地球の静止する日(1951)

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原題は「THE DAY THE EARTH STOOD STILL」(地球が静かになった日)
いわゆる”ファーストコンタクト”もので
最初はB級どころか、C級かD級を思わせる
あまりのチープさに失笑してしまいまいましたが(笑)

ロバート・ワイズだけにドラマ部分がしっかりしていて
SFというよりは東西冷戦を背景にした社会派ドラマ

 

【ここからネタバレあらすじ】

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ある日突然謎の飛行物体が現れ、ワシントンに着陸します
軍隊と野次馬に囲まれるなか、UFOから宇宙人が出てきます
するとすぐひとりが発砲し、宇宙人は倒れます
あとから出てきたロボットがビームを発して軍の武器を消滅させていくと
クラトゥ(マイケル・レニー)と名乗る宇宙人はロボットをとどめ
地球に危機がやってくるため、大統領に会いたい言います

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クラトゥが入院する病院に大統領補佐官がやってくると
大統領に頼んで世界各国の指導者を集めてほしいと頼みます
しかし大統領から拒まれ、東側諸国からも
モスクワでの開催でないと出席できないと断られ
地球人の考えを知るために、一般の人と一緒に生活したいと要望しますが
政府によって病院に監禁されてしまいます

病院を逃げ出したクラトゥは、スーツ姿に着替えホテルに住み着き
未亡人ヘレン(パトリシア・ニール)とその息子ボビーと親しくなり
ヘレンの恋人トム(ヒュー・マーロウ)と知り合います

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まず最初にどこの国の首相も、国連も
平和のためには役にたたないという事実をつきつけられる
それでもボビーが案内してくれたリンカーン記念館の
「 government of the people, by the people, for the people」
(人民の、人民による、人民のための政治)に「素晴らしい人だ」と呟く
アメリカの45代の大統領の中でもっとも人気があり
評価されている大統領がリンカーンなのだそうです

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政府は行方不明になったクラトゥを探し
彼がいかに恐ろしいか、テレビや新聞は連日騒ぎ立て
ワシントンの人々は宇宙人への恐怖におののいていました

クラトゥはボビーに「いちばん賢い人はだれ」と尋ね
バーンハート教授(サム・ジャッフェ)だと家に案内してくれます
クラトゥはバーンハート教授の部屋に忍び込み、黒板の数式を解くと
自分の住所をメッセージとして残します

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クラトゥはバーンハート教授に、世界中の科学者を集め
科学者会議をしたいと相談しますが、教授は科学者を呼ぶには
信ぴょう性のある大きなメッセージがないと難しいといいます
そこでクラトゥは夜中にUFOに戻り、中で何やら命令しました

クラトゥがUFOに入る姿を見たボビーは、ヘレンとトムにそのことを伝えると
トムはクラトゥを探しに部屋に行き
そこでダイヤモンドを見つけ鑑定することにしました

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翌日クラトゥはヘレンのオフィスを訪ねます
正午ふたりはエレベーターに閉じ込められますが
いかに地球に危機が迫っているかを、科学者を集めて知らせるため
世界中の電気を30分だけ止めた(飛行機や病院などは除く)と
ヘレンに説明します

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しかしこの停電がかえって人々の恐怖を煽ることになります
ヘレンはトムがクラトゥを通報しないようトムのところに行きますが
鑑定したダイヤが地球のものでないと知ったトムは
平和より「有名人になって新聞に載る」ほうを望み政府に連絡します

すぐに軍隊が出動し、ヘレンはクラトゥをタクシーに乗せ
バーンハート教授の家に向かいます
タクシーの中で命の危険を感じたクラトゥは
ゴートが地球を破壊するだけの力があること
もし自分が死んだらゴートが暴走しないよう、ゴートのところに行き
「クラトゥ・バラダ・ニクト」と言うようヘレンに指示します

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この追跡劇はカーチェイスなど一切ないにもかかわらず、ハラハラ
町中のどこに行ってもミサイルや武器をもつ軍人だらけ
「話し合う」という選択は一切なく、クラトゥは射殺されます
集まってくる野次馬たち

たぶんクラトゥの意味するものはキリスト
正しいことを言うものは権力者から疎まれ
万能の力を持つものは畏れられる
同調するものが増えないよう、殺されて見せしめにされる

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ヘレンは地下鉄でゴートのもとに向かい「クラトゥ・バラダ・ニクト」と告げます
(ちょっと遅くて、軍人ふたり消されてしまう 笑)
ゴートはヘレンをUFOの中に招き、クラトゥの遺体を担ぎこみ治療するのですが
ここらへんから結構アバウト(笑)

一時的に命を長らえたクラトゥは集まった科学者たちに
文明の進んだクラトゥの惑星には平和を守るため
宇宙警察がいて惑星間をパトロールしている
宇宙警察には地球を滅ぼす力があるから攻撃するなと演説するわけですが

 

【ネタバレあらすじ終了】

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ここにきて「それ、アメリカのことじゃん」(笑)
相手より強大な力を誇示することで、相手を従わせようとしているだけ
アメリカ映画の「平和」に対するメッセージの限界を感じます

それでもクラトゥの正体がバレるまでのくだりは本当に面白いし
チープなゴートとUFOのデザインが、だんだん愛おしく見えてくる(笑)

人類っていつまでたっても過去に学ばない
ばかな存在だと考えさせられる傑作でした

 


【解説】allcinemaより
突如、ワシントンに飛来した円盤。降り立った異星人クラトゥは地球人の未来を懸念し、人類に核兵器の放棄を要求する。そして要求が受け入れられない場合、地球上の全エネルギーを停止させると宣言した……。怪獣やら宇宙人が暴れ回る、スペクタクル優先の“空想科学映画”というジャンルにおいて、ドラマの展開に重きを置き、人類と異星人とのファースト・コンタクトと、それに対する人類の動向をシミュレーション風に展開させた本格SF映画の先駆的作品。この題材をサスペンス色豊かに映像化したR・ワイズのタイトな演出が光る。M・レニー扮する異星人クラトゥと、その配下であるロボット、ゴートは、「未知との遭遇」が登場するまで、友好的宇宙人の代名詞であった。