エリック・ロメール「喜劇と格言劇」シリーズ第3作目
ロメールの中でもっとも有名な作品
原題「Pauline à la plage」（ビーチでポーリン）
副題は「Qui trop parole, il se mesfait」（言葉多き者は災いのもと）
ショートボブに青い襟のセーラー服、どこか寂しげ
ポーリーンからインスパイアされたのかも知れません
夏の終わり、ノルマンディー海岸にある別荘に
15歳のポーリーヌは、従妹のマリオンと避暑に来ます
そこで偶然出会ったのがマリオンの旧友で
彼にサーフィンを教えてもらっていた学者のアンリでした
アンリの家はビーチのすぐそばにあり、マリオンたちを招待します
家には離婚した妻から預かった幼い娘がいて子煩悩ぶりをアピール
自分の結婚観や、妻との離婚の経緯を話しマリオンは興味深々
ふたりの世界の始まりに、ポーリーヌはなんとなく居場所がないし
マリオンに好意をもっているピエールは気が気でない
だけど来たばかりで「帰ろう」というのも失礼な気がするし
アンリとマリオンのエロになるつつある雰囲気に（笑）
ただひたすら耐える
案の定、お盛んなマリオンとアンリはすぐヤッてしまいます（笑）
ピエールが「アンリのようなろくでもない男と」と嫉妬すると
マリオンはピエールにはポーリーヌがお似合いと
ポーリーヌにもピエールと付き合うことを勧めるのです
ピエールは「ポーリーヌはまだ若い」とマトモだし
ポーリーヌは「同世代の男友達がいい」と言ってるのに
人の意見など全く聞こうとしません
一方のアンリはピエールの言う通りろくでもない男
寝ているポーリーヌの脚に愛撫するとか気持ち悪いから（笑）
しかもポーリーヌに蹴りを入れられ、嗚咽を吐いても
「起こそうとした」「きみは女だ」と後悔も、反省もしない凄さ
さらにはキャンディ売りの女の子ルイゼットと
ポーリーヌのボーイフレンド、シルヴァンを自宅に招き入れ
アンリはルイゼットとエチし始める
そこにマリオンが訪ねてきたことを
アンリに知らせに行ったシルヴァンと
裸のルイゼットを個室に閉じ込め
自分は無関係で、ふたりがデキているような演出までする
（言い訳をしないシルヴァンが男前だぜ）
しかもマリオンはそのことをわざわざポーリーヌに伝え
ポーリーヌが傷つくような助言をするのです
それでもポーリーヌはシルヴァンのことを信じていました
（アンリとマリオンのほうが信用できないのは子どもでもわかる）
やがてルイゼットから真実を教えられます
ポーリーヌ（アマンダ・ラングレ）
15歳の少女
従妹のマリオンと、彼女に係わる男たちに振り回されながらも
冷静に考え大人になっていく
マリオン（アリエル・ドンバール）
バツイチ、30歳くらい、自他認める美人
自意識過剰で、他人を見下す傾向がある
ピエール（パスカル・グレゴリー）
マリオンと古くからの友人、マリオンに好意を抱いている
純真すぎて嫉妬深いため、マリオンから幼く見られ
ポーリーヌと付き合えと言われている
トリコロールの青
アンリ（フェオドール・アトキン）
女を選ばない、自由を愛するプレイボーイ
トリコロールの赤
シルヴァン（シモン・ド・ラ・ブロス）
ビーチで出会ったポーリーヌと同じ15歳の少年
真面目、ポーリーヌとお互い惹かれあう
トリコロールの白
撮影監督のネストール・アルメンドロスとロメールは
3人の男性それぞれに特定の色を割り当て
青、白、赤が支配する映像の美学を描こうとしたそうです
ルイゼット（ ロゼット）
ビーチでナッツやキャンディを売っている女の子
アンリと関係をもっているが、実は彼女も15歳
枯れた紫陽花
閉じられた門
セーラー服
そして「さよなら」も言わないまま、走り去る車
15歳の夏はもう来ない
「ただ待ってるだけなんです」
「何を待つんです」
「まったく予期できない何か つまり愛です」
「心の底で信じていなかった だから結婚に失敗したの」
「愛は意志じゃない」
「恋愛の秘訣は 相手の欲望に火を付けることだ」
「完璧は重苦しい 不完全な方が魅力的だ」
「私は燃え上がる愛を求めてる」
「パッと燃え上がる愛より 時間をかけた愛のほうが本物」
「人は他人の選択を認めないのね」
「お互いが信じたいことを信じれば お互い満足」
「あなたは平凡なのよ」
「真実を知ることがいつも幸せとは限らない」
「ウソかもしれないことで 悲しむことは間違いよ」
「どうして大人の男性は率直になれないの」
「本当にムカつく」
「愛は狂気よ」
【解説】映画.COMより
エリック・ロメール監督による「喜劇と
格言劇」シリーズの第3作。海辺の別荘で6人の男女が織り成す恋愛模様を、思春期の少女ポーリーヌの目を通して描く。15歳の少女ポーリーヌは、年の離れた従姉マリオンと一緒にノルマンディの別荘へバカンスにやって来る。海辺へ出かけた2人は、マリオンの元恋人ピエールと出会う。ピエールは現在もマリオンへの思いを引きずっていたが、マリオンはピエールの知人であるプレイボーイのアンリに恋をしてしまう。一方、ポーリーヌは海辺でウィンドサーフィンをしていた少年シルバンと親しくなるが……。ベルリン国際映画祭で銀熊賞と国際批評家連盟賞を受賞した。
