グリーンブック(2018)



黒人でもなく 白人でもない 俺はいったい何者なのだ
 
 
GreenBook」とは、ヴィクター・H・グリーン(黒人作家で出版業者)
により1936年から1966年まで毎年改訂され発行された
黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック”のこと
 
この作品が批判される理由は、なんとなく理解できます
マイノリティ問題に敏感だったり、マイノリティでなくても
「いじめ」にあった経験のある人が見たなら
「白人(差別・いじめている側)が上から目線で仲良くなって満足してる」
という気持ちになっても不思議はないでしょう
 
またシャーリーの遺族は映画のことを事実と違う
「観客に誤解を与えるような解釈」と抗議したそうです
 

でも、監督は不謹慎で、エッチで、失礼な行為で
お笑いをとるアホ映画で有名なファレリー兄弟
兄ピーター・ファレリーなんですね(笑)
自ら「笑いをとらないように我慢した」と語っているそうですが
(わかる、わかる)
 
それでも要所要所ファレリー節が
痛感できるシーンがあるのは楽しい
 

トニーは、頭が悪くて考えるより先に手が出る暴れん坊
めちゃくちゃ食べ方が汚いのも印象的
チキンで汚れた手でハンドルを握り
(ケンタッキーのKFC1号店でおおはしゃぎのシーンは楽しい)
コストコクラスの大きさのピザもホールでまるごと平らげます
 
対するドン・チャーリーは
星の王子ニューヨークへ行く(1988)か?(笑)
というくらいの超セレブ
 
2歳からピアノを弾き始めて、3歳でコンサート
9歳でレニングラード音楽学院に入学後、ヨーロッパで英才教育
18歳でロンドンポップスオーケストラをバックにデビュー
 

幼い頃から、からも、黒人社会からも、完全に引き離されて生活
ロシア語、フランス語、イタリア語に堪能で、博士号まで持っている
大統領とも親交があり、大金持ち
 
だけど黒人としての文化も何も知らない
ドンはそんな自分にコンプレックスを持っていました
そんなドンの運転手を頼まれたトニー
 

このトニー・“リップ(スラングで「口先だけ」)”・バレロンガという男
映画にも多々出演しているそうで(ただしセリフのない役)
本物のヤクザで見た目もヤクザなのでオファーが殺到したそうです
 
その彼がお前は強いし問題解決能力が高いから
ドンの南部ツアー運転手兼用心棒をやってくれないか」
(マフィアの大物に)頼まれます
トニーは黒人差別主義者なので、そんな仕事はしたくないけれど
金もないし、親分の命令に逆らえないのが正直なところ
 

可愛い奥さんと子どもと離れ
スカしたインテリ黒人と渋々南部に向かうわけです
 
トニーが奥さんに手紙を書くシーンは
シラノ・ド・ベルジュラック」みたいですけど(笑)
こんなロマンチックな言葉、アホ男が書くわけないとわかっていいても
喜ぶアラフォー奥さんが素敵
 
しかし南部では差別主義者のトニーが思っていた以上の
黒人に対するさらなる差別が待ち受けていました
 

この時代は「ジム・クロウ法」という
人種隔離(黒人は白人と同じ店で食事できない等)が法律で認められており
コンサートに招かれていながら
ドンはホテルのトイレやレストランを使用させてもらえないのです
黒人が良い服を着ているだけでリンチにあい
夜外出すれば逮捕される
 
そんなことがあるたびに
トニーは相手をボッコボコ
だけどドンは暴力は”負け”だと言います
それなら今度はトニーお得意の”デタラメ”で賄賂作戦(笑)
 

ドンのコンサートツアーを成功させる
トニーは自分の仕事に目覚めていきます
そしてドンもなんとかクリスマスの夜には
トニーを家族のもとに帰してあげようとするのです
心のこもったラブレターを届けてくれたドンに感謝する奥さん
 
作中ではトニーがツアーに同行したのは8週間となっていますが
実際には1年半ドライバー兼ボディガードとして雇われたそうで
ドンがトニーを信頼していたのは事実なのでしょう
 

ドン・シャーリーは日本では馴染みがありませんし
もしアカデミー賞を受賞しなければ
日本ならミニシアターで終わってしまいそうな映画で
万人が好みかどうかわかりませんが()
 
ドンを演じたマハーシャラ・アリ
今後いろいろな役でブレイクしそうな予感
 
ヴィゴさまの食いっぷりも見事でした(そこ?)
最後に、質屋の夫婦の図々しさに憧れます(笑)
 


【解説】allcinemaより

 1960年代を舞台に、差別が残る南部での演奏ツアーに向かった天才黒人ジャズピアニストと、彼に運転手兼用心棒として雇われたガサツなイタリア系アメリカ人の凸凹コンビが、旅を通して深い友情で結ばれていく感動の実話を映画化。主演は「イースタン・プロミス」のヴィゴ・モーテンセンと「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ。監督は本作が単独監督デビューとなる「メリーに首ったけ」「愛しのローズマリー」のピーター・ファレリー。
 1962年、アメリカ。ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無教養だが家族思いのイタリア系男。店の改修で仕事がなくなり、バイトを探していた彼のもとに運転手の仕事が舞い込む。雇い主はカーネギーホールに住む天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー。黒人差別が色濃く残る南部での演奏ツアーを計画していて、腕っぷしの強い運転手兼ボディガードを求めていた。こうして2人は、黒人が利用できる施設を記した旅行ガイドブック“グリーンブック”を手に、どんな厄介事が待ち受けているか分からない南部へ向けて旅立つのだったが…。