原作は小川洋子の小説
モデルは奇妙なライフスタイルで知られた
「変わり者の中の変わり者」ポール・エルデシュ
数学だからといって、意外と難しいことはなく(笑)
数学初心者向けへの解説に近い
多少恋愛(不倫)要素も入っているので、大人向けに感じるけど
むしろ中学校の課外授業などで上映して欲しい
もしかしたら数学の苦手な子が
数学好きになるきっかけになるかも知れません
新学期、生徒たちから「ルート」と呼ばれている数学担任(吉岡秀隆)が
最初の授業で、なぜ「ルート」というあだ名がついたのか
そのエピソードを生徒たちに聞かせるのです
それはシングルマザーの母「私」(深津絵里)が
交通事故による脳の損傷で、80分しか記憶できなくなってしまった
数学(整数論)博士(寺尾聰)の家の家政婦になるところから始まります
本当に数学の好きな人って
世の中の全てを数学で証明できるって言いますよね(笑)
博士も生きること、生活の何もかもを数学で表現する人
博士にとっては、全ての数字や数式に人間と同じように性格があり
愛があるのです
「私」はそんな博士に最初戸惑いながらも
博士の純真さと人間的魅力にだんだん惹かれていく
ある日、「私」に10歳の息子がいることを知った博士は
息子の学校が終わったら、連れてくるよう「私」に命じ
やって来た息子の頭を撫でながら
「キミは頭のてっぺんが平らだからルート」と名付ける
ルートと博士は野球好き、阪神ファンですぐに意気投合
ルートの野球の練習や試合にも参加するようになるのですが
試合中の事故でルートが救急車で運ばれて
心無い一言を「私」が言ってしまったり
博士が熱を出してしまい「私」とルートが
博士の家に泊まり込んで看病したり
博士の義理の姉で「未亡人」(浅丘ルリ子)のかねてからの嫉妬で
「私」は家政婦をクビになってしまいます
「eπi+1=0」
数学の中で最も美しい公式として名高い
そして「未亡人」に宛てたメッセージでもあったのです
i(愛)とは、イマジナリーナンバー
つまり想像上の数字
好きになった女性は人妻
結ばれない(解読できない)こそ、より強く悩ませる
やがて博士の記憶時間はだんだんと短くなり
ルートが22歳のとき博士は亡くなりますが
博士とキヤッチボールしたこと
数学を教えてもらったことは、何年経っても鮮明に思い出す
生徒たちも無心にルートの話に耳を傾け
そして授業の終了を知らせるチャイム
今日より明日、子どもたちはきっと数学が好きになる
全ての数字には意味があり
しかも自分の気持ちに答えを出すひとつの手段
博士は不幸だと思いますか
私は幸せだったと思います
好きな女性と、明るい家政婦とその可愛い息子が
最期までそばにいたんですから
- 【解説】KINENOTEより
記憶を80分しか維持出来ない数学博士と若い家政婦母子の心の交流を描いたヒューマン・ドラマ。監督は「阿弥陀堂だより」の小泉堯史。第1回本屋大賞に選ばれた小川洋子による同名小説を基に、小泉監督自身が脚色。撮影を「わらびのこう 蕨野行」の上田正治と、北澤弘之が担当している。主演は、「亡国のイージス AEGIS」の寺尾聰と「踊る大捜査線 BAYSIDE SHAKEDOWN 2」の深津絵里。第18回東京国際映画祭 特別招待作品出品、芸術文化振興基金助成事業作品。
新学期。生徒たちから“ルート”と呼ばれている若い数学教師(吉岡秀隆)は、最初の授業で何故自分にルートというあだ名がついたのか語り始めた。それは、彼がまだ10歳の頃――。彼の母親(深津絵里)は、女手ひとつで彼を育てながら、家政婦として働いていた。ある日、彼女は交通事故で記憶が80分しか保てなくなった元大学の数学博士(寺尾聰)の家に雇われる。80分で記憶の消えてしまう博士にとって、彼女は常に初対面の家政婦だった。しかし、数学談義を通してのコミュニケーションは、彼女にとっても驚きと発見の連続。やがて、博士の提案で家政婦の息子も博士の家を訪れるようになる。頭のてっぺんが平らだったことから、ルートと名付けられた息子は、すぐに博士と打ち解けた。そして、博士が大の阪神ファンで、高校時代に野球をしていたことを知った彼は、自分の野球チームの試合に来て欲しいとお願いするのだが、炎天下での観戦がいけなかったのか、その夜、博士は熱を出して寝込んでしまった。博士を心配し、泊り込んで看病する母子。ところが、そのことで母屋に住む博士の後見人で、事故当時、不倫関係にあった未亡人の義姉からクレームがつき、彼女は解雇を申し渡され他の家へ転属になる。だが数日後、誤解の解けた家政婦は復職が叶い、再び博士の家を訪れるようになったルートも、いつしか数学教師になることを夢見るようになるのであった。