エリート・スクワッド ~ブラジル特殊部隊BOPE~(2010)



特殊部隊もののB級アクション映画のようなタイトルですが()
面白かったですね、これが未公開とはもったいない

ブラジル社会の根深い腐敗やシステムの矛盾を
静かに強く訴えかけている
ドキュメントタッチで硬派な社会派サスペンス
冒頭の「フィクションです」の表記が

よりノンフィクション感を高めていて効果抜群

ハリウッドのアクション映画のような脇の甘い商業主義が一切臭わない
骨太な現実主義的描写に、出演者の演技も素晴らしい
ミリタリーファンにもお薦めです


そこで起きたギャング同士の抗争にナシメント中佐は
暴動の鎮圧のため軍警察の特殊部隊BOPE(ボッピ)を派遣します

一方、刑務所内のギャングは交渉相手に市民活動家のフラガを指名
しかしフラガに銃を突きつけたギャングをマチアス大尉が射殺してしまいます



フラガから大バッシングを受け
政府の有力者から処分されかけるナシメント中佐
しかしブラジル国民から賞賛により州公安局の次官昇進します

その代わりにマチアス大尉はBOPEから除籍処分され
軍警察の書類整理係へと左遷させられるという屈辱的な扱いを受けます

マチアスはマスコミに内部告発をしますがそのせいで拘留されてしまい
フラガは州議会議員に当選
ナシメントはタンキ地区の警察署から盗まれた銃の行方を追っていました



暴力さ加減がハンパないですね
殴る、蹴る、生きたまま放火して殺す
ギャングならこの残酷さもまだわかる

さらに警察のロシャを筆頭とした
ミリシア(民兵)と呼ばれる汚職警官グループがギャング以上に悪い



賄賂を出さなければ、簡単に銃で撃ち殺す
秘密を知った新聞記者の女の子はレイプしてから焼き殺す
そして下っ端に真っ黒こげになった頭蓋骨から1本1本歯を抜かせるのです
彼女は死んだんじゃない、行方不明になっただけなのです

ロシャが作り出した強大な悪の「システム」と
そこで生まれた巨額な利益に乗っかって肥えていく政治家たち
人の強欲とはこういうものか



BOPEに復職したマチアスは、そんなロシャの汚職に気づいてしまう
しかもマチアスはナシメントに鍛えられた真のスクワッド
賄賂にはなびきません
当然のようにロシャに背中から撃たれて殺されてしまいます



ミリシアの陰謀と、新聞記者の殺害犯に気付いたナシメントは
思想こそ違うけれど、ただひとり潔白だと信じられるフラガと
協力しあおうとしますが

その矢先、フラガを狙ったミリシアによって息子が撃たれてしまい
瀕死の重傷を負ってしまうのです



この映画が評価されるのは
どこの国にでも起こっている、腐敗した権力者とそのシステムに
誰もが声にならない疑問を持っているという証拠

しかもリオでは権力者に逆らうということは命がけなのです
殺さなければ、殺されてしまう
救いはナシメントの息子が病院のベットで目覚めてくれたことでした



腐敗をなくしても、また新たな腐敗が産まれる
それでも自分の中にある正義感を刺激してくれる

素晴らしい作品でした



【解説】allcinemaより

本国ブラジルで大ヒットを記録した「エリート・スクワッド」の続編。治安の悪いブラジルの大都市に配置されている特殊部隊のさらなる活躍を描く。政治・警察・マフィア・スラムという歪んだ関係をフィクションとノンフィクションの間で描くミリタリークライ厶アクション!
 南米有数の犯罪都市リオ・デ・ジャネイロ。ここでは毎日のようにスラムに蔓るマフィアと、過激な捜査ゆえに“殺人部隊”の異名を取る軍特殊警察“BOPE”との抗争が繰り広げられている。刑務所暴動事件の失態から、保安局へ左遷させられたナシメント大佐は盗まれた拳銃の行方を捜査していた。すると、タンキ地区のマフィアとの繋がりを示唆するタレコミが入る。大佐はかつての部下、アンドレ・マチアス大尉と該当地区の征伐を試みるのだが…。