ムコリッタ(牟呼栗多)とは、仏教における時間の単位の一つ
1/30日=約48分のことで
「ささやかな幸せ」という意味もあるそうです
内容は高橋留美子の漫画 「めぞん一刻」を荻上直子風にした感じ?
と思ったら、本当に荻上直子でした(笑)
美人の未亡人が経営する古いアパートに
個性的な住民たちが暮らすというもの
ただ私、他の作品のレビューでも書いたかも知れませんが
唯一「かもめ食堂」だけは奇跡的に成功しているものの
荻上直子のファンタジーな作風って苦手なんですよね(飽きたともいえる)
是枝裕和や中野量太のハッピーエンド風も冷めて見てしまう
ファンタジー映画そのものが嫌いというわけではないので
こればかりは相性なのでしょうね
富山の川辺(小矢部川)の町の塩辛工場で働きだした青年山田
社長(緒形直人)の「どんな人間でも更生できるから頑張って!ね!」の言葉で
彼が刑務所から出所してきたことがわかります
この社長、言ってることは正しいんだけど「うざい」(笑)
(無口な従業員は江口のりこ)
社長の紹介で、未亡人で(惣一郎ではなくヤギのあすかを飼っている)
「妊婦の腹を見ると蹴りたくなる」南(満島ひかり)が経営する
「ハイツムコリッタ」で暮らし始めると
「お風呂を貸してよ」とやって来ます
いやいや、初対面でこんな隣人いやでしょ(笑)
これでも最初は遠慮していたんですね
そのうち「ごはんってさ、ひとりで食べるより誰かと食べたほうがおいしいよ」
と、上がりこんで「山ちゃん、ごはん炊く才能あるよね」(笑)
やがて山田も近所の寺の住職ガンちゃん (黒田大輔)と共に
島田の家庭菜園を手伝うようになります
お向かいは、息子(北村光授)連れて墓石のセールスに回る
溝口(吉岡秀隆)が住んでいます
お腹が空くと、息子に食べものの妄想を語ります
それが、子どもが見たことも食べたことのないようなふぐ刺しとか
関西風すき焼きという高級料理を見事な言い回しで語る
息子は息子で?不法投棄?の粗大ゴミの上で
(そのわりには昭和の公衆電話やレトロ家電という高価な値がつきそうなやつ)
ギターを演奏するホームレス(知久寿焼)と一緒にピアニカを演奏
そこに南の娘カヨコ(松島羽那)も加わって、縄跳びを回し宇宙人と交信します
「ムコリッタ」の住人は全員どこか変わっている(山田がいちばんまとも)
さらに岡本さんというお婆さんの幽霊まで出る
「ムコリッタ」は亡くなった岡本さんの口癖だったのです
そんななか、4歳の時生き別れた父親が死んだので
遺骨を引き取りに来て欲しいと役所から連絡が来ます
葬式をあげるお金もないし、無視しようとした山田ですが
島田にうながされて、しかたなく役所に行ってみると
親切な職員の堤下(柄本佑)が喉ぼとけの骨が立派だと
わざわざ説明して見せてくれたせいで(笑)
遺骨を引き取らざる得なくなってしまいます
さらに父親の遺品の携帯電話の着歴が「いのちの電話」であったことから
(金魚のエピソードを語る「いのちの電話」の声が薬師丸ひろ子)
父親が自殺したのではないかと不安になった山田は
堤下に父親が生前住んでいたたアパートに連れて行ってもらいます
遺体の傍らに牛乳が置いてあり、お風呂上りだったのでしょうと語る堤下
山田は骨だけになった父親に自分のルーツを感じます
そんな中、南が旦那の遺骨を食べたり
(骨で自慰するシーンはいらなかったけどな)
突然島田が山田の前科を気にしだしたり
でも山田の炊いたごはんが食べたいからすぐ忘れたり
溝口の高級墓石が(田中美佐子が飼う犬の墓として)売れて
「ムコリッタ」の皆ですき焼きを食べたりします
フードスタイリストの飯島奈美が相変わらずいい仕事をしていますね
白いごはんと塩辛、畑で採れたての新鮮野菜に、熱々のお味噌汁
撮影に使われたのは富山県のブランド米「富富富(ふふふ)」
たぶん本当に美味しいんでしょうね(笑)
(蛆虫を塩辛に例えるシーンはいらなかったけどな その2)
島田から遺骨を粉にして散骨すると罪にならないと聞いた山田は
父親の遺骨を粉々にし、川べりに散骨する決意をします
確かに形が残ったまま散骨すると「遺骨遺棄罪」(刑法190条)にあたりますが
粉骨にした場合でも許可を得ていない場所に散骨するのは
法律違反になるのでご注意を(ガンちゃんも住職なら教えてやれよ 笑)
遺骨の処分に困ったときは、お寺か霊園に永代供養を頼むか
火葬場で「焼き切り」してもらいましょう
溝口から借りた黒のスーツを着て、アパートの住民たちと共に
土手で父親の遺骨の灰をまきながら行進する山田
すると空には大きなイカの凧(タコ)が舞い上がっていたのでした
それは宇宙人なのか
それともただの洒落なのか
何を言いたい映画かもわからなくなってしまいました(笑)
遺灰ギャグなら「ビッグ・リボウスキ」(1998)くらい
思い切りお馬鹿やってくれたほうが笑えたのに
ただこのアパートの住民たちは、つつましい生活をしながらも
これからもうまくやっていけそうな予感
そんなところでしょうか
【解説】映画.COMより
「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子監督が2019年に発表したオリジナル長編小説を、自身の脚本・監督で映画化。松山ケンイチ主演、ムロツヨシの共演で、孤独な青年がアパートの住人との交流を通して社会との接点を見つけていく姿を描く。
北陸の小さな町にある小さな塩辛工場で働き口を見つけた山田は、社長から紹介された古い安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。できるだけ人と関わることなく、ひっそりと生きたいと思っていた山田の静かな日常が、隣の部屋に住む島田が「風呂を貸してほしい」と山田を訪ねてきたことから一変する。山田と島田は、少しずつ友情のようなものが芽生え始め、楽しい日々を送っていた。しかし、山田がこの町にやってきた秘密が、島田に知られてしまい……。
主人公・山田役を松山、島田役をムロがそれぞれ演じる。タイトルの「ムコリッタ(牟呼栗多)」は仏教の時間の単位のひとつ(1/30日=48分)を表す仏教用語で、ささやかな幸せなどを意味する。
2021年製作/120分/G/日本
配給:KADOKAWA