赤い風車(1952)



原題は「MOULINROUGE」(ムーランルージュ

画家ロートレックの伝記かといえばそうではなく()

かなり脚色されているようです


彼を破滅に追いやる女性マリーについても

本作では娼婦として描かれています

実際はルノワールなどの絵画にもなった有名なモデルで

その彼女と同棲したこともあり

彼女の画家の才能を見出したのがロートレック

マリーをシュザンヌ(スザンヌと呼び、成功に導いたそうです




ロートレックも相当な女性好きなうえ

マリーも有名画家と関係をもつなど


ここで描かれているより、ふたりの運命は

悪くなかったのではないでしょうか

もしかしたら、似た者同士だったのかもしれません




映画の出来としては、絵を背景に始まるオープニングから

絵から飛び出てきたように始まるムーランルージュの大騒ぎなシーンは

作品と衣装がリンクして心が踊る演出


リトグラフの刷りの試行錯誤、石版やプレス機の大きさやなど

画家と職人が一体となって作品を作る上げるのもワクワクします




ロートレックほとんど下半身を写さないカメラには苦労したと思います

膝で歩いたというホセ・ファラーも大変だったようで

ピーター・セラーズが「ピンクパンサー」でパロってます 笑)


そして、死の間際、ルーブル美術館

生前の画家で始めて絵が飾られたのだと告げられるラスト




生きているうちに才能が認められたのは輝かしいけれど

身体的傷害から貴族社会からはつまはじきにされ

ロートレックを受け入れてくれたはずの酒場の人々や娼婦には
彼の知性が理解されなかった生涯は

やはり哀しいものを感じます




【解説】allcinemaより

 “赤い風車”を看板に掲げたパリ名物のキャバレー、ムーラン・ルージュ。かつては品はないが活力に溢れた店で、毎晩現れる画家ロートレックは、時にはそこのナプキンやテーブルクロスにまで、踊り子や酔客の狂態を鮮やかにスケッチした。その冒頭のシークエンスが圧巻で、閉店となってすっかり片づけも終わってから、一人寂しく家路に着く不具者の彼の姿に慄然とし、蔑みの言葉を浴びせられながら、心なしか悲しげな表情を浮かべるファーラーの名演に唸る。彼は侯爵家の生まれだが、少年の頃(父と共に出かけたタカ狩りの美しい描写……)階段から落ち、足の発育が止まって、身長は150cm余り、胴から上は普通の“大人”である奇形だ。ゆえにひどいコンプレックスを抱え、絵筆と酒にその情熱を託す。相手になるのは娼館の女だけで、同情が愛に変わって惚れ込んだ街娼マリー(マルシャン好演)を、屈辱的仕打ちに遭っても忘れ切れない。その出身地のスラムに彼女を訪ねる、おどろおどろしくも幻想美に貫かれた情景が出色で、まさに画面から“死”の匂いが漂ってきそうだ。彼の絵はムーラン・ルージュの宣伝ポスターから火がついて人気を得、店の方も一流となるが、彼も主人もなぜか虚しい。彼はデザイナーのミリアムから好意以上の情をかけられるが、マリーとの一件がちらついて結婚に踏み切れない。そのうち、彼女は想いを綴った手紙を寄せ、他の男と結婚。彼は幾度なくその手紙に読み耽けりながら毎夜泥酔し、遂に下宿の階段から落ち昏睡状態となって実家に引き取られ、生前にルーブル入りは初めて--との父の報を聞きながら、かつてのムーランの模様を幻視し、昇天する。ライフ誌専属カメラマン、E・エリフォンソの協力を得たO・モリスの撮影が大胆かつ壮麗。G・オーリックの音楽、主題歌も素晴らしい。ただ歌手役で登場するハリウッド一の結婚魔ガボールが雰囲気をぶち壊すのが玉にキズ。