ビューティフル・マインド(2001)


 
 
「数学者が戦争を勝たせた
 数学者が日本軍の暗号を読み解き、数学者が原爆を作った
 今、ソ連共産主義で世界を支配しようとしている
 アメリカはアメリカの諸学問の具体的成果を
 世界に見せつけなければならない
 次のモールスは誰だ
 次のアインシュタインは誰だ
 自由と民主主義の守り手として新しい理論を創造しろ
 プリンストンへようこそ」
冒頭でのプリンストン大教授の言葉


 

 「彼の研究を監察した」
 「どの研究?」
 「あれか」
 「簡単に言うな」
 「だが終戦に」
 「15万人が瞬時に灰と化した」
 「犠牲は付き物だ」
主人公と政府役人のオッペンハイマーの研究についての会話
 
 
 
プリンストン大学院の数学科に入学
彼は「この世の全てを支配できる理論を見つけ出したい」
という願望をもち一人研究に没頭していきました
そしてナッシュ均衡」というゲーム理論に関する
画期的な理論を発見するのです

 


2001年頃は育児に追われ、映画を見る時間はほとんどありませんでしたが
ラッセル・クロウが好きだったので(珍味好き 笑)
エド・ハリス様も出ていますし(そして枯れ専 笑)
これはしっかと見ました
 
でも2度目に見たほうが、良くできた作品であることがわかりました
下手をすれば主人公と一緒に訳がわからなくなりそうな
しかも134分という長さで中だるみしそうなこの物語を
中盤からはサスペンスタッチとして膨らませ緊張感を維持し
そして非常によくできた「仕かけ」で何度も驚かし
最後には夫婦愛に感動させられる
 
これだけの内容を、よくここまでうまくまとめ上げたものだと
脚本の上手さとロン・ハワードの手腕に拍手を贈りたい


そして2度目に見た時のほうが、これは偉人の伝記だけではなく

統合失調症」の人たちの苦悩と、それを支える家族の苦労を
理解して欲しいというのが最も重んじたるテーマではないかと
気が付いたのです

 


奇怪な行動をとるナッシュは
大学でまわりの人間から理解されませんでした
そんな彼の味方になり、励ましてくれるのは
親友チャールズ(ポール・ベタニー)でした
 
そんなある日、数学の才能を国のために役立てて欲しいと
MITのウィーラー研究所と言う軍事施設に採用されたナッシュに
国防総省の役人であるパーチャー(エド・ハリス様)が訪ねてきて
ソ連の暗号解読という極秘の任務を依頼されます


極秘任務にのめりこみすぎ、次第に追い詰められていくナッシュ

不審に思った妻のアリシアジェニファー・コネリー
ローゼン医師に相談し、ナッシュは入院することになります
そして極秘の任務が妄想だと告げられるのです
 
 
もし私が、あなたが、突然「統合失調症」だと
今見えているものが、長年の親友が、妄想だと言われて納得するでしょうか
その言葉を信じることができるでしょうか
 
ナッシュは腕に埋め込まれたチップをえぐり出し
妄想でないことを確かめようとします
チップは見つかりませんでした
 
そのため辛く厳しい闘病生活を行うことになり
自宅療養となったあとは
薬のせいでなにもやる気がおきず
性的にも不能になってしまいます
 
 
仕事がないせいで経済的にも困窮し
アリシアのストレスも限界に達してしまう


頭を働かせるため、アリシアとの夜の生活を取り戻すため

ナッシュはこっそり薬を飲むのをやめます
しかしそのことで再びパーチャーは現れ
ナッシュはまた暗号解読を始めてしまいます
妄想のせいで我が子まで溺れて死なせそうになり
アリシアは家を出ようとします
 
 
マーシーがいつまでも年を取らない」
 
やっとパーチャーもチャールズも妄想だと悟ったナッシュは
苦しみながら、もう二度と彼らを相手にしないと誓うのです


だけど「時々彼(チャールズ)と話をしたい」と、こぼすナッシュ

彼にとっては妄想だけど、妄想ではない
すぐそばにいる友を見て見ぬふりをするのはつらい


ナッシュは古巣であるプリンストン大学に復帰します

統合失調症」が治ることはなく
まわりの学生から奇怪な目で見られ、笑われる
 
それでも図書館で研究を続け、時は流れて1978
ナッシュはひとりの学生に話しかけられたのをきっかけに
教鞭をとる決意をします
そして1994年、彼の研究は認められノーベル経済学賞受賞するのです

長年の苦労と苦悩がやっと報われたと
やはり嬉しい気持ちになります
でもそれよりもっと良かったのは、カフェでペンをもらう瞬間
やっとまわりの人たちに、認めてもらえたのです
天才とは早すぎた発見をするもの
 
 
統合失調症」とは妄想や幻覚だけでなく
多岐にわたる症状や経過をたどるそうですが
なんと約120人に1人は発症する身近な病気なのだそうです
「精神病」などと呼ばれ、つい他人に危害を加える
怖い病気のように思ってしまいますが
正しい知識をもち、差別や偏見をなくしていかなければならないという
強いメッセージを感じました


20155月、ジョン・ナッシュさんはタクシーで移動中交通事故に遭い
妻のアリシアさんと共に亡くなられたそうです
ナッシュさん86歳、アリシアさん82
 
訃報を知ったラッセル・クロウ
「非常に驚いております
ジョンとアリシア、そしてご家族に心からお悔やみ申し上げます
お二人の素晴らしいパートナーシップ
ビューティフル・マインド、ビューティフル・ハーツ」
と追悼の意を表したそうです
 

 
ただ冒頭の言葉の通り、1940年代は
科学者の頭脳は戦争に勝つため、と考えられていたのですね
発見や発明は平和のために使って欲しい
この作品にはそんな願いも込められていると信じたいです
 

 
【解説】allcinemaより

集団における個人の意志決定メカニズムを定式化した“ゲーム理論”を構築し、後の経済学理論に大きな影響を与えノーベル経済学賞を受賞した実在の天才数学者の数奇な人生を「グラディエーター」のラッセル・クロウ主演で映画化した人間ドラマ。共演はエド・ハリスジェニファー・コネリー。監督は「アポロ13」のロン・ハワード。第59ゴールデン・グローブ賞では作品賞、主演男優賞はじめ4部門を獲得。
 19479月、プリンストン大学院の数学科に入学を果たしたジョン・ナッシュ。彼の頭にあるのは「この世のすべてを支配する真理を見つけ出したい」という欲求のみ。ひとり研究に没頭するナッシュは次第にクラスメートからも好奇の目で見られるようになる。しかし、ナッシュはついに画期的な“ゲーム理論”を発見する。やがて希望するMITのウィーラー研究所に採用され、愛する人と結婚もしたナッシュ。しかし、米ソ冷戦下、彼の類い希な頭脳が暗号解読という極秘任務に利用され、彼の精神は次第に大きなプレッシャーに追いつめられていく……。