ナイロビの蜂(2005)

f:id:burizitto:20200625183957j:plain

「君を守るよ」
「私もあなたを守るわ」

原作と原題はジョン・ル・カレの「The Constant Gardener」(誠実な園芸家)
ヒロインのモデルは、ル・カレが「本書を捧げる」と記した
難民問題に取り組んだ人道主義者イヴェット・ビアパオリ(1938~1999)

原作はわかりませんが、映画は「愛の物語」でした
たったひとりの女性、男性の尊厳を命を懸けても守る

f:id:burizitto:20200625184014j:plain

イギリス外交官ジャスティン(レイフ・ファインズ)の講義で異議を申し立てた
若い女性活動家、テッサ(レイチェル・ワイズ)
講義に参加していた傍聴者たちが次々と席を立ち去ることから
彼女が面倒な女として知られていることが想像できます
自分の目的を果たすためには手段を選びません

f:id:burizitto:20200625184033j:plain

ジャスティンに近づき、すぐに寝たのも彼の立場を利用するため
アフリカ行きが決まったジャスティンと夫婦になり妊娠
大きなお腹を抱え、ガイドである黒人医師アーノルドと共に
難民救済の活動に意欲を燃やします

f:id:burizitto:20200625184043j:plain

逆にジャスティンは純粋で臆病な男なんですね
テッサとアーノルドに性的な関係があるというメールが届いても
子どもをアーノルドの勤める難民キャンプの病院で産むと主張しても
不都合な真実を見ることができない

f:id:burizitto:20200625184108j:plain

テッサは死産してしまいますが、ジャスティンの同僚サンディにこっそりと
この病院で少女が殺された証拠を手に入れたから行動してほしいと頼みます
サンディはテッサの情報をイギリスに送り、返答の手紙が届きますが
サンディは自分の首が飛ぶと、深入りしないようテッサに警告します
テッサは手紙を見せてくれたら「自分の身体を好きにしていい」と
サンディに取引を申し込みます

f:id:burizitto:20200625184127p:plain

その手紙を持ち、アーノルドと出かけたテッサは
アーノルドと共に遺体で見つかりました
テッサの葬儀の後、テッサの仕事仲間の女性が
アーノルドはゲイで、テッサとの噂は嘘だったことを打ち明けます

f:id:burizitto:20200625184139j:plain

妻のことも、妻のしていた調査も知らなかったのは自分だけ
ジャスティンはテッサの従弟で弁護士のハラに会いに行き
ハラの息子にテッサの極秘ファイルをハッキングしてもらいます
そこにあったのはテッサが撮影した自分の寝起き姿の動画
彼女がいかに自分のことを愛していてくれたかを知ります

f:id:burizitto:20200625184149j:plain

彼女にとってジャスティンは他の汚れた男たちと違う「誠実な園芸家」
地獄のような光景から救われるオアシスのような場所だったのでしょう
ジャスティンもまた、彼女なしでは自分が生きられないことに気付きます
彼に残された使命は、彼女のやり残した仕事をやること

f:id:burizitto:20200625184201j:plain

ジャスティンはサンディを脅し
新薬を開発した製薬会社とイギリスが癒着のあったことを突き止めますが
すでに責任者は社内の権力闘争に巻き込まれ、現職を失おうとしていました
彼はジャスティンに、自分が破滅するなら経営陣も道連れにしてやると
新薬の副作用で死んだ者たちが埋葬されている場所を教えました

f:id:burizitto:20200625184229j:plain

ジャスティンはひとり、妻が死んだ場所に向かいます
その後、イギリスでは自殺として追悼式が行われていました
テッサの従弟ハラは、追悼の言葉としてジャスティンの集めた
国ぐるみで不正な新薬の実験が行われた証拠を読み上げるのでした

f:id:burizitto:20200625184245j:plain

でも、それよりもジャスティンの願いは
妻と一緒に埋葬されることだったと思います


【概要】ウィキペディアより
執筆の年からさかのぼる20年前、ル・カレがバーゼルビヤホールにいたとき、黒いひげにベレー帽の男が両開きのドアから自転車ごと入ってきてテーブルのそばに自転車を置いて座った。男は化学者で、対人毒物の研究に参加することを拒絶して今は無政府主義者だと話し始めた。その人物はライン川上流の河岸にひしめく「マルチ」と呼ばれる多国籍製薬会社の悪行をル・カレの脳裏に焼き付けた。ル・カレはいつの日かこの男と「マルチ」のことを書こうと思い、ひげやベレー帽や自転車は捨てても、男の怒りだけは将来のためにとっておこうと思ったという。
ル・カレは小説の舞台をアフリカにすることを考えた。まず、国際石油企業に略奪され、汚染されたナイジェリアを舞台にすることを考えたが、どうも平凡に思えた。そんなとき、赴任先のほとんどがアフリカだった元MI6のテッド・ユーニーが製薬業界はどうかと提案した。ル・カレはケニアを取材。そして調査すればするほど、アフリカにおける製薬会社の無法ぶりに憤りを覚えたという。
本作品は「イヴェット・ピエルパオリに捧げる」との献辞がある。慈善活動家のピエルパオリはル・カレの古い友人で、登場人物のテッサ・クエイルのモデルとされている。「アフリカの貧しい人々、とくに女性への献身、慣習への軽蔑、断固己の道を行く異常なまでの信念は、かなり意識的にイヴェットに倣った」と彼は述べている。
2001年1月に刊行され、イギリスでベストセラー1位になり、13週連続でトップテン入りした。アメリカでは『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリストの4位になった。フランスでもベストセラー1位に輝いた。ドイツでは最初の週だけで5万部を売った