サンザシの樹の下で(2010)

「それでも一生 君を待ち続ける」

 

とても哀しい物話でした

文化大革命下の中国での切すぎるラブストーリー

主演のふたりが瑞々しく好い演技をしていて

プロットは木下恵介の「野菊の如き君なりき」

逆バージョンといった感じ

1970年代の始め
毛沢東の号令により農村学習に来た女子高生のジンチュウ(チョウ・ドンユイ)

ホームスティ先で地質調査をしているスン(ショーン・ドウ)と出会い

お互いひと目で恋に落ちてしまいます

しかしジンチュウの母親は身分の違いや

父親が「反革命分子」だと矯正施設に入れられ母親も迫害を受けていること

そこにジンチュウが男と交際していると世間に知れたら

ジンチュウまで「反革命分子」と見なされ就職できなくなってしまう

スンはジンチュウの母親に

ジンチュウが就職するまで会わないことを誓います

 

しかしスンが白血病で入院したと聞き

母親に嘘をついてスンのお見舞いに行くジンチュウ

スンは外泊許可をもらいふたりは3日間一緒に過ごしました

その後スンの消息は途絶え

ジンチュウが教員として働くようになったある日

スンが危篤だという知らせを受けます

 

変わり果てた姿のスン

涙を流す彼の目線の先には

ふたりで撮った記念写真が飾られていました

恥ずかしいくらい純愛

三つ編みの後ろ姿

自転車でふたり乗り(フードかぶったせいでE.Tに見える悲劇)

相合コート

包帯を巻きなおす

はじめての水着

サンザシの桶

狭いベッドで添い寝

エアーハグ

なんの情報も、テレビさえないので

ヒロインは男性と一緒に寝た(セックスでなく睡眠)だけで

妊娠すると思っているんですね(笑)

なので女友達が(結婚するつもりが男に騙されて)妊娠したと聞くと

自分ももしかして・・って心配するんですよ

それでその友達にコソコソって打ち明けると

「はあ?」と呆れられてしまいます

結局その女の子は中絶することになるんですが

 

これは多くの女性が中絶を強要された「ひとりっ子政策」を

間接的に批判していると思うんです

そしてスンの死因については

看護師は「白血病でない」とはっきり答え

同じ地質調査の仲間は「仲間が死んだ原因を探っていた」と言っている

病室には人民服を着込んだ党幹部たち

全身あざだらけの痛々しい姿

 

文化大革命による「粛清」(しゅくせい)

やっぱすごいな、チャン・イーモウ

いつか一緒に見に行こうと約束をしたサンザシの樹

赤い花を咲かせるという「英雄の樹」

その下にサンの遺体は埋められました

やがてサンザシの樹は三峡ダム建設のため水の中に沈みますが

水の中でも花を咲かせているといいます

でもその花の色は赤ではなく、でした

 

 

【解説】映画.COMより

都会育ちの女子高生ジンチュウは、文化大革命の再教育のために送られた農村で青年スンに出会う。ジンチュウは、エリートでありながらも明るく誠実なスンに恋心を抱き、やがて2人はひかれあうが、身分違いの2人の愛には過酷な試練が待ち受けていた。文化大革命下の中国を舞台に、「初恋のきた道」のチャン・イーモウ監督が描く純愛ストーリー。主演はイーモウ監督が新たに見出した新鋭チョウ・ドンユィ。

2010年製作/114分/G/中国
原題:Under the Hawthorn Tree
配給:ギャガ