遠い喇叭(ラッパ)(1963)



原題も「ADISTANT TRUMPET

ラオール・ウォルシュはこの作品の後映画界を引退してるんですね
(没年は198093歳)

引退と関係あるかどうかはわかりませんが、この頃の映画は
騎兵隊によるインディアン討伐西部劇が反省される傾向にあったそうです
にもかかわらず、この作品では騎兵隊がインディアンを討伐するする(笑)
おまけに主人公と上司の妻の不倫もの



とはいえアパッチの「生き埋めにして脳を蟻に食わせる」殺し方や

脱走兵に”クソ野郎”の焼印を押すという見ごたえあるシーンや

騎兵隊とインディアンの合戦についてはかなりのいい出来



馬ごと転がるのではなく、騎乗してる人間に矢があたり
人間だけが落馬するというリアルな演出
小気味良い行進曲風のテーマ音楽

もう10年、20年、早く作られていれば
名作の仲間入りになっていたと思います



陸軍士官学校を首席で卒業したマット(トロイ・ドナヒュー)は
若き少尉としてアリゾナのデリバリー砦に就任

すぐに指揮官であり中尉の妻、キティに(スザンヌ・プレシェット)と
惹かれあってしまいます



キティが休暇でワシントンに発つ日、マット隊は建築用材伐採に出かけ
そこで隊はアパッチに襲われ、御者も護衛も殺され、残った兵は逃走

マットはひとり窮地を脱し、馬車で出かけたキティを救いに行きます
そして砦への帰り道の夜、避難した洞穴で愛し合ってしまうのです



しかし軍人と軍人の妻、そこはドロドロになることもなく(笑)
マットは実戦に備えて、たるんだ兵士たちを厳しく訓練
自分は不倫野郎のくせに売春一座には大砲で本気の攻撃までします

そんなある日将軍の姪でマットの許嫁であるローラが到着
女の感とはすごいもので一目でマットとキティが怪しいことに気が付きます
しかしさすが軍人の許嫁、ここでもドロドロすることはなく(笑)



中尉(キティの夫)の一隊がアパッチに襲われ全滅
(どう考えても中尉が都合よく殺されたとしか思えない 笑)

ただちに守備隊がアパッチとの戦いに向かいますが
激しい反撃によって逃げ帰ってしまい



クェイト将軍(ジェームズ・グレゴリー)はどうにか話し合いで
アパッチをアリゾナ居留地に帰そうとマットを使者に出します


マットの訴えによって、アパッチは無事アリゾナに向かい
抱き合うマットとキティでジ・エンド(ローラはどうなった? 笑)



骨っぽいタフなアクションが得意な監督だけに
私の好みでいえば、ロマンス部分は必要だったかな?と思いますが

サイレントからトーキーへ、ハリウッドの黄金期を象徴する巨匠のひとり
観客を楽しませることを何より優先させたかったのでしょう



そんな名監督も、時代の移り変わりに取り残されてしまった
アリゾナに向かうアパッチに自分の姿を重ねたのかも知れません

(私の中で勝手にラオール・ウォルシュの人生が出来上がっています 笑)



【解説】allcinemaより
アパッチとの戦闘が繰り返される砦に、新任の少尉が赴任してきた。彼は砦の中尉の妻を一目見た途端、恋に落ちてしまう。インディアンに殺された彼女の夫の敵を討つため、彼は仲間と共に出撃する……。若い騎兵隊員の活躍を描くアクション西部劇。