ハッピーボイス・キラー(2014)

I'm Sorry  I'm Sorry  I'm Sorry
原題は「The Voices」(声)

 

面白かったですね

少年期の不幸な出来事により統合失調症を患ってしまった青年

普段は躁(ハイ)な状態で、ペットの猫と犬とおしゃべりできるし

自宅(廃業したボーリング場の事務所っていうのがいいね)も

職場も楽しく明るくポップ

でもひとたび精神科医から処方された薬を飲むと

猫も犬も話してくれない

孤独な現実に引き戻されてしまいます

だから薬を飲むのをやめてしまう

そして彼にしか聴こえない「声」に命令されて

好きな女性を殺してバラバラにします

殺された彼女は生首になって彼を愛してくれる

それもジェマ・アータートンアナ・ケンドリックという豪華版(笑)

サイコ野郎のシリアルキラーなのですが

これだけ“犯人視点”100%で描かれると

なにが正常で、どこからが異常なのかわからなくなる(笑)

本当は異常なほうが幸せではないかと思ってしまいます

ラストも(本当は不幸なのに)ハッピーエンド風で後味がいい

一方でこんな猟奇的な事件が実際に起こり得る恐怖

現実にも「声がする」と起こった事件がありますね

監督のマルジャン・サトラピはイラン出身のフランスの漫画家

少女時代イラン革命イラン・イラク戦争で壮絶な体験をしているんですね

だからこそ人間には正常と異常の境目が

実はないことを描くのがうまいのかも知れません

しかもわかりやすいのです

恐るべき才能と言うほかありません

ジェリーライアン・レイノルズ統合失調症と闘いながら

愛犬のボスコと猫のミスター・ウィスカーズと暮らし

配管工場でフォークリフト係としていています

同僚で経理担当のフィオナ(ジェマ・アータートン)のことが好きで

中華料理のディナーシアターに誘いますが

彼女は友人とカラオケに行き彼とのデートをすっぽかします

フィオナが帰ろうとしたところ、彼女の車が故障してしまい

偶然通りかかったジェリーに乗せてもらうことに

途中、鹿ジェリーの車突っ込んできて

鹿はジェリーに苦しみから解放してくれと懇願します

ジェリーナイフで鹿の喉を切り裂くと、フィオナは恐怖で森に逃げ込みます

フィオナ後を追ったジェリーはつまずいて彼女を刺してしまいます

自宅に戻ると、ボスコは警察に行くよう勧めますが

ミスター・ウィスカーズはフィオナの遺体を回収するよう命じます

ジェリーは遺体をバラバラにしタッパーウェアに保管

フィオナの切断された頭がジェリーに薬を飲むよう話しかけると

ジェリーは父親から虐待される悪夢を見たうえ

フィオナの頭は腐り、部屋は血とゴミと排泄物だらけ

ボスコとミスター・ウィスカーズも話してくれません

現実の世界に耐えられずジェリーが薬を捨ててしまうと

フィオナは彼に「友達が欲しい」と頼み

ジェリーは同僚の(ジェリーに気がある)リサ(アナ・ケンドリック)を

(彼女を殺すため)子どもの頃住んでいた家に誘います

そこでジェリーは、母親(彼女も統合失調症)の幻覚を見ます

母親はジェリーに母親の喉を切って殺すよう強要していたのです

リサはジェリーを慰め、ふたりは家を出るとリサの部屋へ行き一夜を過ごします

しかし翌日リサがジェリーの部屋を訪れると

部屋は汚れ、冷蔵庫にはフィオナの頭

ジェリーは逃げようとするリサの首を折り

彼女もバラバラにし、その頭を冷蔵庫のフィオナの頭の隣に置きます

でも全然怖くない

明るく楽しそうなところが、逆に哀しいだけ

コメディだけど考えさせられる

フィオナとリサの同僚アリソンが、ふたりが行方不明になっことに気づき

さらにジェリーの母親の死に関する新聞記事を見つけ

ジュリーを尋ねていきます

ジェリーはアリソンも殺し、彼女の首をフィオナとリサと一緒にします

しかしアリソンのおしゃべりに圧倒されてしま

ウォーレン博士ジャッキー・ウィーヴァーに助けを求めて彼女を誘拐

(「病気なのよ」と最後までジェリーを庇う)

その間ジェリー部屋に押し入った会社の同僚が警察に通報

ウォーレン博士を連れて帰宅したジュリーは

警察が建物を取り囲む中逃げようとして、誤ってガス管を破壊

ボウリング場は燃えジェリーは煙を吸い込んで死亡

ウォーレン博士は救出され

ボスコとミスター・ウィスカーズは動物保護施設に運ばれます

 



白い空間に移動すると、ミスター・ウィスカーズとボスコは

お互い本当は好意を抱いていたことを告白

ジェリーはフィオナ、リサ、アリソンに謝り

エスと共にミュージカルを歌うのでした

 

とにかくとんでもないので、みんなに見て欲しい(笑)

久々のお気に入りです

 

 

【解説】映画.COMより

ペルセポリス」「チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢」など独特の世界観で知られるイラン出身の女性監督マルジャン・サトラピが、「デンジャラス・ラン」のライアン・レイノルズを主演に迎え、キュートかつポップな感覚で描いたスリラー。不思議な魅力を持つ青年ジェリーは、バスタブ工場で働きながら代わり映えのない日常を送っていた。同僚の女性に恋心を抱いたジェリーは、精神科医の助けを借りながら彼女との距離を縮めようとするが、デートをすっぽかされたことで殺人事件を起こしてしまう。ジェリーはペットの邪悪な猫と慈悲深い犬に導かれながら狂気にとらわれていき、事態は予想外の展開を迎える。共演は「ピッチ・パーフェクト」のアナ・ケンドリック、「007 慰めの報酬」のジェマ・アータートン

2014年製作/103分/PG12/アメリ
原題または英題:The Voices
配給:ポニーキャニオン