アクトレス ~女たちの舞台~(2014)



アラフィフを迎えるビノシュの発案によって

オリヴィエ・アサイヤス監督彼女を念頭に脚本を書いたもの

老年に差し掛かった女優の等身大の姿と、悩みを垣間見せる内容で

評価は高く、アサイヤス監督の最高作とも称えらたそうです


とはいえ、ハリウッドのようなシナリオ作法はなく

ストーリーの面白さで見せる映画というよりは、アート系

見る人を選ぶと思います


正直、私も序盤はかなり退屈に感じました(笑)

しかし後半からは、共感する部分も多くありました

若い女と、年増女の、火花




大物女優のマリア(ビノシュ)と

マネージャーであるヴァレンティン(クリステン・ステュワート)は

20年前、マリアをデビュー作「マローヤのヘビ」で育ててくれた劇作家

ヴィルヘルム・メルヒォールの代わりに授賞式に出席するため

スイスのチューリッヒから、シルス・マリアへ向っていました

その列車の中でヴィルヘルムの突然の死を知ります




そのパーティ会場で、マリアは将来有望な演出家であるクラウスから

「マローヤのヘビ」を再演したいという申し出があります


しかしそれは、マリアが演じたシグリット役ではなく

シグリットを破滅に追いやる40才のヘレナ役への依頼でした

シグリット役には、すでにハリウッドの若手人気女優

ジョア(クロエ・グレース・モレッツ)が内定していました




マリアは「マローヤのヘビ」の上演から20年以上経った今

ヘレナ役を引き受けるべきなのか、どうか悩みます


ノーメイクのビノシュは、かなり老けて見えイマドキで言う「劣化」

だけどヘアメイクしてドレスを着ると、やはりスター

10歳以上若返り、優雅な身のこなし

元共演者で元不倫相手、嫌悪するヘンリクにも大人の対応




しかし、ヴァレンティンとふたりきりになると態度は豹変

稽古中も、読み合わせも、映画評論も

なにもかもヴァレンティンと意見が対立


しかも、いつまでも18歳の時に演じたシグリット役にこだわり

新作に「出る」か「出ない」か決めれない




そんなマリアに愛想を尽かして、消えてしまうヴァレンティン

いや、もしかしたら彼女は最初からいなかったのかも知れません

ヴァレンティンはもうひとりのマリア


美しいアルプスの山々をうねる様に進んで行く神秘的なシーンは

ドイツ山岳映画の巨匠アーノルド・ファンクのモノクロ映像を

現在の技術力を駆使し、カラー映像に折り込んだそうです

ナチス党員だったため、あまり語られることのない監督ということで

この作品で見ることができるのは貴重な体験かも知れません




ヴァレンティンがいなくなって

やっと新しい舞台に立つ決意をするマリア

客席は満員でした


そしてまた、新たな役へのチャレンジが始まります


新しい考えにも、古い考えにもいいところはある

10代から見たら50代はババアでも、80歳から見たらまだまだ若い

解釈はひとそれぞれ




クリステン・ステュワートも

クロエ・グレース・モレッツも、若くて実力派

でも、彼女らがビノシュの年齢になった時

はたして主役を演じているだろうか

映画界に残っているだろうか


若くても、老いても、死んでも、関係ない

後世に残るものこそが本物


監督の伝えたいことはそこだったのではないかと

私的解釈に至ったのでございます





【解説】allcinemaより

 「クリーン」「夏時間の庭」の名匠オリヴィエ・アサイヤス監督が、ジュリエット・ビノシュクリステン・スチュワートクロエ・グレース・モレッツという新旧実力派女優3人の豪華競演で贈る人生ドラマ。流れゆく時間の中で、いつしかキャリアの岐路に立たされた大女優の葛藤と矜持を繊細な筆致で綴る。
 チューリッヒに向かう特急列車に乗る大女優のマリア・エンダース。目的は授賞式を欠席する劇作家ヴィルヘルム・メルヒオールに代わって賞を受け取るため。メルヒオールは若きマリアを発掘し、彼女の出世作となった舞台『マローヤのヘビ』に大抜擢してくれた恩人だった。ところがそこへ、当のメルヒオールが71歳で亡くなったという悲しい知らせが入る。授賞式後のパーティでは、新進気鋭の演出家クラウスからリメイク版『マローヤのヘビ』への出演依頼を受けるマリア。しかしオファーされた役は、若き日に彼女が演じたシグリッドではなく、シグリッドに翻弄され追い詰められていく中年女性ヘレナ。シグリッド役には売り出し中の若手ハリウッド女優ジョアン・エリスが決まっていた。渋々これを受け入れたマリアは、マネージャーのヴァレンティンとスイスの山荘に籠り、役作りに没頭していくが…。