ピエロがお前を嘲笑う(2014)

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ハッカーにとって、進入できないシステムはない」

原題は「Kein System ist sicher 」(安全なシステムはない)

伊坂幸太郎さんの小説のタイトル(笑)のような邦題は

主人公たちのハッカー・グループ名 「CLAY

Clowns Laugh At You= ピエロがお前を嘲笑う)から

 

Who Am I 」の英題もだけど

「騙された」「先の読めない」「まさかの結末」みたいな

見る前からどんでん返しとわかるキャッチコピーは

映画の楽しみが半減するので、やめたほうがいい(笑)

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プロットは、ハッカー集団同士の戦いを

ファイト・クラブ(1999)のアイディアと

ユージュアル・サスペクツ(1995)をオマージュして

現代版若者向けにしたドイツ映画

 

世界最大のハッカー集団(Chaos Computer Club)の

根拠がベルリンであることや

親ロシアのハッカー集団、サイバーベルクート(КиберБеркут )が

NATOのサイトをダウンさせたり

ドイツ首相と議会ホームページをダウンさせたという背景を知ると

本作がユーロ圏や、ロシアで大ヒットしたのも納得できます

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殺人現場、そして孤独なコンピューター青年で

指名手配中のハッカーベンヤミンがユーロポールに自首し

女性捜査官ハンナに事件の終始を語ろうとするところから

物語は始まります

 

ピザの宅配バイトで初恋の相手、マリと再会

マリの試験問題を盗もうと、大学のサーバーに侵入したものの逮捕

社会奉仕活動することになった先でマックスという男と知り合い

ベンヤミンを見込んだマックスは仲間のシュテファンとパウルに紹介

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彼らは「CLAY」と名乗り

ドイツ社会同盟(極右ネオナチを除いた最も右派的な政党)

パーティ会場でプレゼン用の端末をハッキング

ヒトラーの下品な動画を流したり

 

株式相場の変動を「中指を立てた」形で示したり

大手製薬会社をビルの窓に「私たちは動物を殺しています」と文字を流したり

ポルノサイトの無料公開、新聞記事捏造

最初はほんの腕試し、イタズラのつもりでしたが

やがて検索ワードでも上位に入るようになります

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CLAY」はハッキング界のカリスマMRXに認められようとしますが

MRX」から相手にされていないことがわかります

しかもロシアのハッカー集団「FR13NDS(フレンズ)」のほうが

注目されていました

 

CLAY」は「FR13NDS(フレンズ)」より実力があるのを示すため

連邦情報局に侵入しデーターを盗むことに成功

しかしその祝杯を上げたクラブで

マックスマリキスしているのを目撃したベンヤミン

マックスを見返すため盗んだデータをMRXに送ってしまうのです

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間もなくしてそのデータが「FR13NDS(フレンズ)

メンバーの遺体ともに発見されます

すべては「MRX」の罠でした

CLAYハッキングだけでく殺人の容疑かけられてしまうのです

 

ベンヤミン無実の罪を晴らすため、「MRX」の正体を暴くため

FR13NDS(フレンズ)とコンタクトを取ると

「ユーロポールに木馬(ウイルス)を仕掛けろ」と条件を出されます

しかもそれさえも「MRX」の罠でした

ベンヤミンの正体の身元のほうがバレ、公開されたうえ

マックスたち仲間まで殺されてしまったのです

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ベンヤミンはハンナに、MRX」「FR13NDS(フレンズ)

全ての情報を提供する見返りに、証人保護プログラムを申請します

 

しかしハンナの出した答えは、ベンヤミンの母親は精神障碍者で多重人格だった

そしてベンヤミンも多重人格ということでした

マックスもシュテファンもパウルも、ベンヤミンが作り出した人格

そうしてベンヤミンは無罪となるわけですが

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マックス、シュテファン、パウルベンヤミンの妄想なのか

それとも本当に存在したかどうかは最後まで明かされません

 

4つの角砂糖が、そもそも4つなのか

水に溶ければひとつになるのと同じように

それと同じくハッカーの世界も常に姿を替え、目に見えない

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ただ願わくば、その能力を犯罪ではなく

自分や、世界中の人々の利益になることに使って欲しい

せっかくの天才に生まれた宿命を、不幸や実のならないものにするのは

あまりにもったいない、そう思います

 



【解説】allcinema より

突然警察に出頭した天才ハッカー青年を主人公に、彼の語る事件の顛末と、その自白に翻弄される捜査の行方を、予測不能のストーリー展開で描き出すドイツ製クライム・サスペンス。主演は「コーヒーをめぐる冒険」のトム・シリング。監督は、これが長編2作目となる注目の新鋭バラン・ボー・オダー
 ある日、殺人事件への関与を疑われ国際指名手配されていた天才ハッカーベンヤミンが自ら警察に出頭してきた。その自白によれば、きっかけは、想いを寄せる女性マリのために試験問題を入手しようとしたことだった。その後、野心家のマックスと出会い、2人を中心にハッカー集団“CLAY(クレイ)”が結成される。遊び半分に手当たり次第にハッキングを繰り返し、世間の注目が高まっていくことでいつしか有頂天に。やがて不用意なハッキングがもとで殺人事件が起こってしまったというものだったが…。