サムライ(1967)

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銀座タクトにて、11月9日(土)12:30(開場12:00)から
チェイサーさん主催する「アラン・ドロン生誕84年記念祭」の
勝手に前夜祭(笑)


第1回目はもちろんこれ、原題も「LE SAMOURAI」
メルヴィルの描く”男の美学”にはいつもこだわりがある
ストイックで、渋くて、クール
「不言(ふげん)の美学」(出た!勝手にジャンル 笑)

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無駄な解説はないし、無駄なことも言わない
本作でも籠の中の小鳥のさえずりや
ストレスだけで状況を感じ取る主人公


エピグラフ(巻頭に置かれる引用や詩)での
「密林の中の虎にも似て、サムライの孤独ほど深いものはないであろう」
(「武士道」サムライの書より)は、旧5千円札の
新渡戸稲造(にとべいなぞう)の「武士道」からの引用ではなく
メルヴィル自身が考えた架空の書ということ


そのことをメルヴィルはインタビューのとき
「日本人はあの文句をでっちあげたのが私だと知らないんだ!」と
無邪気に自慢したそうです(可愛いとこもあるのね 笑)

 

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ソフト帽にトレンチ・コートの男(ドロンさま)が
路上に駐車してあるシトロエンを盗み
コールガールと思われる女性(ナタリー・ドロン)を訪ね
深夜2時まで一緒にいたことにしてくれと頼みます


その後、あるクラブのオーナーを銃殺しますが
黒人女性のピアニストに顔を見られてしまいます
クラブのウェイターにクロークの女性、従業員たちも
トレンチ・コートの男の姿をはっきりと目で追う


すぐに警察は動き出し、容疑者のひとりとして
ジェフ・コステロ(ドロンさま)が警察に連行されます

クラブの目撃者たちの供述はなぜか曖昧で
似ている、違う、彼だ、彼じゃない
決定的なアリバイはジェフの恋人のコールガールを
深夜2時に訪ねた男の完璧な証言でした


自分と入れ替わりに出て行った男の
コートは、帽子は、そして顔はこんな感じだった

 

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それでも主任警部(F・ペリエ)は長年の勘で
たとえ鉄壁のアリバイがあっても、犯人はジェフに間違いないと
尾行をつけさせ、盗聴器を仕掛けます


一方のジェフもつけられているのは百も承知
しかし金を受けとるため依頼を取りついだ金髪の男と会うと
男はいきなり発砲し、金をもらうどころか左手に傷を追ってしまいます


裏切った雇い主を探すため、再びクラブに行き
偽証した黒人女性ピアニストに会う
ピアニストの口は堅く「二時間後に電話を」とだけ言います


そしてジェフが部屋に帰ると、再び金髪の男が現れ
クラブのオーナー殺しの報酬を持ってきたうえ
新しい仕事の依頼とその前金まで用意していました
これはあまりにも怪しい(笑)

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ジェフは金髪の男を拘束しオリビエという名前を聞き出します
オリビエはピアニストと同居していました
そしてジェフへの新たな依頼はピアニストによって
自分の正体がバレるのを恐れたピアニスト殺しだったのです


拳銃に入っている弾6発を確認するジェフ
クラブでピアノを弾くピアニストに拳銃を向けたジェフは
張り込んでいた刑事たちの銃声によって倒れてしまう
しかし警部が見つけたジェフの拳銃の弾倉は
弾が抜き取られからっぽでした

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鮮やかなシンメトリー

雇い主に従わなかったサムライは自決する

 

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この映画の裏テーマは鍵の束でもある思うのです


あの鍵の束がどこに行ったか、警察に見つからないのはおかしい
というレビューも中にはありますが


数多くの人生や職業の中で
自分にぴったりあうものはただひとつ
たとえ損でも、そういう生きかたしかできない
それがメルヴィルの世界なのだろうな

 


【解説】allcinemaより

寒々としたアパートで、たった一羽の小鳥とともに暮らす孤独な殺し屋。が、あるピアノ弾きの女と関わった事から警察にマークされた彼は、やがて自ら死地に赴いていく……。仏フィルム・ノワールの巨匠J=P・メルヴィル監督の傑作で、徹底した硬質な画面構成と氷のような色調が鮮やかな印象を残した。他人を一切寄せつけず、己のスタイルを貫き通して死んでいく殺し屋を、日本の侍のイメージとダブらせた演出は今なお語り草で、ファンの多い作品である。線路にかかった陸橋の上で、殺し屋が他のギャングに襲撃されるシーンの素晴らしさは、何度観ても息をのむ