シシリーの黒い霧(1962)



実在した、イタリア・シチリア島の山賊
サルヴァトーレ・ジュリアーノ(1922~1950)
殺害をめぐる物語

美しいモノクロ、長回しのカメラ
虐殺や、尋常じゃない戦闘シーンの画力に
捕らえられた夫や息子に駆け寄る女達の臨場感
名画というより、芸術映画

しかし内容は難しい、というより
全く訳がわからないレベル(笑)



まず、サルヴァトーレ・ジュリアーノだどういう人間だったのか
シチリア人やイタリア国民にとってどのような存在なのか
見る前に調べておくのが必須でしょう

舞台のモンテレプレは、シチリアパレルモから
17kmほど離れた山間の小さな町
第二次世界大戦ころには連合国が侵攻
山賊となったジュリアーノたちは独立運動を軸に
マフィア、憲兵、警察を巻き込み、多くの掠奪や殺害を繰り返しました



だけどその奪った金品は、貧しい人々に分け与え
シチリアで生活に苦しむ人々からは
シチリアロビンフッド」「モンテレプレの王」と称えられる英雄でした

507月、そのジュリアーノの射殺体が発見され
映画はそこから始まります
彼は何故、どうして殺されたのか
カメラは真相を探るべく時を遡るのです



ジュリアーノの民衆からの人気に、政界も警察もマフィアも便乗
ジュリアーノと手を組んで、利用したのでしょう
だけどジュリアーノがそんな「真実」を語ったら困る大物たち

ジュリアーノを逮捕しようにも、シチリアの人々は団結し見つからない
らちが上がらない憲兵は、全てのシチリアの男たちを捕まえるものの
それに反乱する妻や母親にお手上げ状態



ついにジュリアーノの暗殺を任せられたのは、ジュリアーノの腹心であり
従兄弟のピショッタでした

誰より信頼していた相手に殺されてしまうジュリアーノ
銃で撃たれ、裏庭のような場所に惨めな姿で捨てられてしまう
咽び泣く母親



そのジュリアーノを殺したピショッタも、刑務所の監房で
コーヒーに毒を盛られ、断末魔の叫びをあげながら死んでしまいます
結局、ピショッタもジュリアーノの暗殺に、ハメられて利用されただけ

ジュリアーノが書いた「手紙」を託した「先生」とは、一体誰なのか
マリリン・モンローの「赤い日記」と同じ
アベ・チャンの「森友、加計問題」と同じ(笑)



謎は結局、解明されないまま終わります

イタリア政府が何年もかけ、フィルム修復をし
スコセッシ監督もマイベストに選ぶ1本

サルヴァトーレ・ジュリアーノという人物が
いかにイタリア人にとって大切なのか
これは、イタリア人のためのイタリア映画なのでしょう





【解説】allcinemaよりシシリーのある家で、サルヴァトーレ・ジュリアーノという若者の射殺死体が発見された。当局の調べによって、彼はマフィアの一員であったことが判明する。そして、彼の過去を調べていくうち、証人が殺されていく。1950年に実際に起こった事件を、社会派F・ロージがドキュメンタリー・タッチで綴ったマフィア映画。