イレイザーヘッド(1977)

原題も「Eraserhead」で

鉛筆の先に付いている小さな消しゴムのこと

デビッド・リンチがひとりで製作・監督・脚本・編集・美術

特殊効果を務めた

カルト映画として名高い長篇デビュー作品

クレーターの惑星(卵子

主人公の口から出てきた長いウネウネ(精子

割れた窓のそばでレバーを引く皮膚病の男(受精させる仕事)

工業地帯で印刷工員として働くヘンリーは

恋人のメアリーに呼ばれ彼女の実家へ行くと

何も言わないおばあちゃん

やたらストロングトークのお父さん(笑)

(血が吹き出す鶏肉料理は女性の象徴)

お母さんから「性交渉はあったか」質問され

メアリーが赤ちゃんを産んでいたことを知らされます

ヘンリーはメアリーと結婚

奇形の赤ちゃんと3人でアパートで暮らすことになります

(クリーチャーのモデルはポランスキーの「反撥」のウサギ)

妻が郵便はなかったか尋ねると

ヘンリーは郵便受けに入っていた精子を戸棚に隠します

(妻との性生活の拒否)

 

食事も摂らず、夜泣きの激しいスパイクくんに

メアリーは育児ノイローゼ、実家に帰ってしまいます

困ってしまったヘンリー

しかも赤ちゃんが熱が出し、顔中湿疹だらけになってしまう

「病気なのか!」って(どう見ても病気だろう 笑)

どうしたらいいかわからず、ウロウロソワソワ

実際こんなもんだと思いますよ(笑)

出産はホラーみたいなものですし

初めての赤ちゃんは未知の怪獣

しかも両親はまだ未熟な若者

私ですら産後鬱になりましたし

両親、友人や知人の協力や

病院や保健所など公的サポートがあったから育ててこれたようなもの

もちろん最初から愛情を注げる親もいるでしょうけど

それもお金と周囲の支えがあってこそ

一方で、妻の妊娠や出産をきっかけに男が浮気するのもよくある話で

戸棚に隠しておいた精子が小躍りすると(笑)

27号室に住む黒髪の美女の誘惑に負けてしまう

しかし別の日、美女が別の男を部屋に入れるのを目撃してしまい

落ち込むヘンリー

スパイクくんがヘンリーをゲラゲラとあざ笑うと

ヘンリーはスパイクくんを巻いている包帯を

ハサミでジョキジョキ切り開いてしまいます

臓器がむき出され、わななくスパイクくん

ヘンリーは怖くなる、スパイクくんの臓器をハサミで一刺し

スパイクくんの身体は泡に包まれてしまい

次に闇に明滅するスパイクくんの巨大な頭部

精子を足で踏みつぶす

頬っぺたコブ女、ラジエーター・レディは無垢(処女)の証

♪天国ではすべてがうまく行く

♪天国には悩みなんかない

ラジエーター・レディが歌う

ヘンリーの頭部はスパイクくんと頭部とすげ替わり

ヘンリーの頭で製造され無数の消しゴム付き鉛筆

製造責任者が書き具合と消し具合をチェックして

「合格」「よし報酬だ」

消しゴム付き鉛筆はヘンリー=リンチ自身のこと

毎日デザインを書き、絵コンテを書き、何度も消してやり直し

収入を得るためには映画のこと以外の絵も書かなきゃいけなかった

脳内では消しカスがブワ!もするでしょう(笑)

まばゆい光の中でラジエーター・レディと抱き合うヘンリー

グロテスクな彼女だからこそ、グロテスクの魅力をわかってくれる

そして映画は唐突に終わるのでした

リンチも恋人が妊娠し21歳で結婚

そのときの娘(映画およびテレビ監督である)ジェニファーが

少女役でちょこっと登場しています(娘本人出すか?笑)

結婚や育児からの逃避願望がわかりやすく

若くてお金がない時代でなければ作れない傑作

 

そのわりにはリンチくん

懲りずに4度も結婚していますけど(笑)

 

【解説】allcinema より

エレファント・マン」の大ヒットによって、ようやく日本でも劇場公開されたリンチの長編デビュー作。消しゴム頭の髪型をした主人公ヘンリーは、女友達メアリー・Xから妊娠した事を告げられる。やむなく結婚を決意するヘンリーだが、生まれてきたのはヒナ鳥のような奇怪な赤ん坊だった。狭いアパートで、赤ん坊の悲鳴にもにた鳴き声が響く中、ノイローゼに耐えかねたメアリーは実家に戻り、ひとり残されたヘンリーは赤ん坊の世話をすることになる……。全編、悪夢にも似た奇妙なイメージで埋め尽くされ、白黒というよりは銀黒で作られた映像は人工的な寒々とした印象を与えている。まさに“奇形の美しさ”とでも呼ぶべき、大いなる実験作。悪夢に論理が無いように、意味を求めることの無意味さを説くイメージ・シーンの積み重ねは、初公開時よりも、同様の手段をあろうことかTVで行った「ツイン・ピークス」を観た後の方が納得しやすい。その意味でも'93年にリンチ自らサウンドトラックを再編集したドルビーステレオの「完全版」の公開こそ、本作の真の評価を問える時機であったと言えるだろう。