カプリコン・1(1977)



原題も「CAPRICORNONE

カプリコン」とはラテン語山羊(caper)と角(cornu)をあわせた

「角のある山羊」雄山羊)という意味でやぎ座”のこと


素人でも多少の宇宙開発の知識を得た現代では

さすがにこんな小型の月ロケットで

火星に向かって7ヶ月以上もの航行をするのは

無理だと思いますが(笑)




しかもNASAからの借り物だと明らかにわかる

ロケット発射のフッテージ(撮影済みの編集されていない映像)


しかし明らかな低予算映画ながら、かなり面白い

NASAの協力があったにもかかわらず、内容を知ったNASAが激怒し

映画会社と揉めたといういわくつきもいい(笑)

アポロ計画陰謀論マニアからも絶賛されているという傑作なのです




1970年代米ソによる人工衛星や、ロケット開発競争が極め

宇宙へのロマンと無限の可能性を求めていたものの

莫大な費用のため、NASA開発予算を縮小するしかない

危機にみまわれていました


人類初の火星着陸を目指す有人ロケット「カプリコン1

しかし打ち上げられたのは無人ロケット

飛行士たちは拉致され、火星のセットが組まれたスタジオで

捏造のオンエアが行われることになります




電波の異常に気づいた管制塔の技術者のひとりが
上司に報告するものの聞き入れてもらえず、かわりに

記者のコールフィールドにエリオット・グールド)に相談すると


技術者は行方不明になり

コールフィールドの車のブレーキは壊れ街を暴走

運よく命だけは助かり、コールフィールドは独自の調査を始めるのです




そんななか、カプリコン・ワンの事故により

パイロットのブルーベーカー(ジェームズ・ブローリン)と

ウィリス(サム・ウォーターストン

ウォーカー(O・J・シンプソン)の3人の死亡が報告され


それを知ったパイロットたちは、命の危険を感じ逃亡し

砂漠の中を逃げ惑うことになるのです



照明弾やナイフ、拳銃などの小物が効果的で

(最終的に拳銃を使わないのもいい)


ヘビを食べるシーンは今でもくっきり覚えていました

あの躊躇したジェームズ・ブローリンのイヤイヤ顔は

本物のヘビ食べているようにしか思えません(笑)




軍用機ヘリをまるで生き物のように映し出すカメラもいい

それに対するのがオンボロ農薬散布用プロペラ機


リアルな空中戦、農薬散布に意味があるという伏線の素晴らしさ

これはもうテリー・サバラスが最高の儲け役(笑)




そこにカレン・ブラックの乗っていた赤のフェアレディーZ

日本にもセンスのいい車のデザインする能力があるんじゃない(笑)




サスペンスとしても、サバイバルものとしても見ごたえあり

国家による陰謀で、公文書として保管されるべき痕跡が

完全に”ないもの”として消滅され、新たな事実が捏造されてしまう

これはアメリカだけの問題ではありません




追悼式に参列する妻の前に帰ってきたブルーベーカー

それでも真実が明かされることが

いかに難しいかを私たちは知っている


それでも政治の支配という巨大な権力に立ち向かい

悪を暴いてくれるヒーローが、いつか現れるのではないかと

誰もが希望を抱いているのです



【解説】allcinemaより

初の有人火星探査船カプリコン1に打ち上げ直前トラブルが発生、3人の飛行士は国家的プロジェクトを失敗に終らせないため、無人のまま打ち上げられたロケットをよそに地上のスタジオで宇宙飛行の芝居を打つ事になる……。NASAが仕組んだ巨大な陰謀談を、ジャンルの選択が難しいほどにありとあらゆる要素を叩き込んで造り上げられた極上のエンタテインメント。帰還の際にロケットが爆発したため生きていては都合の悪くなった飛行士たちが、身の危険を感じて脱出逃亡する辺りから、映画のテンポは前半のミステリー・タッチよりアクション路線へと転じ、感動的なラストまで快調に突っ走る。P・ハイアムズの職人気質が余す所なく発揮された一本。