トゥルー・グリット(2010)


デュークの名作「勇気ある追跡(1969)のリメイク版
といってもコーエン兄弟は「勇気ある追跡」を一度も見ないまま(笑)
原作を彼らなりに解釈して脚本を手掛けたようです
 
ジョシュ・ブローリンという芸達者なメンバーが
再確認しないと本人とわからないほど
いつものイメージと違っているのが面白い
 
 

殺された父の仇を討つために、腕がいいとは評判だけれど
飲んだくれでロクでなしの保安官コグバーンブリッジス)を雇
14歳の少女、マティ.スタインフェルド
 
彼女の、可愛げのなさがとにかくすごい
口から先に生まれたとは、まさしくこのこと(笑)
コグバーンああいえば、マティもこう言って絶対引き下がらない
 

しかたなく彼女の仇であるチェイニー(ブローリン)を
賞金稼ぎのテキサス・レンジャー、ラ・ビーフ(デイモン)と追いかけるも
思うように足取りが掴めず、意見はあわず、ついにヤケを起こして喧嘩別れ
 
そんなとき水を汲みに行ったマティは偶然にもチェイニーに遭遇し
コルト・ドラグーンで彼を撃つものの
チェイニーの仲間であるネッド一味に捕まってしまうのです
 


マティの熱意と執念に、ついにコグバーンの気持ちが動く

彼女を救うため「真の勇気」が試される時がきたのです
 


オリジナルではラ・ビーフは力尽き

身寄りのないコグバーンに、父の墓を建てたマティが
この地に留まって一緒に暮らそうと
コグバーンもこのお墓に入れてあげると言います
だけどコグバーンは笑いながら、彼女の元を去っていくというものでした
(これがデュークよ!)
 
私はコーエン兄弟と相性がいいので、こちらも嫌いではないのですが
こちらのラストはちょっと皮肉
 

25年経ってもマティは(39歳ということか)可愛げがないままで(笑)
コグバーンに会いに行ったウエスタン・ショーの興行主コール・ヤンガーに
(ナイトホース病で)「三日前に死んだ」と笑って言われ
マティはキレます
 
そして南軍の共同墓地に葬られていたコグバーンの死体を掘り出し
列車で運び自分の家の墓に葬るのです
 

架空の病「ナイトホース病」とは、コグバーンが
「あの馬を無理に走らせて、そのうえ安楽死させた」ことに
ずっと心を痛めていたということ
 
死体を持ち帰るあたりは、町山解説を受けるならば
ネクロフィルか、それに近接するものがあるそうですが
 
私は年寄りと少女の恋物語というより
コグバーンの姿には父親的な存在感のほうを強く感じました
ブリッジスがあえてそう演じたのかもしれませんが(笑)


生きていれば老人であろうラ・ビーフのことも探し続けてたマティ

彼女の時間は、あの冒険の日々から止まってしまったのでしょう
 
正義の少女は、今や片腕のオールドミス
そして誰もが気の小さい、ただの小悪党でしかなかったのです
世の中なんてこんなもの
 
この脱力感が、コーエン兄弟のブラック
 
勇気ある追跡」とは、また違う哀愁があるので

ここは見比べず、両方楽しむのが良いと思います



 
【解説】allcinemaより

69年のジョン・ウェイン主演西部劇「勇気ある追跡」の原作ともなったチャールズ・ポーティスの同名小説を、「ファーゴ」「ノーカントリー」のコーエン兄弟が「クレイジー・ハート」のジェフ・ブリッジスを主演に迎えて再映画化。父を殺した犯人への復讐を誓い、2人の男を従え危険な追跡の旅に出たタフな14歳の少女が辿る過酷な道行きを、コーエン兄弟ならではのユーモアを織り交ぜつつ骨太かつリアルな語り口と素晴らしい映像で描き出していく。共演は「インビクタス/負けざる者たち」のマット・デイモン、「ノーカントリー」のジョシュ・ブローリン、そして新人ながらも堂々たる演技で各方面から絶賛され、みごとアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたハリウッド期待の新星、ヘイリー・スタインフェルド
 自立心と責任感を併せ持つ14歳の少女マティ・ロスは、町を訪れていた父親が雇い人のトム・チェイニーに殺されたとの報せを受け、自ら遺体を引き取りに向かうとともに、必ず父の仇を討つと心に誓う。しかし、犯人のチェイニーは法の及ばないインディアン領に逃げ込んでしまう。そこでマティは、大酒飲みだが腕は確かな隻眼のベテラン保安官ルースター・コグバーンに犯人追跡を依頼する。最初は子ども扱いしていたコグバーンだったが、マティの執念に押し切られ彼女も同行することに。やがて、別の容疑でチェイニーを追っていた若きテキサス・レンジャーも加わり、少女には過酷すぎる旅が始まるが…。