影の軍隊(1969)



原題も「L'ARMEE DES OMBRES」(影の軍隊


第二次世界大戦勃発後に起きたレジスタンス運動を

ドキュメンタリー・タッチに描いた

ジャン・ピエール・メルヴィルの代表作


凱旋門をバックにシャンゼリゼ通りを行進するナチスの行列

これはもうオープニングから傑作の香り




ただ、フランス人なら誰でも知っている英雄なのかも知れませんが

なぜ彼らがレジスタンスになったか一切説明されないうえ


当時の時代背景も知らなかったので、内容がわかりにくいのは事実

それでも中盤以降はグッと盛り上がりました




1940年、ナチス・ドイツフランスに侵攻パリは陥落

フランスでは抗戦派にかわり和平派が政権を握りヴィシー政権が発足

ペタン元帥が首相となり、元部下だったドゴール将軍はロンドンに亡命し

"自由フランス"を結成します(本作のレジスタンスもドゴール派)

つまり、ヴィシーとロンドンにふたつの政府があったということです


なので、フランスのレジスタンスに協力するのもイギリス軍

国と国の移動には、潜水艦や落下傘降下を利用しています




41年以降はフランス共産党反独となり

共産党組織である"国民戦線"共産党以外の人間も参加できたことから

一大勢力となっていきます

(刑務所内で主人公と共産党青年が協力するのもそのため)


44年のノルマンディー上陸作戦を経てパリ解放ヴィシー政権は倒れ

ドゴール将軍による臨時フランス共和国政府がパリに移転

本作ではその解放前の、フランスの複雑な国情を描いています




ストーリー的には抜けているところも確かにあるのですが

主人公ジェルビエを演じたリノ・ヴァンチュラはじめとする

俳優たちの演技が素晴らしいですね


表情や仕草だけで感じる意思の強さ

裏切りは決して許さない冷酷さ




だけど一方では、仲間と無事に再会した時や

久々に煙草を吸うときの儚い喜び


そしてパラシュート降下前のヘタレっぷり

(そういうギャップに私はヨワイ 笑)




ゲシュタポやヴィシー警察に見つかれば

惨い拷問に、銃殺ゲームが待っている

そんな過酷な状況の中でも生き延びようとする

彼らの秘めた思いが伝わります


そんな共同体の中、なぜジャン・フランソワ(J・P・カッセル)は

仲間のもとを去り、ゲシュタボに密告したのか

裏切りなのかと最初は思った、でも違った




捕虜になったフェリックス(P・クローシェ)に

マチルド(シモ-ヌ・シニョレ)の救出作戦を知らせるため

だけど医師は瀕死のフェリックスの輸送を止めます


せめてを楽に死なせてあげたい

ジャン・フランソワは自分のたった一粒の青酸カリを

フェリックスに飲ませることにするのです




とにかく捕虜になった同志を何とでも助けようとする

マチルドの活躍がすごい、プロ中のプロ


映画の中の飾りでもマドンナでもないのです

(ヴァンチュラを救ったシーンは、もっと詳しく作戦を知りたかった)




だけど愛娘の写真を持つというミスを犯してしまいます

レジスタンスに身を投じても捨てきれなかった”母の愛”


それでも頭のいい彼女だからこそ

娘を助け、ゲシュタポをも満足させ

レジスタンス活動への被害も最小限で済ませる

そんな条件を考え出したのでしょう




しかし、たとえ今は命があっても明日はどうなるかわからない

仲間たちはマチルドを殺す決意をします

だけどマチルドを殺しても殺さなくても

彼らを待ち受けていた運命は同じだったのです


そう、メルヴィルは何も残さない

ヒロイズムが無残に死んでいく悲壮




ロンドンで陽気に笑い踊るイギリス軍の女性兵士たち

風と共に去りぬ」の上映

理想も、信じる未来も、無意味な犠牲にしかなりませんでした

なのに、この美しい


犠牲の美学”

お気に入りにさせていただきます




【解説とあらすじ】映画.comより

独軍占領下のフランスで、第二次大戦中、悲劇的な抵抗運動に命をかけたレジスタンス闘士たちのエピソードをつづった作品。製作はジャック・ドルフマン。ジョゼフ・ケッセルの原作を、「ギャング」のジャン・ピエール・メルヴィルが脚色し、自ら監督した。撮影はピエール・ロム、美術はテオバール・ムーリッス、音楽はエリック・ド・マルサンがそれぞれ担当。

フィリップ・ジェルビエ(L・バンチュラ)は、ある日、独軍に逮捕され、キャンプに入れられてしまった。そして数ヵ月後、突然、ゲシュタポ本部へ連行されることになった。だが、一瞬のすきをみて、そこを脱出した彼は、その後、抵抗運動に身を投じることとなった。そうしたある日、彼はマルセイユに行き、フェリックス(P・クローシェ)、ル・ビゾン(C・バルビエ)、ルマスク(C・マン)等と一緒に裏切り者の同志ドゥナ(A・リボール)の処刑に立ちあった。その後に、彼は、ジャン・フランソワ(J・P・カッセル)に会った。ジャンの仕事は、名高いパリの女闘士マチルド(S・シニョレ)に、通信機をとどけることだった。彼はそのついでに、学者である兄のリュック・ジャルディ(F・ムーリッス)を訪ねたが、芸術家肌の兄を心よくは思わなかった。一方、新任務のためリヨンに潜入したジェルビエのところへやって来たのは、意外にもジャンの兄のジャルディだった。やがて無事、その任務を果したジェルビエのところへフェリックス逮捕さる、の報が伝えられた。さっそく、救出作戦を展開したが、ジャンの犠牲も空しく、失敗に終ってしまった。ジェルビエが再び逮捕されたのは、それから間もなくであった。独軍の残虐な処刑に、もはや最後と思っていた彼を救ったのは、知略にすぐれたマチルドであった。それからしばらくたった頃、隠れ家で休養をとっていたジェルビエを、ジャルディが訪ねて来た。彼の来訪の目的はマチルドの逮捕されたことを告げるためと、口を割りそうな彼女を、射殺するということだった。現在、仮出所中の彼女も、それを望んでいる、と彼は伝えた。ある日、エトワール広場を一人歩く彼女に、弾丸をあびせたのは、彼女を尊敬するジャルディ、ジェルビエ、ル・ビゾン、ルマスク等仲間たちだった。しかし、遅かれ早かれ、彼等の上にも、同じような運命が待ち受けているのだった。...