ウエスト・サイド物語(1961)

f:id:burizitto:20210126213652j:plain

原題も「WEST SIDE STORY

BSプレミアム「年越し映画マラソン」ミュージカル特集で鑑賞

10代の頃民放の吹替(かなりカットされていたと思う)で見たきり

152分版はお初でございます

f:id:burizitto:20210126213704j:plain
まず序章の音楽が長すぎて笑った

何でココ、誰も突っ込こんでこない(笑)

タイトルデザインは、映画界にタイトルデザインの分野を確立したと言われる

グラフィックデザイナーのソール・バス

f:id:burizitto:20210126213723j:plain
街を流していた不良たちが、得意そうに格好をつけて踊りだす

指を鳴らしながら中腰で迫ってきて、パッとV字に足をあげる

見ごたえあるアクロバティックなダンスは

主人公のリチャード・ベイマーではなく

ジョージ・チャキリスやラス・タンブリンだったのですね(笑)

音楽は偉大なる作曲家レナード・バーンステイン

f:id:burizitto:20210126213802j:plain
この音楽と歌と踊りとファッションは若者を虜にし

「何回見た?」が合言葉になったそうですが

脚を長く見せるため、地面に穴を掘り仰角に撮影したのがけしからんとか

「この映画がミュージカルをだめにした」とまで

評価するオールドファンも多かったとか

私たちにとっては「これがマイケル・ジャクソンPVの元ネタ」ですが(笑)

当時はそれだけ新しいタイプのミュージカルだったのでしょう

f:id:burizitto:20210126213818j:plain
NYのジェット団(ポーランド系)とシャーク団(プエルトリコ系)は

縄張り争いの喧嘩が絶えず一触即発の状態で警察からも目をつけられています

ある夜のダンスパーティで、すでにジェット団を引退しているトニーと

ベルナルド(ジョージ・チャキリス)の妹マリア(ナタリー・ウッド)が

恋に落ちてしまいます

f:id:burizitto:20210126213835j:plain
しかしシャーク団のリーダー・ベルナルドと

ジェット団のリーダー・リフ(ラス・タンブリン)の決闘の日

止めに入ったトニーを庇ったせいで、リフはベルナルドに刺されてしまい

逆上したトニーはベルナルドを殺してしまいます

シャーク団のチノ(マリアが好きで結婚したいと思ってる)は

ベルナルドの復讐をするため銃を持ってトニーを追います

f:id:burizitto:20210126213850j:plain
ジョージ・チャキリスの恋人役のリタ・モレノがめっちゃいいよ

パワフルな歌と踊りもだけど、演技も光ってると思う

恋人のベルナルドを殺されて自分が一番悲しいのに

マリアの駆け落ちを助けるため、トニーに会いにいく

f:id:burizitto:20210126213936j:plain

だけど話を聞かないジェット団にレイプされそうになり

「マリアはトニーとの関係を知って激怒したチノに殺された」

と嘘をついてしまいます

f:id:burizitto:20210126213907j:plain
お人好しのドクはそのことをトニーに知らせてしまい

絶望したトニーは「殺しに来い」と叫びながらチノを探すのでした

f:id:burizitto:20210126213957p:plain
しかしなんだ、マリアがトニーに決闘を止めさせてと頼まなければ

ベルナルドは死ななかったし(ナイフをチラつかせたのはガキの遊びだろう)

アニタをジェット団のもとに行かせて危険にさらしたのもマリア

チノもマリアが現れなかったらトニーを撃たなかったかも知れない

f:id:burizitto:20210126214015p:plain
「銃は人を殺さない 人の憎みが相手を傷つけ自分も傷つける」

確かにそうだけど、憎しみは愛する人(あるいは土地やお金)を

失ったことで生まれる

f:id:burizitto:20210126214036j:plain
それ以外にも、この作品は今でも強いメッセージを持っていて

何度か背景に映し出される選挙ポスターは"Vote Al Wood" (投票アル・ウッド)

実は制作マネージャーのAllen K Wood.アレンKウッド)をネタにした

内部ジョークらしいのですが(笑)

ポスターの顔はいかにも共和党の議員顔で人種差別的な政治家に見えて

社会を変えるには”投票”しようというメッセージが感じられます

f:id:burizitto:20210126214110p:plain

そしてジェット団の一員になりたい女の子エニバディーズ

少年のような服装で、メンバーたちにからかわれても必死でついていく

性的な言及はないけれど、明らかにトランスジェンダーとして描かれている

ベイビー・ジョンとア・ラブもゲイのような気がする

f:id:burizitto:20210126214052j:plain
なんたって原作のジェローム・ロビンスにアーサー・ローレンツ

ティーブン・ソンドハイム(作詞)も同性愛者

バーンスタインバイセクシャルで、「男といちゃつくのはやめて」と訴える妻に

「芸術家はホミンテルン(ホモ+コミンテルン)なんだぞ」と平然と答えたそう

コミンテルン共産主義インターナショナル

とはいえ映画としてジェンダー・マイノリティ臭さはありません

f:id:burizitto:20210126214157p:plain
ただのミュージカルの傑作ではなく

この1本に実はアメリカの社会そのものが詰まってる

トランプからバイデンに政権が変わった今

この作品を選んだNHKのセンスは抜群でしょう


最後にエンドロールが無駄にカッコいい(笑)



【解説】allcinema より

ニューヨークの下町を舞台に、イタリア系のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団の無益な抗争と、その中で芽生える愛と悲劇を描いたミュージカル大作。『ロミオとジュリエット』の構図をウエストサイドのスラム街で展開させたストーリーはシンプルだが、とにもかくにも唄と踊りのダイナミズムに圧倒される(振り付けは共同監督でもあるロビンス)。『クール』『トゥナイト』『アメリカ』など数々の名曲も素晴らしく、アカデミーでは作品・監督・助演男優(G・チャキリス)・助演女優(R・モレノ)・撮影・美術・音響・編集・衣装デザインの他、当然ながらミュージカル映画音楽賞を受賞した。そして何より、マンハッタンを見下ろした俯瞰図の導入部を始めとした、70mmの大画面を活かしきった画面構成が光っている。ソウル・バスによるタイトル・デザインも秀逸だ。2002年に<ニュープリント・デジタルリマスターバージョン>としてリバイバル上映された。