テレフォン(1977)



「森は美しく、暗く、深い だが誓いを果たし、眠るまでの道は遠い・・


のどかで小品なアクションスパイものですが、なかなか面白い
むしろこれくらい派手さがないほうがいい(笑)



アメリカで相次いで起った、一般市民による謎の自爆テロ

117日、コロラド州デンバー、修理工場の店主による陸軍基地の爆破
120日、フロリダ州アパラチコラ、飛行機のチャーター業の男による
小型機での海軍基地への体当たり(追撃され失敗)



KGBはテロによる不必要な緊張を避けるため
完全に記憶できる能力”を持つボルゾフ少佐(ブロンソン)を呼び寄せ
ブロンソン旧ソ連リトアニア系だったそうです)

かって51人の英語の堪能な大学生が、薬物催眠をかけられ
万が一アメリカによる核攻撃が行われた場合、
電話1本の命令「テレフォン作戦」で、アメリカ軍施設を破壊するよう
アメリカに送り込まれたと説明します



そしてソ連デタント(緊張した国際政治関係の緩和)化に反対した
スターリン派のダルチムスキー(ドナルド.プレザンス)は
51人のスリーピング・スパイの名簿を持ちだし、アメリカに潜入

何も知らずアメリカ国民として暮らす工作員に電話して
破壊工作を実行させ、そのことは書記長も知らないというのです



ボルゾフは名簿を完全記憶して
スリーピング・スパイの名簿を抹消するため
在米エージェントであるバーバラ(リー・レミック)と組み
ダルチムスキーとを探す旅をします

しかし彼女はCIAとKGBの二重スパイでした



127日、ロサンゼルス、牧師によって国際電話局が爆発
128日、サンタモニカ、生き残った牧師をバーバラが殺します

時代的気持ちの余裕というのでしょうか、
破壊工作も起こるし、犠牲者も出るものの、今のアメリカのように
報復だ!、攻撃だ!というヒステリックさは感じられず



ソ連側も、戦争にならないようできるだけ穏便に済ませたい
摩擦を引き起こす過去は消し去りたいと考えています

そんな中、CIAの”ソ連ヲタク”のコンピュータ技師
ドロシー(タイン・デイリー)
一連の爆破事件がソ連に関係しているのではないかと勘づきます



このドロシーのコンピューター技術と
ボルゾフの完全記憶力との頭脳対決で
どちらが先にダルチムスキーを見つけるか

そんな展開があったなら、もっとサスペンスフルな作品になったでしょう
(憧れの)上司からのキスだけで終わったのはもったいない(笑)



ボルゾフ少佐は、ダルチムスキー
スリーピング・スパイを覚醒させる順番が
自分のイニシャル順だということに気が付がつきます


1
29日、KGB長官は任務完了後バーバラにボルゾフを殺すよう命令

主婦によってロケット試射場が爆破



130日、テキサス州ヒューストン、レストランで電話を受けた男が
爆弾を車に積みますが、駐車場で事故を起こしてしまい自爆



同じく130日、テキサス州ハルダーヴィル
次の標的であるダイナーを営む釣り男に、ふたりは会いに行き殺害
そこにやってきたダルチムスキーを追い詰め、殺します



反逆者役のドナルド.プレザンスがうまいですね

登場シーンこそカッコイイのですが、実はただの小心者
オドオドした目つきで、たった一人で無用なテロを繰り返す

無差別殺戮を犯す人間って、いかにもこういうタイプだと思わせます

ラストは最終的にボルゾフをも消すはずだったバーバラが
CIAKGBに電話をする姿



「彼は残ったスパイは売らないわ、平和に暮らしているもの
 少佐からのからメッセージが・・

 ”我々にかまうな、すべてを忘れろ、我々を追ったらまた電話が鳴りだす
 そして今度は電話が世界中で鳴り響く”

 わからないならKGBに聞いて、同じことを伝えたわ」

そして目の前には”幸せモーテルあと16キロ”の看板(笑)



俗だけど粋ですなあ
風に舞い散っていく破り捨てられた名簿

スパイ同士が恋に落ちるの結末は007みたいなんですけど
「そんな洒落てられっかよ」という
ドン・シーゲルの声が聞こえてきそうでした(笑)

ところどころに挿入されるユーモアや皮肉もいかにもシーゲル調
暗さや面倒くさいこと抜きに、楽しみたいときにおすすめです



【解説】allcinemaより
冷戦下において計画されたテロ作戦をめぐって展開されるアクション・スリラー。P・ハイアムズ(「カプリコン・1」)&S・シリファント(「タワーリング・インフェルノ」)の脚本に、D・シーゲルの演出で面白くならない訳がない。米ソが冷戦にあった時代、KGBは特殊な催眠術をかけた50人ものスパイをアメリカの主要基地近くへ送り込んでいた。彼らは、電話一本の暗号で与えられた任務を遂行するようになっていたが、雪どけとなった今ではその作戦自体が無用の長物と化していた。だが急進派のダルチムスキーが国際紛争の火種を起こそうとアメリカへ潜入していたのだ。事態の収拾を図るべくソ連首脳はダルチムスキー抹殺のためにボルゾフ少佐をアメリカに送り込むのだが……。アメリカを舞台に、ソ連の軍人同士の戦いを描いているのも興味深いが、とにかく設定が秀逸だ。51人のスパイは、電話でキーワード(この場合はフロストの詩の一節)を伝えるだけで爆発する“時限爆弾”のようなもので、それだけでも強烈なサスペンスを生み出しており、そこにブロンソン中心のアクションが加わっているという具合。