ミスター・ノーボディ(1974)





思えば私の時代は誰もが夢に生きる愚か者で
早撃ちで何でも解決できると信じていた
昔の西部は広大で、同じ人と再会することがなかったからだ


実質的にも最後のマカロニウエスタンと言われているそうで
見事に有終の美を飾った作品だと思います
見ていてワクワクしました()


早撃ちの名手と知られるガンマン
ジャック・ボレガード(ヘンリー・フォンダ

西部中にその名をとどろかせた彼にも、引退を考える時が来ます
しかし彼を倒し名を上げようとするガンマンたちにいつも命を狙われ
油断することは許されません

そのためボレガードはヨーロッパ行きの船
Sundowner=落日、引退の意)に乗り
アメリカを脱出する決意をすることになります





そんなボレガードの前に現れた若きガンマン
自称”ノーボディ(誰でもない)”(テレンス・ヒル

ノーボディは150人のワイルドバンチにボレガードが1人で立ち向い
ボレガードの名を不滅にし、歴史に刻むのだという願望を持っていました

人には信じるものが、ヒーローが、伝説が、必要なのだと





もしかしたら、ノーボディとは
全てのウエスタンファンや、ムービーファンなのではないでしょうか

私たちも信じるものや、ヒーロー
伝説を求めて映画をみるのだから


しかもセルジオ・レオーネ「ウエスタン」(1968)セルフパロディ
冒頭では、3人の馬に乗った悪党にあの駅の爺さんまで出てきますし
モコリーネのスコアも、「ウエスタン」をもじってる風(笑)

サム・ペキンパーは(オレより時代遅れだと言いたいのか)
早々と墓に葬られています()

だけどちゃっかり「ワイルドバンチ」(1969)はイタダキ()
ワルキューレの騎行」は「地獄の黙示録(1979)で有名になりましたが
その5年も前に使っているセンスの良さ






駅のトイレの運転手は前立腺が悪いのでしょうか(笑)
ここらへんを笑えるかどうかもこの作品の評価がわかれるところでしょう
後半で度々出るクイック・モーションも「え?」と思ってしまいますが
製作費によるフィルム代の関係などがあったのでしょうか

伝説の男を、真の伝説にするためには?
それは引退の「花道」





ノーボディに振り回され、挙句の果てには150人のワイルドバンチ
戦わざるを得なくなるところまで追い込まれてしまったボレガード
だけどボレガードが老眼鏡をかける顔はかなり嬉しそう
そして派手な鞍の意味が明かされます

「時代は変わってしまった私にとっては居心地が悪くなってしまった」
ラストの手紙は、そのままレオーネの思いが
綴られていたのではないかとます





散髪屋から始まり、散髪屋で終わるこの作品
そして偽者につきつける銃も、本物から偽物に代わるという
ガンマン時代の終わりを告げる、見事なエンディング
ヘンリー・フォンダとテレンス・ヒルの対比も素晴らしい


そして私も”ノーボディ”のひとり
この映画に敬意を払わずにいられますでしょうか

何度でも見たい
お気に入りにさせていただきます



【解説】allcinemaより
伝説の老ガンマンの前に現われた風来坊。その男はいつの日か、無敵と謳われたガンマンを自分の手で倒したい、と語りながらも、老ガンマンとの対決を何故か避けようとする。果たして、彼の真意は……? 生ける伝説のガンマンにH・フォンダ、不思議な風来坊にT・ヒルを配し、脳天気な音楽にのってほのぼのと展開するコメディである。