ビブリア古書堂の事件手帖(2018)

これは酷い(笑)

 

まず冒頭の葬式のシーンは「小早川家の秋」(1961)のオマージュ

ちなみに「小早川家の秋」舞台は京都ですが

現代の鎌倉でもこのようなお葬式をしているのでしょうか(笑)

カツ丼が自慢の食堂を営んでいたやさしい祖母の絹子が死に

孫の大輔はただ一度だけ、激しく怒られた時のことを思い出していました

祖母の大事にしていた夏目漱石全集の「それから」を読もうとしたときで

それが原因で大輔は失読症になり、23歳になった今も無職です

祖母の遺品を片付けているとき、「それから」の本を開くと

夏目漱石のものと思われる直筆のサインと、祖母の若い頃の写真

これは価値のあるものではないかと、本に挟まっていたしおり

「ビブリア古書堂」に持って行きます

店主の栞子はこれは漱石のサインではない

田中嘉雄という男性からプレゼントされた本に

禁断の恋を隠すため、おばあさまが書いたものだと推理するのです

しかも「それから」の主人公の名前が大輔と同じ「だいすけ」

そこに栞子の妹、文香が帰って来ると、大輔に

おねえちゃんの本の話に何人もバイトが辞めた

無職で車の免許があるならここでバイトしないかと誘うのでした

大輔は「それから」を朗読してもらうことを条件に

ビブリア古書堂で働くようになります

やがて古い写真から田中嘉雄は作家か作家志望だったこと

ここに写っている太宰の「晩年」の初版本が350万円は下らないこと

その所蔵者のひとりが栞子で

大庭葉蔵という太宰マニアから脅されてることがわかっていきます

北鎌倉に実際に存在するという古本屋の雰囲気もいいし

「本の知識」だけは学者並みにある黒木華

本を読んだだけで体調を崩す野村周平のコンビもいい

ホームズとワトソン君のような推理ものかと期待したのですが

最初だけ(笑)

出てくる本は漱石と太宰の不倫小説のみ

しかも文学的価値や内容に共感するというよりは

いかに状態がよく、希少であり

コレクターにとって価値があるかということ

古書の見本市に行った栞子と大輔は同業者の稲垣と親しくなります

そこでも大庭葉蔵を名乗る人物が

ネットで太宰の古書を買い漁っている噂を耳にします

この時点で稲垣が大庭葉蔵だと想像がつきますね

栞子の好みに精通しているのは、ネットの売り買いをチェックし

嗜好がわかっているから(だと思う)

私たちもお互いの映画ブログで、好みの傾向がわかるのと同じ(笑)

最初は小さなヒントからあらゆる推理ができた栞子なのに

あとはもう手抜き

稲垣の高価な本を盗んだという男を見逃がし

(もうすぐ失明なのに屋敷で暖炉の生活)

犯人をおびき出すために「晩年」を売るとネットで告知

しかも「晩年」を店頭に並べたまま外出

放火され、本が破かれても(偽物と言っても初版本のひとつ)

大輔がスタンガンで襲われても警察に届けない

しかも命がけ宣言が、秒で本盗られておいて

「俺も騙したってことですか」と逆ギレするか

太宰のサインがないだけで、なんで価値がないことになっちゃうの

犯人を本棚の下敷きにしても、行くのは警察ではなく埠頭

わざわざ桟橋に向かって車を走らせ、何を思ったか車から降りる

最後は想像を裏切ることなく、本を海に放り投げた

本に謝れ(笑)

コレクターや転売ヤーが悪いとは言わないけれど

本に限らず、絵画でも、DVDでも、映画のポスターでも、なんであっても

自分が心を打たれたものは、大切にしてきたものは

これからも大切にしてくれる人にバトンを渡すべき

そもそも「それから」ではなく、なぜ「晩年」がメインになったのか

根本的に解釈が間違ってる

妻に裏切られ、よその男の子ども妊娠したら

普通、死にたくなるのは食堂の旦那のほうだろ(笑)

 

さすがの黒木華ちゃん、夏帆さんを持ってきてもこの展開はしょうがない

「ツッコミ系」を献上させていただきます

 

 

【解説】映画.COMより

シリーズ累計640万部を突破した三上延原作のベストセラーミステリー小説を、黒木華野村周平の主演で実写映画化。五浦大輔は祖母の遺品から夏目漱石の直筆と思われる署名が入った「それから」を見つけ、鑑定してもらうため北鎌倉の古書店「ビブリア古書堂」を訪れる。店主である若い女性・篠川栞子は極度の人見知りでありながら本に対して並外れた情熱と知識を持っており、大輔が持ち込んだ本を手に取って見ただけで、大輔の祖母が死ぬまで隠し通してきた秘密を解き明かしてしまう。そんな栞子の推理力に圧倒された大輔は、足を怪我した彼女のために店を手伝うことに。やがて大輔は、栞子が所有する太宰治「晩年」の希少本をめぐり、大庭葉蔵と名乗る謎の人物が彼女を付け狙っていることを知る。監督は「幼な子われらに生まれ」「しあわせのパン」の三島有紀子

2018年製作/121分/G/日本
配給:20世紀フォックス映画、KADOKAWA