと連絡を受けたマドレーヌは
バーナード(勤務先の医師でマドレーヌに好意をもっている)に助けを求め
バーナードは修道院と警察に(シベールの安全のため)ふたりを探すよう警告します
世間の人間は皆、ピエールがパラフィリア(幼児愛好者)だと思っているから
間もなくしてピエールとシベールが見つかった警察から電話があり
公園に向かうマドレーヌとバーナード、そしてカルロス

ピエールは右手のそばに短剣、左手に風見鶏を持ち死んでいました
警官は短剣を手にシベールに向かって歩いていくピエールを見て
発砲したと説明します

気を失っていたシベールが気が付き、警察に名前を聞かれると
ピエールの遺体を見たシベールは涙を流し
「名前なんてない」
「もうとっくに、もうないの・・・ないのよ!」と叫ぶのでした

ちなみに、キュベレーの息子アッティスは母キュベレーの嫉妬を受け
母への忠誠を証明するため自ら性器を切断して死んだそうです
やっぱり映画ファンより、「マニア」向け?(笑)

アンリ・ドカエよるカメラが美しく、いつかパリに行ったら
ヴィル=ダヴレーは行きたい名所のひとつになりました
【解説】映画.COMより
フランスの作家ベルナール・エシャスリオーの小説「ビル・ダブレの日曜日」を短編映画「微笑」のセルジュ・ブールギニョンとアントワーヌ・チュダルが脚色し、ブールギニョンが監督した記憶喪失症の青年と少女との純愛ドラマ。撮影は「生きる歓び」のアンリ・ドカエ、音楽は「アラビアのロレンス」のモーリス・ジャール。出演者は「ハタリ!」のハーディ・クリューガー、新人子役パトリシア・ゴッジ、「ラインの仮橋」のニコール・クールセル、ダニエル・イヴェルネルなど。この映画はアカデミー外国映画最優秀作品賞、ベニス映画祭特別賞、アメリカ・アート・シアター賞などを受賞した。黒白・フランスコープ。
1962年製作/フランス
原題または英題:Cybele ou les Dimanches de Ville d'Avray
配給:東和
