「友達は自分で選べる家族」 (Friends are the family you choose)
原題は「THE PEANUT BUTTER FALCON」(主人公のリングネーム)
プロレスラーを目指すダウン症の青年を中心にしたロードムービーで
ひとこと感想は大人のためのマーク・トウェインの世界
ダウン症が主人公の映画といえば
「八日目」(1996)「チョコレートドーナツ」(2012)等ありますが
本作は健常者とハンディキャップを持つ人間の係わりかたを
いかにバリアフリーにするかがテーマで学ぶものがありました
老人の養護施設で暮らすダウン症で22歳のザックは
憧れの悪役レスラー、ソルトウォーター・レッドネックの
ノースカロライナ州エイデンにあるプロレス養成所に入学するため
養護施設を脱走することを計画します
冒頭からザックの脱走に協力するおばあちゃん
おじいちゃん(ブルース・ダーン)がめっちゃイイ感じ(笑)
パンツ一丁で施設を飛び出したザックは
川に止めてあった舟に身を隠し夜を明かします
舟の持ち主で漁師のタイラー(シャイア・ラブーフ)は
蟹を盗んだ罪で市場から解雇され
蟹漁師たちに弁償を迫られ喧嘩したものの弱くて殴られっぱなし
腹いせに蟹漁の網に放火し舟に乗って逃げるのですが
それが思わぬ大火事になり市場を焼き尽くす事件になってしまいます
そんなクズで糞野郎のタイラーですが(笑)
無責任な言動とは裏腹に、心の中はやさしいんですね
パンツ君に自分のシャツを着せ、足が痛いと言えば長靴を貸す
泳げないといえば泳ぎを教える
銃の撃ち方も教える
プロレスラーになるためのトレーニングに付き合う
タイラーにはザックがダウン症だから出来ないという考えはない
練習すれば何だってやれると信じてる
結局エイデンまで同行することになります(笑)
そこに施設長の命令でザックを追いかけてきた
看護師のエレノア(ダコタ・ジョンソン )が加わります
彼女の行いは私たちと同じ、正しいように見えて実は多様性に線を引いている
「ザックをウスノロ扱いするんじゃない」
「こいつは22歳の若者なんだ」
タイラーの言葉に、自分もザックを差別していたことに気付く
しかしソルトウォーター・レッドネック(トーマス・ヘイデン・チャーチ) は
10年以上前に引退していて、プロレス養成所もとっくの昔に閉鎖
酒浸りの老人で、ザックは彼が
ソルトウォーターであることにも気付かない
がっくりと落ち込んだザックがトボトボと帰り道を歩いていると
古くてボロボロのオープン・カーが砂埃をあげてやってきた
ソルトウォーター、最高にかっこいいぜ(笑)
そしてザックのため、草試合を組んでくれるのです
その試合の相手のサムというのが本物の元プロレスラーでスーパースター
”ザ・スネーク”ことジェイク・ロバーツという
プロレスファンにはたまらないおまけつき
ところがソルトウォーターも観客たちも
「可哀そうな障害者のためのパフォーマンス」と思っていたのが
プロレスを甘く見るな、サムは本気で試合に挑みます
非情に思えるけど、勝負の世界で特別扱いは無用
が、ザックには超馬鹿力という特技があった(笑)
巨漢を持ち上げリングの外に投げ飛ばすのです
ザックの勝利が確定したそのとき
タイラーの居場所を知った蟹漁師がタイラーをバールで襲う
タイラーのせいで一文無しになったのだから気持ちは判るけど
殺してしまったらお金を返してもらえないと私は思うがな(笑)
アメリカの法律ってどうなっているんだろう
(そういうことを考え出したら映画は100%楽しめない 笑)
退院したタイラーと、ザックとエレノア
家族がいない3人が、フロリダに向かうシーンで映画はエンド
フロリダって住む場所や仕事が簡単に見つかる場所なのかな
(そういうことを考え出したら映画は100%楽しめない その2)
ただタイラーが借金を返す気持ちになったのはいい
障害者に手を差し伸べるのは簡単だけど
できないことを、代わりにやってあげるのではない
やればできることを協力する
差し伸べかたを考える映画
ついでに泥酔が原因で数々のゴシップで有名なシャイアが
本作の撮影中にも事件を起こし
ダックの「君はもう有名だけど、僕のチャンスを台無しにした」の言葉に
アルコール依存症の治療を決意したというのもいい話ですね
ちなみにその後もシャイアのゴシップは続いているみたいですが(笑)
(そういうことを考え出したら映画は100%楽しめない その3)
【解説】allcinema より
実際にダウン症のザック・ゴットセイゲンが幼い頃からの夢を叶え、俳優として長編映画デビューを飾り高い評価を受けた青春ロード・ムービー。プロレスラーを夢見て施設を飛び出したダウン症の青年と事件を起こして逃亡中の無軌道な男が、ひょんなことから一緒に繰り広げる奇妙な旅の行方をハートウォーミングに綴る。共演にシャイア・ラブーフ、ダコタ・ジョンソン、ジョン・ホークス、ブルース・ダーン、トーマス・ヘイデン・チャーチ。監督は共に本作が長編デビューとなるタイラー・ニルソン&マイケル・シュワルツ。
ザックは養護施設に暮らすダウン症の青年。子どもの頃からプロレスラーに憧れていた彼はある日、プロレスラーの養成学校を目指して施設を脱走する。一方、孤独な漁師のタイラーは、無許可で漁をしていて地元漁師とトラブルになり、ボートで逃亡を図る。ところが、そのボートにはザックが隠れていた。最初は追い払おうとしていたタイラーだったが、やがて一緒に旅を続けることに。そんな2人の逃避行に、やがてザックを追ってきた施設の看護師エレノアも加わるのだったが…。