ハケンアニメ!(2022)

原作は辻村深月の連載小説「ハケンアニメ!」(2012~2014)

アニメーターの派遣社員かと思いましたが

ハケン」とは「派遣」ではなく、「覇権」のこと(笑)

 

プロットは、ビデオカセット規格の「VHS」開発を描いた

「陽はまた昇る」(2002)や

小惑星探査機「はやぶさ」と、JAXA 女性職員の成長を描いた

はやぶさ/HAYABUSA」(2011)と同じ、いわゆるお仕事映画

バラバラだった人々が、ひとつの仕事をきっかけに一丸となり

プロジェクトを成功させるというもの

最初はライバルだったり、嫌いな奴

やがてそれぞれの得意分野が、個性が強みになっていく

そして、WBCで日本が世界一を決めた時のように

結果が実を結んだ時の達成感は大きく素晴らしい

それを引き出すのが監督の力量

なので本作も、人の心にストレートに感動が伝わってくる

(エンドロールの後のオチをお見逃しなく 笑)

わかりやすいし、面白い、アニヲタあるある

劇中アニメ「サウンドバック」と「リデルライト」 のクオリティも高い

なんと全話のプロットまで考えられたらしい

(スピンオフで作ってくれ 笑)

 

キャストも素晴らしい

特にプロデューサーを演じた柄本佑

 

神作画」を描くアニメーター、小野花梨が出色

なのになぜ興行で失敗したか、やはり時代なんでしょうね

私の職場でもコンプライアンス研修がありますが

今の若い人にサービス残業や徹夜なんて通用しない話

仕事を家に持って帰るなどもってのほか(テレワークとは別 笑)

せめて設定を10年前にするべきでした

それでも、東映SNSによる猛アピールや(東映日本アカデミー賞の年)

スポンサーからの圧力による(たぶん 笑)

人気俳優らによる番宣や応援のおかげで注目されるようになり

新たに上映する映画館も現れたそうです

それこそ「ハケンアニメ!」でなく「ハケンエイガ!」(笑)

「トウケイ動画」 の面接

アニメ界のカリスマ監督王子千晴の影響を受けたという

国立大卒で元公務員の斎藤瞳が、王子監督を超えたいやって来ます

「私もこんな作品(王子のデビュー作「光のヨスガ」)を作って

 昔の自分に届けたい

 今、自分と同じような思いをしている子どもたちに届けたい」

 見てる人に魔法をかけるような作品を作りたい」

 

数年後、ついに土曜午後5時半の連載アニメの監督に就任した瞳

しかも他局では王子監督の新アニメが同時放映

若き天才監督(イケメン)と、元エリート女性監督(美人)の

視聴率対決盛り上がりさまざまな企画が持ち込まれます

が、絵コンテが書きあがらない王子失踪

担当プロデューサー有科は、テレビ局と製作スタッフの間に立たされ窮地

一方、瞳の担当プロデューサーの行城(ゆきしろ)

アニメとは関係ないグラビア撮影や取材に瞳を振り回します

 

瞳は制作デスク、演出、構成、作画監督、音響、誰とも意見があわない

「絵コンテの通り」と指示を出すしかありません

その中でも最悪な関係はヒロインの声を演じる

アイドル声優群野葵(むれの あおい)

何度もダメ出しして、ついには泣かせてしまいます

試作が出来ても気に入らない、絵コンテを書き直そうとしますが

それも行城の取って来た仕事のせいでできない

さらに差し入れのコージコーナーのエクレア(大好物)が

いつもなくなっている

そして注目の、王子と瞳の対談イベントの日

失踪していた王子がハワイ土産を持って帰ってきます

駆け寄る有科に、ハグのポーズで迎える王子

が、飛んできたのは有科の強烈な拳でした(笑)

イベントは王子さまさま

観客も、司会者も、SNSのコメントも、興味があるのは王子だけ

しかも瞳は自分の新作さえ説明できず、王子に助け船を出されてしまう始末

しかし王子が「現実を生き抜くアニメを命がけで作る」と宣言すると

瞳も私も負けません ハケンをとります」と答えます

お互いのデスりに、会場からは笑い

放送が始まると初回こそ接戦だったものの

回を増すごとに「サウンドバック 奏の石 」通称「サバク」は低迷

デスクや宣伝からやっぱり女は、新人はダメだと囁かれ

通勤電車に乗れば学生たちが酷評している声が聞こえる

ネットの評価も最悪・・落ち込む

しかも雨の中転んで、絵コンテ用のタブレットを壊してしまうのです

そんな時、隣に住む鍵っ子の太陽くんがトボトボ歩いていました

服は汚れ膝に怪我をしている

明らかに虐められている、瞳は何も聞かず部屋に入れ

「サバク」のコラボ商品のカップ麺を渡すのでした

すると「アニメは信じない、作り話だから見ない」と言っていた太陽が

「これ知ってる」と「コマーシャルで見た」

届いてる、アニメを見ない子どもにも「サバク」は届いてる

カップ麺は無駄じゃなかったんだ

瞳は「絶対面白いから見て」「途中からでも絶対面白いから」と太陽に言い

改めて面白いアニメを作る!と決意

 

王子に教えてもらった群野葵のインスタを見てみます

彼女は「サバク」の舞台になった聖地を訪れ

彼女なりにヒロインがどういう人物か、どう演じるべきか考えていたのです

なのに私は自分のイメージだけ押し付けていた

行城だって、スポンサーの掴み方や付き合い方

そのためのコラボであることを

瞳に教えるため付き合わせていたのです

瞳は群野葵や行城だけでなく、スタッフ全員にも心を開くようになります

相手の立場になって、仕事を頼む

100%理解してもらえるよう、言葉で丁寧に伝える

すると視聴率はうなぎ上り

再び王子の「運命戦線リデルライト」通称「リデル」

覇権争いをするようになります

そこにきて瞳が最終回を変えると言い出しました

デスクは今から間に合わない

お決まりのハッピーエンドなラストじゃないと

放送終了後の円盤やグッズが売れなくなると渋っていると

行城が黙らせます

「うちは大手です」

「だからこそ目先のハケンより、10年後も残る作品を作りたい」

瞳の新しい絵コンテをスタッフたちが受け取りに来る

さあラストスパートだ、最終回にすべてをぶつけよう

その時瞳が倒れてしまいます

目が覚めると行城がお見舞いに持ってきてくれたのは

コージコーナーのイチゴ味のエクレアでした

泣いてしまう瞳

視聴率の結果は惜しくも2位

だけど瞳がアパートのベランダから下を見下ろすと

「サバク」のフィギュアを買ってもらった太陽が

男の子たちから「サバク」ごっこに誘われている姿

 

届いた、子どもたちに届いた

夢を叶えた瞬間でした

王子も見事復帰を果たすことができました

そこで王子はいままで支えてくれた有科に

「彼氏はいるの?」

「なんなら結婚してあげてもいいけど」と突然のプロポーズ

「はぁ???」

有科の苦労も、まだしばらく続きそうですね(笑)



 

【解説】映画.COMより

直木賞作家・辻村深月がアニメ業界で奮闘する人々の姿を描いた小説「ハケンアニメ!」を映画化。地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ新人監督・斎藤瞳は、デビュー作で憧れの天才監督・王子千晴と業界の覇権をかけて争うことに。王子は過去にメガヒット作品を生み出したものの、その過剰なほどのこだわりとわがままぶりが災いして降板が続いていた。プロデューサーの有科香屋子は、そんな王子を8年ぶりに監督復帰させるため大勝負に出る。一方、瞳はクセ者プロデューサーの行城理や個性的な仲間たちとともに、アニメ界の頂点を目指して奮闘するが……。新人監督・瞳を吉岡里帆、天才監督・王子を中村倫也が演じ、柄本佑尾野真千子が共演。「水曜日が消えた」の吉野耕平が監督を務めた。劇中に登場するアニメは「テルマエ・ロマエ」の谷東監督や「ONE PIECE STAMPEDE」の大塚隆史監督ら実際に一線で活躍するクリエイター陣が手がけ、そのキャストとして梶裕貴ら人気声優が多数出演。

2022年製作/128分/G/日本
配給:東映