「伊豆の踊子」「潮騒」についで”百恵&友和”文芸シリーズ三作目
共通しているのは”身分違いの恋愛”ですが
愛した女性の亡骸と祝言を挙げるラストは
感動的というよりは、正直言ってかなり変態
昭和17(1942)年、山陰の大地主・園田家の跡継ぎで大学生の順吉は
山番のひとり娘小雪と結婚するつもりでいました
しかし父親は大反対、園田家と家柄の釣り合う橋本家のお嬢
美保子と勝手に婚約させてしまいます
お嬢を演じた木内みどりが、出番こそすくないけど何気にいい(笑)
古風で、知的で、夫に尽くすお嬢様に見えるように頑張ってるけど
実はメガネっ子の天然ドジっ子
今なら絶対こういう女子のほうがモテる
順吉は父親の決めた結婚がいやで、小雪を迎えに行き
鳥取砂丘のある小さな町に駆け落ちします
そこで順吉の友人や町の人々に支えられ
ふたりは幸せに暮らしていましたが
やがて召集令状が届き出征することになりました
小雪は順吉と、毎日午後3時ちょうど
どこにいても一緒に「吉野木挽き歌」を歌う約束をします
小雪はどんなに遠くにいても順吉の足音や歌声がわかる
シャーマンなんですね(笑)
小雪は働きながら順吉の帰りを待ちましたが
3時になっても順吉の歌声が聞こえないようになり
そのショックか肺を患い寝込んでしまいます
(外国とは時差があるんだよ)
昭和21(1946)年、順吉の父親が死去し
村八分にされていた小雪の両親は、やっと小雪の見舞いに行きますが
小雪は危篤で、すでに友人たちが集まっていました
小雪はもうろうとした意識の中「順吉さんの足跡が聞こえる」と呟き
順吉は本当に帰ってきました
「私は今まであなたの妻とは思うていなかった・・」
小雪そう言い残して順吉の胸で息を引き取ります
その言葉に、順吉は小雪との結婚式と葬式を
山陰の実家で同時に挙げる決意をするのでした
小雪に花嫁衣裳を着せ、花嫁行列を作って帰宅
死んだ花嫁との婚礼に、涙を流す列席者たち
ここ泣けるというより、ホラーだけどな(笑)
このあとちゃんと火葬するならいいけど
このまま新婚初夜まで一緒ならなおさら怖い
もしかして死姦かよ(この奥さんはこういうことしか考えないよ)
人間として道徳に反する行為だけど
もしかしたらこれ以上ない、一途で究極の純愛かも知れない
大ヒットメーカーなうえ、アイドル映画だけでは終わらせない
西河克己の手腕はさすがなもの、だけど
「偽りの妻」が死体になって初めて本物の妻になる
ただ綺麗に終わらせるのではなく
その意味するものをもっと描き切って欲しかった
【解説】KINENOTEより
山口百恵主役による文芸シリーズ第三作目。大地主の息子と山番の娘との悲恋を描いた大江賢治の同名小説の三度目の映画化。脚本・監督は「潮騒 しおさい(1975)」の西河克己、撮影も同作の萩原憲治がそれぞれ担当。
山陰地方で園田家といえば、山園田といわれる程に名の通った大地主である。その一人息子で大学生の順吉は、山番の娘・小雪を愛しているのだったが、父・惣兵衛は、身分が違うと反対し、町の実業家の令嬢・美保子との結婚を強いるのだった。順吉が大学の休暇を終え京都に戻ると、惣兵衛に因果を含められた小雪は、他国の親戚にあずけられた。小雪に会いに帰省して、その事を知った順吉は、小雪を捜し出し、駆け落ちした。宍道湖のほとりの経師屋の二階が、二人の愛の巣となった。順吉は、肥くみ作業員、材木運びなどをして生活費を稼いだが、二人は幸せだった。だが、戦争が激しくなり順吉にも召集令状がきた。壮行会の日、小雪が唄った山の木挽歌を、どこにいても毎日、決めた時間に二人で唄うことを約束して、順吉は戦地へ向った。戦争はさらに激化し、いつしか順吉からの便りも絶えた。二人で約束した木挽歌を唄う事だけが小雪の心の支えだった。戦争は終った。小雪は結核で倒れたが、木挽歌を唄う事だけは欠かさなかった。やがて、惣兵衛が急死し、小雪はようやく両親と会う事を許された。だが、小雪の体力は限界にきていた。「あの人の足音が聞こえる……山に帰りたい」小雪がこう言って死んだその日、順吉が復員して来た。慟哭する順吉は、葬る前に、せめて山へ帰って、結婚式をしてやりたい、と切望した。花嫁が花婿に抱かれて園田家に着いた。村人たちは、嫁入り歌で二人を迎えた。式が終ると、順吉は、小雪の体を抱いたまま、木挽歌を唄った。それに和して唄うように、どこからか、順吉には小雪の声が聞こえてきた……。