原題は「JUTRO BEDZIE LEPIEJ/ジュトロ・ベジー・ルピエ」
(明日はもっとよくなる)
ポーランドと日本、共同制作のウクライナ版「スタンド・バイミー」
違いは帰る家がないこと
駅前にあるベンチの下などをねぐらにしている
弟のペチャと兄のヴァーシャは物乞いや盗みをして暮らしています
この日は落ちていた煙草を取り合って喧嘩していました
夜になりリャパという少年がやってきて
何やらヴァーシャとこそこそ相談し、出かけていきました
ペチャはふたりを追いかけていきます
なぜ彼らがストリート・チルドレンになったのか
どこに行こうとしているのか一切明かされませんが
旧ソ連時のウクライナにある「意地悪通り」と呼ばれる場所だそうです
そこから国境をめざし、貨物列車に乗り込み
廃線になった線路を歩き
ゴミ箱から拾ったペットボトルに川の水を入れ飲み
時には警備兵から隠れ、旅をします
途中寄ったパン屋の女将に、ペチャは「こんな美人みたことがない」と言い
大きなパンとチーズを恵んでもらい(笑)
ついでにどこかでチョコとテディベアのぬいぐるみを盗み
リャパのおじいちゃんの家に泊めてもらう
そこからは薪を積んでやってきたトラックに乗せてもらい
結婚式に居合わせた時には、お酒を飲みご馳走を食べ
花嫁の美しさをいかに称え、産まれる子は男の子だよと予言して
ルーブル硬貨までもらうのです
ウクライナ人というのは明るくて、やさしくて
幸せを分かち合う国民性なのでしょうか
3人の少年も無邪気で、旅の疲れや悲壮感は感じません
国境を越えたなら、今よりも、此処よりも
自由が、もっといい未来がまっている
そんなワクワクする冒険心のほうを強く感じます
有刺鉄線をくぐりぬけ、その先はポーランド
おおはしゃぎで走り抜ける
「同じ空だ」
「違う俺たちの空だ」
「ポーランド語を話したらロシア語を忘れる?」
「いつか戻ってくる 王様になって戻ってくる」
だけど、現実は厳しいものでした
助けを求めに警察署に行き、警察担当者の質問で
(ポーランドの受付嬢はこんなに派手なのか 笑)
リャパは11歳、ヴァーシャは10歳、ペチャは6歳だとわかります
この3人をどうするべきか担当者は上司に相談しますが
答えはソ連に戻せというものでした
ペチャの「おねだり」も処世術も、法律の前には通用しない
でも、この子たちを何とか助けてあげたいという気持ちは
私たちも、警察担当者も同じ
しかし「亡命したい」と自分の口で言えばいいという
連絡が来たときにはすでに、迎えの車が来ていました
連れ戻された彼らはどうなるのだろう
ソ連当時の情勢に疎いので何とも言えませんが
町に浮浪児が溢れているということは
保護する施設はそう多くないということなのでしょう
だけど、大人の不安とは裏腹に
3人の表情は再び明るさを取り戻していきます
そしてラストでも「スタンド・バイミー」のように
「鶴は翔んでゆく」というこの作品のテーマともいえる歌詞の曲が流れます
”まだまだ未来は開けているし、希望が残されているのだ”
あの時の花嫁の涙は、好きでない男の子を身籠り
結婚させられたからなのかも知れない
【解説】allcinemaより
「僕がいない場所」「木洩れ日の家で」のドロタ・ケンジェジャフスカ監督が、ロシアから国境を越えてポーランドを目指す3人のストリート・チルドレンの過酷な道行きを厳しくも温かな眼差しで瑞々しく描き出した感動ドラマ。現代のロシア。ポーランドと国境を接する貧しい村で鉄道の駅舎を住処にする身寄りのない10歳と6歳の兄弟、ヴァーシャとペチャ。ある日、同じ境遇の友だちリャパに誘われ、3人で国境を越えてポーランドへ行くことに。外国に行けばより良い生活ができると信じて、命がけの冒険に旅立つ3人だったが…。