「聞いてもらえなきゃ意味がない
私は道化にだってなる」
キャッチコピーにコメディかと思いきや、そうではなく
フィクションとリアリズムを融合したセミドキュメンタリー
ヒトラーを演じたオリバー・マスッチが実際に街の人々にインタビューし
それに対していかにもヒトラーが言いそうな思想をヒトラーになりきって
圧倒的説得力と、ウィットを込めた発言で答えます
ヒトラーに対して本気で怒る人もいるものの
好意的な市民の方が多く、撮影期間中の自撮りによる写真撮影は
2万5,000回を越えたそうです
ストーリーは単純で、リストラされたテレビマンのザヴァツキが
ヒトラーの姿をした男を見つけ
最初は現代社会に馴染んでいこうとする
お茶目なヒトラーに可愛さまで感じるくらいで(笑)
現代のネット技術に感動して男泣き(笑)
Facebookを使い誰もが持つ不平不満を的確にすくいあげてき
持ち前のチャーミングとカリスマ性で人々を魅了し
人気者になっていきます
だけど犬に吠えられ、コートの裾を噛みつかれるヒトラーが
その犬を蹴飛ばし、躊躇いなく射殺するシーンに彼の残虐さを見ます
(ドイツでは犬の殺処分がゼロだそうです)
ヒトラーを人殺しと激昂するところで、私たちは我に帰ります
そこで初めて、ヒトラーがコスプレのモノマネではなく
本物のヒトラーだとザヴァツキは気が付きます
しかし誰にも信じてもらえない恐怖
人種問題、移民問題に対するドイツ人の不満や
なぜヒトラーが人々に支持されたのか、愛されたのかがわかりますし
現状の民主主義について考えるのにも良い教材だと思います
「ヒトラーはどこにでもいる」の説得力
でも低予算でブルーノ・ガンツは使えないには笑えました(笑)
【解説】allcinemaより
ムスリップしたアドルフ・ヒトラーが、モノマネ芸人と誤解されて大ブレイクしていくさまを過激な風刺で描いて世界的ベストセラーとなったティムール・ヴェルメシュの同名小説を映画化したドイツ映画。主演は舞台を中心に活躍するオリヴァー・マスッチ。監督は、これが日本初紹介のダーヴィト・ヴネント。
1945年に自殺したはずのアドルフ・ヒトラーが、なぜか2014年のベルリンにタイムスリップして甦る。やがて彼をモノマネ芸人と勘違いしたディレクターにスカウトされ、テレビ番組に出演することに。すると、ヒトラーが生きていたらいかにも言いそうな言葉で現代のドイツを斬りまくると、その“芸”の完成度が評判を呼び、彼はたちまち大ブレイク。しかも言っている内容も意外に真理を突いていると迷える現代人の心を捉え、いつしか再び大衆の支持を集め始めてしまうヒトラーだったが…。