刑事ジョン・ブック/目撃者(1985)



英国人に気をつけろよ」


この映画で初めてアーミッシュという存在を知りました

アメリカやカナダに居住するドイツ系移民

ルター派とツヴィングリ派の新教再組織から生まれたアンマン派信徒の一派

これより規律が緩和だという宗派がモルモン教

日本でも知られていますし、信者もそれなりに多いようです




そんなアーミッシュの生活を一番よく描いているのが

新婚夫婦のために住民総出で1日で納屋を建てるシーン

男たちは大工仕事に精出し、女たちは食事の準備やレモネード配り

幾何学模様が特徴というアーミッシュキルトを縫います


このシーンで、ハリソン・フォード売れない時代

ステージなどセット作りで、大工仕事をしていたことも知られました

アメリカングラフティ」(1973)ではそれほど注目されませんでしたが

スターウォーズ」(1977)の爆発的にヒットによりスターの仲間入り

画像は1970のものということ




冒頭、アーミッシュが住んでいる村の牧歌的な風景が映し出されます

夫を亡くした若い未亡人レイチェル(ケリー・マクギリス)

幼い息子サミュエル(ルーカス・ハース

母子はボルチモアに住む妹に逢うため旅することになります

それを見守るレイチェルの幼馴染なのでしょうか

ダニエル(アレクサンダー・ゴドノフ)は好意をよせているようです




そして列車乗り継ぎのフィラデルフィア

トイレに入ったサミュエルは偶然、殺人事件を目撃してしまいます

殺されたのはひとりの刑事でした

担当させられたのはジョン・ブック警部(ハリソン・フォード


サミュエルは犯人は麻薬課長のマクフィー(ダニー・グローヴァー

に間違いないとブックに評言します

警察本部からは押収された大量の麻薬が消えていました

そのことを本部長(ジョセフ・ソマー)に伝えるブック

その時から母子とブックは警察から命を狙われることになってしまうのです




サスペンスなのか、恋愛ものなのか、アクションなのか
中途半端で、あまり印象には残らない作品だったのですけれど()

いくつかの心地いい場面には、今見ても惹きこまれるものがあります


最初はブックを受け入れていないレイイェル

しかし納屋で息子の遊び道具を作るブックに飲み物をもっていき

それが口からこぼれて喉を伝わって流れる


ブックが修理している車のカーラジオから突然流れる

サム・クックの「ワンダフル・ワールド」

思わずダンスしながら、見つめ合うふたり

アーミッシュは讃美歌以外の歌を聞いてはいけない)




お互いを好きになる
だけどそこに立ちはだかる、共同体内の秩序や掟

コミュニティから排除されてしまう恐ろしさ

自分の感情のまま行動できないもどかしさ

そして、結局アーミッシュの人々が危惧していた通りに

ブックはアーミッシュの村に危険と暴力を持ち込んでしまうのです


ブックとレイチェルの、別れの言葉を言わない別れのシーンもいい

去っていった車が一瞬止まる

それだけで彼のためらいが感じられるのです





自分に問うたのでしょう

自分はアーミッシュの村でやっていけるのか

彼女は都会でやっていけるのか

所詮無理なこと


そして、向こう側からやってくるダニエル

うまいラストです


刑事ものとしては物足りなさを感じますが

ヒューマンドラマとしては、佳作に違いありません




【解説】allcinemaより
殺人現場を目撃した少年とその母親、二人を守る刑事、というありがちなストーリーも、設定とキャラクターを書き込むだけでこれだけ豊かな作品に仕上がるという良い例。事件に巻き込まれた親子は、宗派に背くことなく戒律を重んじ前近代的な営みを続ける“アーミッシュ”と呼ばれる異文化の人だった。傷つきながらも親子を村へ送り届けた刑事は、体が治るまで滞在しアーミッシュの人々と触れ合うが、敵の刺客も迫っていた……。