原題も「ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD」
(むかしむかし、ハリウッドで)
私はタランティーノの露悪で与太話的な作風が
あまり好きではないのですが、これは単純に面白かったです
初共演というレオとブラピのコンビの息もぴったり
マーゴット・ロビーのキュートさも、おバカになり過ぎず
丁度いい加減で見ていて心地いい
1969年、ロマン・ポランスキーの妻で妊娠八か月のシャロン・テートが
夫の留守中ロサンゼルスの自宅で友人らと過ごしていたところ
狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者3人に
友人らとともに、ナイフで刺され、腹を裂かれ、乳房を切り取られ
殺された「シャロン・テート殺害事件」を
マンソンファミリーが間違って隣の家に押し入ってしまい
逆に惨殺されてしまうという
タランティーノの趣味全開の妄想を3時間半かけて描いたもの
(もともとの事件も、マンソンが元の家主でレコードプロデューサーの
テリー・メルチャーがまだ住んでいると勘違いして襲撃させた)
リック(レオ)とクリフ(ブラピ)それぞれのモデルは
リックはかって人気テレビ西部劇の主役でしたが
今は悪役専門の端役で食いつないでいます
プロデューサーから痛いところを突かれると泣いてしまったり
セリフを忘れたときは、飲みすぎたことを後悔して
自分自身をアル中だと罵倒したり、お間抜けに見えるところもあるけど
子役の女の子に慰められて勇気付けられたり、繊細で憎めないタイプ
それでもビバヒルの豪邸に住み、クリフの住む家とは雲泥の差
いくら落ちぶれたとはいえ、それなりの収入はあるのでしょう
そんなリックの家の隣になんと
新鋭監督のロマン・ポランスキーが引っ越してきた
クリフはリック専属(妻殺しの噂があって他から仕事がこない)の
スタントマンであり、親友であり、運転手であり、付き人
ほとんどの時間をリックと一緒に過ごしています
シャロン・テートは音楽が好き、ダンスが好き、パーティーが好き
ポランスキーと結婚してからも男性からモテモテ
スティーブ・マックイーンも、ブルース・リーも彼女に気がある(笑)
(「じゃじゃ馬億万長者」のイメージのせいで)アタマは弱そうに見えるけど
ポランスキーに「テス」を読むことを勧めるあたり
本当は聡明な女性だったのでしょう
そんなリック、クリフ、シャロンの3人を軸に
タランティーノの(当時の)痛快ハリウッド批判
黒人俳優はひとりも出てこない
アジア人俳優に対する差別
イタリア映画(マカロニ・ウエスタン)への偏見
そして何よりヒッピー軍団の怖さ
クリフがヒッチハイクをしている女の子
プッシー・キャット(なんちゅう名前 笑)を
かっては西部劇ドラマの撮影に使われていた
スパーン牧場(Spahn ranch)に送って行くあたりから
タランティーノお得意の暴力描写が炸裂
断然面白くなっていく
それって高倉健さんの「死んで貰います」じゃないけど
私たちの潜在意識の中には
犯罪者や、頭の悪い奴には死んで貰ったほうがいいという
誰でも少なかれ残虐性があると思うんです
そしてリックが、あれほど嫌っていたイタリア映画に主演することになり
撮影終了後はイタリア人の若手女優と結婚
リックに今までのように一緒に居れないと言われたクリフは
その夜、悲しくてLSDを染み込ませた煙草を吸います
そして愛犬ブランディに餌をやろうとした時突然トリップしてしまう
そこにナイフを持ってやってきたマンソンファミリー3人組
ラリったクリフは見境がつかなくなっており
餌をもらえなかったワンコはストレスマックス
ワンコはヒッピー男の股間に噛みつき
クリフは女の顔が潰れるまで殴る
最後はプールで異変に気付いたリックが
狂ったピストル乱射女を火炎放射器で火あぶり
これにはさすがのワンコも、クリフとリックの残酷さに引いてしまい
リックの新妻の部屋に隠れてしまいます(笑)
怪我をしたクリフは救急車で運ばれ
リックは騒ぎを案じたシャロンから「飲まない」かと誘われる
まるでヒッピーが死んだことが、あたりまえのように
アメリカの文化は本当に怖い
でも、ブラッディマリーでセロリを食べたり
マルガリータをミキサーで作って、ジョッキみたいに飲んで
酔っぱらうのは楽しいかも(そこ? 笑)
【解説】allcinema より
「パルプ・フィクション」「イングロリアス・バスターズ」のクエンティン・タランティーノ監督が、1969年のハリウッドを舞台に、古き良き60年代アメリカへの愛を描いたノスタルジック・エンタテインメント。有名な“シャロン・テート殺人事件”を背景に、復活を期す落ち目のTV俳優と、長年彼のスタントマンを務めてきた男の友情の行方を、虚実を織り交ぜつつ郷愁あふれる筆致で描き出す。
主演はこれが初共演となるレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット。ヒロインのシャロン・テート役にマーゴット・ロビー。
落ち目のTV俳優リック・ダルトンは、なかなか復活の道が拓けず焦りと不安を募らせる。情緒不安定ぎみな彼を慰めるのは、リックのスタントマンとして公私にわたって長年支えてきた相棒のクリフ・ブース。固い絆でショウビジネスの世界を生き抜いてきた2人だったが、このままでは高級住宅地にあるリックの豪邸も手放さなければならなくなる。そんな彼の家の隣には、時代の寵児となった映画監督のロマン・ポランスキーとその妻で新進女優のシャロン・テートが越してきて、彼らとの勢いの違いを痛感するリック。一方クリフはヒッチハイクをしていたヒッピーの少女を拾い、彼女をヒッピーのコミューンとなっていた牧場まで送り届けてあげるのだったが…。