憐れみの3章(2024)

原題は「Kinds of Kindness」(やさしさの種類)

邦題は「哀れなるものたち」にかけたのでしょうね

憐れみというよりは、変態度のほうがかなり高い

これをブラックユーモア、またはファンタジーと笑えたら

あなたも変態上級者(笑)

同じ登場人物による全く違う3話のオムニバス

何の関わりもないような3つの物語ですが

共通したテーマは「依存」「支配」「奉仕」(だと思う)

いかにもヨルゴス・ランティモス監督らしい

1章:「R.M.F.の死」

仕事から食生活まで会社のボスの支配を受けている男の話

 

2章:「R.M.Fは飛ぶ」

海難事故から生還した妻を別人だと思い込む警察官の夫の話

 

3章 :「R.M.F.サンドウィッチを食べる」

カルト教団で死者を蘇させることのできる女性を探す女の話

各章のタイトルについているR.M.F.とは

各章ちょこっと出てくるお髭のオジサンのこと

いかにも物語の謎の握っていそうですが(笑)

監督曰く「R.M.F.というキャラクターには意味がない」らしい(笑)

しかも演じているYorgos Stefanakosというお方は俳優でもなんでもない

監督のお友達だそうです 

つまり、支配者と服従

妄想性障害と依存性?境界性?パーソナリティ障害のカップ

カルト集団の信仰へののめり込みや、奇妙な性のありかたなど

当事者同士にしかわからない

なぜそんなに「信じれる」のか

私たちがいくら理解しようとしてもできないということ

だけど意外と身近には、こういう人たちがたくさんいるんですね(たぶん)

「R.M.F.の死」なんて、日本の省庁の仕組みやサラリーマンの世界でも

上司の命令を断ったら、屈辱的な転属をさせられる

または仕事を干されてしまう、無視をされるなど

コンプライアンスだからこその、NGワードは言わない

「やさしいふりをした嫌がらせ」で

辞職に追い込まれてしまった人は多いと思うんです

「R.M.Fは飛ぶ」は、妻が海難事故で行方不明になり

病んでしまった夫(ジェシー・プレモンズ)が

(友人夫婦と見たいといった「あのビデオ」がまさかのスワッピング 笑)

過酷なサバイバル(「犬の王国」でチョコレートを食べて生き延びたという)で

人格が変わってしまった妻(エマ・ストーン)を他人だと思い込み

妻の「尽くしたい」という気持ちを利用して、間接的に殺害してしまう

愛の証明という難しさ

愛なんて形にも、証明もできないと思う私は

こういう人たちからみたら冷酷にしか見えないんだろうな(笑)

「R.M.F.サンドウィッチを食べる」では「オウム真理教」を思い出しましたね

オウムでは麻原彰晃がお風呂に入ったお湯を

信者が大金を払ってありがたくいただいていたそうですが

本作ではカルト教団の教祖オミ(ウィレム・デフォー)と

妻アカ(ホン・チャウ)の涙の入った水が聖水として扱われます

信者はオミとアカとしかセックスをすることが許されないため

信者の妻(エマ・ストーン)を取り戻そうとした

元夫ジョー・アルウィン

(やり方は間違っているが)妻に睡眠薬を飲ませセックスしたことで

妻は破門になってしまいます

妻は教団が探している死者を蘇らせることができる双子の1人の獣医師を見つけ

再び教団に認めてもらおうとするもの

R.M.F.はタイトルの通り(笑)

1章でジェシー・プレモンズに殺され

2章では救助隊のヘリコプターの操縦士

3章のラストでサンドイッチを食べようとして

誤ってシャツにケチャップをかけてしまいます

なるほど、支配もせず、服従もされず

妄想も抱かず、ド変態でもない

いわゆるそこらへんにいる一般人がR.M.F.ということでしょうか

ではなぜ彼は命を狙われたか

カルトの中では「普通」が「異端」だから

間違いを指摘したとしたら、そいつは邪魔者なのです

 

 

【解説】映画.COMより

女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」に続いてヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組み、愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジー。選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうと奮闘する男、海難事故から生還したものの別人のようになってしまった妻に恐怖心を抱く警察官、卓越した教祖になることが定められた特別な人物を必死で探す女が繰り広げる3つの奇想天外な物語を、不穏さを漂わせながらもユーモラスに描き出す。
「哀れなるものたち」にも出演したウィレム・デフォーやマーガレット・クアリーのほか、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェシー・プレモンス、「ザ・ホエール」のホン・チャウ、「女王陛下のお気に入り」のジョー・アルウィンが共演。3つの物語の中で同じキャストがそれぞれ異なる役柄を演じる。
「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」でもランティモス監督と組んだエフティミス・フィリップが共同脚本を担当。2024年・第77回カンヌ国際映画祭でプレモンスが男優賞を受賞した。

2024年製作/165分/R15+/アメリカ・イギリス合作
原題または英題:Kinds of Kindness
配給:ディズニ