さらば冬のかもめ(1973)



「あいつはこれから人生で1番楽しい次期を刑務所の中で棒に振るんだぜ

 見てられるか」



邦題がかっこいい

原題は「TheLast Detail」(最後の特派隊


物話はシンプルで、ノーフォーク基地に勤務するベテラン水兵の

バダスキー(ジャック・ニコルソン)と

マルホール(オーティス・ヤング)が

福祉好きの隊長夫人の募金箱から40ドルを盗もうとした

万引き癖のある青年メドウズ(ランディ・クエイド)を

ポーツマス海軍刑務所まで護送するというもの


設けられた期間は1週間

しかも3人分の日当付き

2日でメドウズを護送し、残りの時間を休暇に当てようと算段するふたり

しかし8年間の刑期が待っているメドウズに次第に同情していき

思い出づくりをさせてあげようとするのです




美味しいものを食べる

望んだ通りじゃないハンバーガーは突っ返す

賭け事をする

酒を飲んで酔っ払う

手旗信号

娼館での筆おろし


バカをやり、バカをやり、バカをやる(笑)




それにしても日蓮宗がそれほどアメリカで人気があったとは

そのノリたるや「南無妙法蓮華経・・・エイメ~ン!イエ~イ!!」(笑)


ドン引きするバダスキーとは逆に、すっかり感化されてしまったメドウズ

それからずっと「南無妙法蓮華経」と唱え続けます




今までの人生、メドウスには目標とか楽しみがなかったんだろうな

こんなふうに本音で本気で話せる友人もいなかったんだろうな


メドウスがあんな行動を起こさなければ

ひょっとしたらふたりも彼のことを逃がしたかもしれない

でも結果的にそれが「できなくなってしまった」

自由と欲を知ってしまった皮肉と悲しさ




融通がきかない海軍の上官

従わざるを得ない下士官の無力

これが現実なのです


虐待の責任を問われても、脱走なぞしてませんと言い切るバダスキー

これが男だよ


檻へと連れて行かれるメドウスの背中を見つめるふたりの姿が切ない




ハル・アシュビー監督は編集出身ということで

オーバーラップを使ったり、場面の切り替え方がうまい

若かりし日の3人の名優のオーバーアクトしていない

自然な名演も見どころ


ただ音楽のセンスはどうかな

延々と流れるアメリカン・パトロール(笑)




アメリカンニューシネマの佳作でしょう


ただ、このニコルソンがフレディ・マーキュリーに見えるのは私だけ?(笑)


軍隊という管理下に置かれた人間のやりきれない気持ちをコメディ・タッチで描いたアメリカンニューシネマの佳作。基地の募金箱から40ドルぽっちを盗もうとした罪で8年の実刑が決まったダメ水兵を下士官2人が休暇気分で護送することになる。3人はやがて奇妙な連帯感で結ばれていくが……。苦い想いを繊細な描写で描いて見せる手腕は監督H・アシュビーの得意とするところであり、主演3人の役者もそれに十分に応えている。行進曲を用いたメリハリある音楽の効果も光る。ダリル・ポニックサンの原作を、「チャイナタウン」の脚本家ロバート・タウンが脚色。N・アレンのデビュー作。