ソウルガールズ(2012)


カントリーミュージックも、ソウルミュージックも、どちらも喪失を歌う
 でも違うのは、カントリーは喪ったものを故郷で嘆く
 ソウルはそれを取り戻そうと闘い続ける

 

実話ベースのアボリジニ版「ドリームガールズ(2006)

しかし歌手として大成功を収めるわけでもなく

黒人差別撤廃に大きな貢献を果たすという偉人伝でもなく

女性としての幸せを求めるという、あくまで個人的で素朴な物語

 

映画として観るには物足りないですが(笑)

作りこみすぎていないところは好感が持てます
 

1968年、オーストラリア

ゲイル、シンシア、ジュリーの三姉妹は

幼い頃からカントリー・ミュージックが大好きで歌ってきました

スター歌手になることを夢見て、町のコンテストに出場

素晴らしい歌唱力でマール・ハガードを歌います

 

しかしアボリジニ居留地から来た彼女らは

審査員に悪意に満ちたコメントで迎えられ

下手くそな白人女性が優勝するのです

 

しかしショーの司会者デイヴだけは彼女たちの才能を評価します

そして姉妹の音楽ディレクター兼マネージャーを引き受け

ベトナム戦争の慰問歌手のオーディションに参加するため

カントリーではなくアメリカ軍の黒人兵士に受けそうな

ソウルの歌い方を教えます
 

白人として生活している従姉妹のケイもメンバーに加え

4人は「サファイアズ」として活躍するのです

 

オーストラリアは最近まで白豪主義を唱え先住民を迫害し

なんと1920年代にはアボリジニは絶滅の危機になったそうです
そして1869年からアボリジニ色の白い子どもたちを親元から誘拐し

アボリジニとしてのアイデンティティをなくするため

白人として教育するとい政策を取っていました

 

そんな子どたち「盗まれた世代」と呼ばれ

従兄弟のケイもそのひとりでした

その盗まれた世代を扱った映画が「裸足の1500マイル」(2002)

併せて見ると、より当時のアボリジニへの迫害がわかりやすいでしょう

 

でもこちらの作品にはそんな迫害の暗さはありません

ステージシーンは華やかで見ごたえがあり、ソウルミュージックを堪能

メンバーの女の子たちは逞しく、気が強く、口の悪さも相当なもの

特に長女のゲイルは常に仏頂面であまりの毒舌に胸糞が悪くなる

 

それがまあ終盤には、その歯に衣着せぬ物言いが清々しくなり

だんだんと可愛く見えてくるから不思議なもの(笑)

デイヴは最初からゲイルの隠れたやさしさに気が付いていたのかな

ふたりは結ばれ

 

居留地に戻ったケイアボリジニの儀式を受けます

 

人種差別や戦争のスリルといった濃い味を想像すると期待外れですが

90分という尺は見やすいですし

逆に、気軽な音楽映画として
友だちや恋人と楽しむのにはいいでしょう

 


音楽の力を武器に逆境に立ち向かった実在するアボリジニの女性ボーカル・グループの知られざる感動の実話を描き、本国オーストラリアで大ヒットした音楽コメディ・ドラマ。1960年代後半のオーストラリアを舞台に、差別に苦しむアボリジニの姉妹シンガーたちが、彼女たちの才能に惚れ込んだ自称ミュージシャンのダメ男と手を組み、チャンスを掴むべく戦火のベトナムで米軍基地の慰問巡業に繰り出すさまを、ユーモアを織り交ぜエネルギッシュに描き出す。出演は「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」のクリス・オダウド、「裸足の1500マイル」のデボラ・メイルマン、そしてオーストラリアの人気歌手ジェシカ・マーボイ。監督はこれが長編デビューのウェイン・ブレア。
 1968年、オーストラリア。アボリジニの居住区に暮らすカントリー音楽が好きな三姉妹、ゲイル、シンシア、ジュリー。スターになることを夢見てコンテストに出場した彼女たちだったが、アボリジニに対するあからさまな差別を受け、あえなく落選。そんな中、司会をしていたデイヴだけが彼女たちの才能を評価してくれた。ジュリーがそんなデイヴに声を掛ける。新聞の切り抜きを見せ、アメリカ軍の慰問に参加する歌手のオーディションを受けたいので手を貸してほしいというのだ。渋々ながらもマネージャーを引き受けたデイヴは、米兵にウケがいいからと、カントリーではなくソウル・ミュージックを歌うよう3人に要求する。こうして三姉妹は従姉妹のケイも加えてアボリジニ初の女性ボーカル・グループ“サファイアズ”を結成し、デイヴの熱い指導でソウル・ミュージックを一から叩き込まれていくが…。