新婚道中記(1936)



原題はTHEAWFUL TRUTH」(認めたくない事実

"AWFUL"は「ひどいいう意味ですが

ここでは「愛している」の裏返しとしても使われているそうです


邦題はどうでしょう

見る前までは、森繁久彌さんの「社長シリーズ」なのかな、と

勘違いしていました(笑)




それくらい知らない作品だったのですが

スクリューボール・コメディの代表作のひとつで大当たりし

BBCが選出した歴代のコメディ映画ベスト100に選ばれ

小説家でコラムニスト、映画評論もなさる小林信彦さんも

オール洋画のベスト100に入れているそうです


夫役のケーリー・グラントと妻役のアイリーン・ダン

ドタバタズッコケぶりも見事ですが

なんといっても素敵なのが、ワンちゃんと猫ちゃんの使い方




ミスター・スミスと呼ばれていたワンちゃん

アスタ(別名スキッピー)という名前のワイヤーフォックステリア

代表作は20作以上というという超売れっ子俳優犬だったそうです


こんなに可愛くておりこうさんなら

離婚調停で「犬の所有権」を争うのも当然です




物語は、夫のジェリー(ケイリー・グラント)が

フロリダへ出張だと嘘を言って、男友達と一晩ポーカーを楽しみ

フロリダに行ったかのようにサロンで日焼けするシーンから始まります

(この頃から日焼けサロンがあったのね←日焼けメイクがわざとらしい)


夫が家に帰ると、妻のルーシー(アイリーン・ダン)は

車の故障で、声楽教師の男とやむなくホテルに一泊したと

あとから帰宅してきます




夫は自分の事を棚に上げて妻の不謹慎を責め
妻は「フロリダ土産」のオレンジの印字がカリフォルニア産であることに

夫の浮気を疑います


ふたりは離婚調停の法廷へ

90日後に離婚が成立という判決が下されます


だけど、お互い相手のことが気になってしょうがない

相手に恋人ができると、心中穏やかならず

知らず知らずのうちに、妨害工作に出てしまうのです




グラントって2枚目俳優のイメージがあったのですが

コメディのセンスのすばらしさには驚かされます

声楽教師の家で忍術で投げられ、イスからズッコケる(笑)

サイズのあわない帽子をどうにかあわせようとする


アイリーン・ダンのほうも夫の恋人の家に押しかけ

妹と偽って傍若無人に振舞うシーンは最高

その下品さといったら!




ほかの上流社会を描いたコメディ映画に見られるような

金持ち階級の嫌味が全くなく、チャーミングなのです


そして次第に脇キャラは次々に消えていき

「演技」だけで魅せるふたり芝居になっていきます

柱時計の男女のからくり人形も洒落ていますね




またひとつ、知らざれる名作との出会いがありました



【作品情報】MovieWalkerより
「花嫁凱旋」「たくましき男」のアイリーン・ダンと「天国漫歩」「間奏楽」のケーリー・グラントが主演する映画で、「明日は来らず」「ロイドの牛乳屋」のレオ・マッケリーが監督・製作したものである。原作はアーサー・リッチマン作の喜劇で「明日は来らず」のビニヤ・デルマーが脚色した。撮影は「失はれた地平線」「花嫁凱旋」のジョセフ・ウォーカーの担任。助演者は「結婚気象台」のラルフ・ベラミー、「スイング」のセシル・カニンガム、英仏映画界に活躍していたアレクサンダー・ダーシー、「二つの顔(1935)」のモリー・ラモント、エスター・デール、ロバート・アレン等である。