「すみっコ」が世間で人気のキャラクターくらいしか知らずに観賞
予備知識がなくて正解だったと思います
感動や喜びで涙する、というよりは哀しいお話でした
世の中から「必要でない」「嫌われている」と認識され
隅っこで暮らすキャラクターたちが、本の中のストーリーに巻き込まれていく
マイノリティの「ネバーエンディング・ストーリー」(1984)
そこで辛い時や、困難なことがあれば労わりあって乗り越えていく
「ありがとう」「大丈夫？」という言葉が、ささやかな思いやりが心に響く
たとえ「すみっコ」でも友情が強い絆を作っていく
それは彼らが「存在する」から
「ひよこ」だけが現実にも、本の中の物語にも存在しないひとりぽっち
永遠にひとりぽっち・・・辛すぎる
【ここからネタバレあらすじ】
しろくま、ぺんぎん、とんかつ、エビフライのしっぽ、ねこ、ざっそう、とかげ
にせつむり、タピオカの「すみっコ」たちがすみっこで暮らす家がありました
豆マスターとおばけおばさんの喫茶店にご飯を食べに行くのが日課
すみっコたちが食べ物を注文すると（昭和メニュー 笑）
きゅうりが品切れで、豆マスターは買い物に出かけてしまいました
すみっこたちはおばけおばさんを待ちますが、おばさんは物置を掃除中
「世界のお話」という本を見つけると、本の中に吸い込まれてしまいます
すみっコたちが地下の物置におばけおばさんを探しに行くと
同じように「世界のお話」に吸い込まれてしまいます
そこは「桃太郎」の世界、しろくまはおばあさん
とんかつはおじいさん、ざっそうは木になりました
おばあさんは川からどんぶらこと流れてきた桃と格闘（笑）
きじ、さる、犬が助けにきて桃を引き上げるのを手伝ってしれました
おばあさんが桃を割ってみるとねこ（桃太郎）が現れました
ねこは早速、きじ、さる、犬とお友達になります
それをじっと見つめる灰色のひよこ
すみっコたちが「名前は？」「どこからきたの？」と尋ねても
ひよこはぽろぽろと涙を流すだけ
「自分探し中」のぺんぎんは、ひよこも「自分探し中」なのだと思い
ひよこの居場所を探してあげることにします
そこでタピオカが、どこからかぶら下がっている紐を引っ張ると
突然地面が割れすみっコたちは真っ逆さま
ねことふろしきは「マッチ売りの少女」の世界にやって来ました
別の「人魚姫」の世界では、とかげ（人魚姫）が海に投げ込まれそうになった
（落ちたら塩水で死んじゃう）にせつむり （王子様）を助け
とんかつとエビフライのしっぽは「赤ずきん」になって狼に狙われますが
「たべてくれるの？」と喜ぶとんかつとエビフライのしっぽに狼のほうが逃げてしまう
ぺんぎんは「アラビアンナイト」の世界で絨毯に乗っていました
その時、猫が赤鬼から逃げるため猛スピードで掘りめぐらせた穴のお陰で
「世界のお話」がひとつになり、すみっコたちは「人魚姫」の世界に集まります
そこでまた誰かが仕掛けのボタンを押すと
「みにくいアヒルの子」の世界に到着します
ぺんぎんはひよこが「みにくいアヒルの子」だとひらめき
誰もが美しい白鳥になるのだと信じてその瞬間を待ちますが
本物の「みにくいアヒルの子」が現れ、ひよこはひよこのまま
そこから現実の世界への扉が開かれ、おばけおばさんがいち早く脱出
そのときおばけおばさんの落とした花をひよこは拾い頭に付けます
しろくまはひよこに「一緒にくる？」と言いますがひよこは首を振ります
すみっコたちがどんどんが外へ出ていく中、距離を取って見送るひよこ
ひよこを置いていけないぺんぎん、その横をにせつむりが通ると
にせつむりの殻が扉を通れず地上に落ちます
本の世界の中のものは、外には出られないのです
赤鬼と狼がひよこのそばに行き、ぺんぎんに笑顔で手を振りました
ひよこは「世界のお話」最後のページに書かれた落書きでした
だからどの物語にも登場しないひとりぽっち
すみっコたちはひよこのそばに、すみっコたちの姿を落書きをします
そこにはもうひとりぽっちじゃないひよこがいました
【ネタバレあらすじ終了】
エンドロールはひよこがすみっコたちと楽しく暮らす風景で
一見ハッピーエンドなんだけど、そこにはひとりぽっちで本を読むぺんぎんの姿
最後の最後までキツい（笑）
最小限のナレーションと字幕しかないのに、セリフがなくてもわかるよう
最初から伏線がちりばめられ、サイレント映画並みに描写が丁寧
「すみっコ」といっても、ねこはふろしき、とんかつはえびふらい
とかげはにせつむりと仲良しでいつも一緒
たぴおかやほこりは同じ仲間がいっぱいいます
だけどぺんぎんだけは「すみっコ」のなかでもひとりで本を読み
アラビアンナイトでもひとり、エンドロールでもひとり
自分が何者かわからない、何物にも所属しないというキャラクターを
最後まで貫いているのです
ひよこは「みにくいアヒルの子」ではなかったけど
ぺんぎんの本当の姿なのかも知れない
「ひとり」でも「ひとり」じゃないよと
受け入れてくれるのが「すみっコ」たちなんだ
ただ可愛いだけでなく、意外にも奥の深い映画
そしてきっとあなたに似ているキャラクターがいるはず
私はざっそうか、ほこりだな（笑）
ポジティブな草か、家事の大敵にされても能天気でヘラヘラしているタイプ
（だめだろ）
【キャラクター】公式ページより
【ひよこ 】自分はひよこ？わからない。絵本の中でなかまをさがしている。
【しろくま 】北からにげてきたさむがりでひとみしりのくま。
絵本にすいこまれたあとは
“マッチ売りの少女” の世界に。
はやくあったまりたい。
【ぺんぎん？】自分はぺんぎん？自信がない。
自分さがし中。
絵本にすいこまれたあとは “アラビアンナイト” の世界に。
自分となやみが似たひよこ？を
ほっとけない。
【とんかつ 】とんかつのはじっこ。のこりものなかまのえびふらいのしっぽとなかよし。
絵本にすいこまれたあとは “赤ずきん” の世界に。オオカミにはたべてもらえる…？
【ねこ】はずかしがりやで気が弱く、よくすみっこをゆずってしまう。
絵本にすいこまれたあとは“桃太郎” の世界に。主役も鬼たいじも向いていないかも…。
【とかげ 】じつは、きょうりゅうの生きのこり。にせものなかまのにせつむりとなかよし。
絵本にすいこまれたあとは“人魚姫” の世界に。もっとおよぎがとくいになったみたい。
【ふろしき】しろくまのにもつ。 すみっこのばしょとりや さむいときに使われる。
【ざっそう】いつかあこがれのお花屋さんでブーケにしてもらう！という夢を 持つポジティブな草。
【えびふらいのしっぽ 】かたいから食べ残された。 とんかつとは こころつうじる友。
【たぴおか】ミルクティーだけ先にのまれて吸いにくいから残されてしまった。
【ほこり】すみっこによくたまる のうてんきなやつら。
【にせつむり 】じつはからをかぶった なめくじ。 うそついてすみません…。
【まめマスター 】この世で一番うまいとうわさのおいしいコーヒーをいれる。口数が少ない。
【おばけ】屋根裏のすみっこにすんでいる。こわがられたくないのでひっそりとしている。おそうじ好き。
【ぺんぎん（本物）】しろくまが北にいたころに出会ったともだち。とおい南からやってきて世界中を旅している。
【とかげ（本物）】とかげのともだち。森でくらしている本物のとかげ。細かいことは気にしないのんきな性格。
【解説】映画.comより
「日本キャラクター大賞 2019」でグランプリを受賞したサンエックス株式会社の大人気キャラクター「すみっコぐらし」の劇場版アニメーション。すみっコを好む個性的なキャラクターたちが、不思議な絵本の中で繰り広げる大冒険を描く。ある日の午後、お気に入りの喫茶店「喫茶すみっコ」を訪れたすみっコたちが注文した料理を待っていると、地下室から謎の物音が聞こえてくる。音の正体を確かめに行ったすみっコたちは、そこで1冊の飛び出す絵本を発見する。絵本はボロボロでページの大事なところがなくなっており、桃太郎のお話のページには背景があるだけでおじいさんもおばあさんもいない。すると突然、大きな影が現れ、えびふらいのしっぽが絵本の中に吸い込まれてしまう。「アイドルマスター シンデレラガールズ劇場」のまんきゅうがメガホンをとり、「銀河銭湯パンタくん」の角田貴志が脚本、「がんばれ！ルルロロ」のファンワークスがアニメーション制作を担当。
