ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像(2018)

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原題は「Tumma Kristus」(未詳の巨匠)

邦題の「ラスト・ディール」は最後の取引という意味

 

フィンランド映画って子どもが可愛いくて

インテリアがお洒落なイメージがあるのですが(笑)

本作も古びた画廊や街並み、イマドキな少年がヨカッタですね

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ヘルシンキの街角で長年画廊を営んでいる老画商オラヴィ

ある日疎遠になっている娘から

孫のオットーの課外職業体験を引き受けて欲しいと頼まれます

 

オラヴィは画商一筋で、家庭を顧みず

お金を全て美術品につぎ込んできた男なのでしょう

孫の世話なんてとんでもないと断りますが

オットーは勝手に来てしまう

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しかも客に1250ユーロの画を1650ユーロで売り

オラヴィには1500ユーロで売れた嘘をつき差額分はポケットに
このオットーのずる賢さと行動力が

後半の出来事の伏線として活かされてきます

 

そんなときオラヴィはオークションハウスで

サインのない”男の肖像画”に惚れこんでしまう

もしかしたら19世紀、ロシアのレンブラントと称された

レーピンの作品ではないか

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オラヴィはいつかは名画の大きな取引をするのが夢でした

しかしオークションでの競り合いは予想以上にヒート

ついに1万ユーロ(約120万円)で落札したものの

彼に支払うお金はありませんでした

 

家にある貴金属を全て売ってもわずかな金にしかならない

友人や娘に借金を申し入れても、生活が苦しいのは皆同じ

ついにはオットーがコツコツ貯めていた

大学進学のための資金に手をつけてしまうのです

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今度は手に入れた肖像画を売るために

レーピンが描いたものであるかどうか証拠を見つけなきゃいけない

本物の巨匠の絵かどうかの決め手って

古い美術書に絵の写真が掲載されているかどうかなんですね

 

肖像画と同じタイトルとサイズの画の持ち主を発見したオットーは

ネットで住所を見つけ訪ねると、持ち主の女性は亡くなっていました

しかしオットーを女性の親戚だと信じた施設の職員は

遺品の中で欲しいものがあれば持って行っていいと言います

そこで肖像画がレーピンのものであるという証拠の本を見つけるのです

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オラヴィは昔の取引先の富豪に

レーピンを12万ユーロ(約1440万円)で売ることにしますが

(オットーの撮ってくれた写真を簡単に破くのが糞)

レーピンの画だと気付いたオークションハウスの社長が

富豪に(肖像画を取り戻すために)「贋作だ」と

アドバイスしたせいで取り引きは中止

 

客も入らない、しょぼい画廊の老画商より

オークションハウスの社長の言うことを世間は信じる

しかも贋作の噂が出たら、画商として終わり

もうどこも取り引きしてはくれないのです

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オラヴィは画廊を畳む決意をし

店を売ったお金で借金とオットーの進学資金を返します

オットーのから届いた職業体験で最高点より上の評価のはがき

真贋査定を依頼した美術館からの
「聖画なので、サインしなかったものと思われます」の留守電

最後に遺言状を書く

すべて片付いた時オラヴィは口笛を吹いていました

幸せの口笛

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これでよかったのです

売れないでよかったのです

レーピンの画は自分のもの、そして孫のもの

オットーとふたりで見つけ出した傑作なのだから

 

☑️6!!!!!から

オラヴィの友人と、オットーが名画を守り抜こうとしたこと

そして娘への謝罪の手紙

終盤からラストまでは、グッと温かい気持ちにさせてくれます

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ただ将来オットーが、お爺ちゃんのようなギャンブラーになりそうで

それだけがちょっと心配(笑)



【解説】映画.COMより

「こころに剣士を」のクラウス・ハロ監督が、作者不明の「運命の絵」に魅せられた老美術商とその家族を描いたフィンランド発のヒューマンドラマ。年老いた美術商オラヴィは、家族よりも仕事を優先して生きてきた。そんな彼のもとに、音信不通だった娘から電話がかかってくる。その内容は、問題児の孫息子オットーを、職業体験のため数日間預かってほしいというお願いだった。そんな中、オラヴィはオークションハウスで1枚の肖像画に目を奪われる。価値のある作品だと確信するオラヴィだったが、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品されるという。オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その画風から近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品といえる証拠を掴む。「幻の名画」を手に入れるべく資金集めに奔走するオラヴィは、その過程で娘親子の思わぬ過去を知る。