聖なる証(2022)

原題はThe Wonder」(驚き、不思議、素晴らしい)

現代の撮影スタジオにナレーション

「これから映画「聖なる証」が始まる、この物語を信じてほしい」

1862アイルランド人は英国が原因で大飢饉で苦労したと憎んでいた」

このオープニングには、ちょっとびっくりしたんですけど(笑)

キリスト教にとって断食は宗教行為のひとつで

「罪の赦ゆるしと、弱点を克服する力を祈り求め、人を赦す」

という特別な意味があるため

これは映画なんだよ、作り話なんだよ、とわかるよう

配慮しているんですね(たぶん)

1862年、アイルランドの寒村

4ヶ月絶食しても生きている11歳の少女アナの観察を

教会の評議会から依頼され

ロンドンから看護師のエリザベスがやって来ます

観察は修道女と8時間ごと2交代制

健康診断では虚弱気味であるけれど健康

食べない理由を聞くと「天のマナを食べている」と答え

朝夕にはお祈りを唱えています

アナに食べている様子はない

口に入れるのは水だけ

アナが嘘をついているようには見えません

 

アナのことを「聖なる石」(利益をもたらす不思議な力をもっている)と

アナの家にはアナに会うため多くの信者が訪ねてきます

エリザベスは、来客から食べ物を貰っているのかも知れない

「観察」のため面会を禁じさせます

さらに家族との朝夕のお祈りも禁じます

そんなとき、テレグラフ紙のウィル・バーン記者が取材にやって来て

エリザベスと同じ民宿に泊まることになります

 

ウィルはこの村の出身で村の風習をよく知っていました

アナは必ずどこかで食べていると断言します

家族と面会できなくなれば、アナに食事は与えられず命の危険となる

しかし食事を与えられていたとわかれば、家族は教会から破門

住む家を追われ「奇跡の少女」は虚偽の陳述と隠ぺいで裁かれる

どちらにしてもアナを待つのは「死」しかないのだと

ウィルには過去の飢饉で家族を全員

餓死で亡くしたという過去がありました

それも「人間の尊厳」を守る、という教えのせいで

ウィルの言う通り、家族との面会を絶ってから

アナはどんどん痩せ衰えていきます

エリザベスはお祈りの際に、母親がキス(口移し)で

食べ物を与えていたことを知り

再びお祈りするように頼みますが、母親は拒否

このままだとアナは死んでしまう

しかもアナは死んだ兄が地獄の業火で焼かれているという

罪の意識に苛まされていました

兄の魂を解放するためには、断食しなくてはいけないと

エリザベスは断食は1回でいいはず、と諭すと

アナは足りないと答えます

アナ9歳のとき、から“二重の愛”だと教えられ

深夜に結婚して夫婦になり、何度も愛し合ったと告白します

その兄は奇病にかかり死んでしまった

兄が死んだのは私のせいだと母親が言った

死んで償う

16世紀から20世紀にかけて英国では定期的に

Fasting girl」(断食少女)が現われたそうです

何ヶ月も食べていないと主張する、少女とその家族のことで

目的は信者の恩恵にあずかり教区から寄付をもらうこと

さらにバチカンのような高位なところから

奇跡認定されることが目標なのだそうです

母親が食べものを与えていたのはアナを助けるためじゃない

お金と「奇跡の娘」の親になるためだったのです

しかも近親相姦も、兄が病気で死んだのも

アナのせいという記憶の植え付けをしていたのです

(被害者に加害者の罪を償わせる)

日本でも親が病気や困窮を装い

生活保護や養育手当を貰うため)子を学校に行かせないという

ケースがありますが

 

幼い子には親の教えこそが真実

まして罪の意識があると、洗脳されてしまうのもあたりまえ

エリザベスはアナをこの家から、逃がす決心をし

ウィルに協力を求めます

アナとエリザベスはお互いの秘密の名前

アナは「ナン」、エリザベスのことは「リブ」と呼び合っていました

エリザベスはアナに「もうじきアナ死ぬ」

「でも目が覚めた時、ナンに生まれ変わっている」

9歳の幸せなナン」

と暗示をかけ睡眠薬を飲ませます

そして家族がミサに行っている間に

「奇跡の泉」と呼ばれる場所に連れて行く

証拠隠滅のため、家に火を放つ

アナの焼死体は見つからない

エリザベスは評議会にかけられます

 

だけど神様はエリザベスに微笑んだ

ロンドンに戻ったエリザベスは

新しい家族、ウィルとナンとともに

新天地オーストラリアを目指すのでした

そして再び現代のセットで終わるラスト

こういう凝った作りは新しい

 

ただ最近の映画は「児童虐待」や「性暴力」など

見る前に注意書きが表示されるので

おおよその内容が想像できてしまうという弱点(笑)

残念ながら、展開に驚きはありませんでした

 

 

 

【解説】Yahoo!映画より

1862年のアイルランド・ミッドランズ地方。イギリス人看護師のリブ・ライト(フローレンス・ピュー)は、ある調査のため信心深い人々が暮らす集落を訪れる。訪問の目的はアナ・オドネル(カイラ・ロード・キャシディ)という11歳の少女を観察することで、彼女は4か月も食事をしていないにもかかわらず、天の恵みにより生きているという。アナに何が起きているのか突き止めようとする中、彼女の健康状態を心配するリブと村人たちの信仰心が相対する。[Netflix作品]

19世紀半ばのアイルランドを舞台に、4か月も食事をせずに生きている少女を観察するため、敬虔(けいけん)な信者たちが暮らす村を訪れた看護師を描くドラマ。『ルーム』の原作・脚本などを担当したエマ・ドナヒューの小説を、『ナチュラルウーマン』などのセバスティアン・レリオ監督が映画化。『ミッドサマー』などのフローレンス・ピューが看護師、カイラ・ロード・キャシディが少女を演じるほか、トム・バーク、キアラン・ハインズトビー・ジョーンズ、エレイン・キャシディらが出演する。