フェリーニに恋して(2016)





原題は「INSEARCH OF FELLINI」(フェリーニを探して)

脚本家が若い頃にフェリーニに会いに行った時のエピソードを

監督が気に入り映画化したということです


「道」(1954)甘い生活」(1959)「81/2」(1963)カサノバ」(1976)

できればこの4本は抑えておいたほうが

監督のフェリーニ愛がより理解できるでしょう



母親から外の世界から遮断され、過保護に育てられ

大学へも行かず、働いたことも、異性と付き合ったこともない

20歳のルーシー(クセニア・ソロ)


映画の仕事をしようと、一念発起でクリーブランドへ行ったものの

それはポルノ映画のオーディションでした、そこから逃げ出したルーシーは

ザンパノの姿をした男性によって導かれた劇場で、「道」を見ることになります




キ印がジェルソミーナに語る「小石」のエピソードは本当に素晴らしいシーン

いままで母親にジェームス・スチュアートの「素晴らしき哉、人生」のような

古き良きアメリカ映画しか見たことのなかったルーシーは

「道」に感動し、フェリーニの映画のとりこになってしまいます

そしてイタリアにフェリーニを訪ねる決心をするのです


なんといっても世間知らずのお嬢様の、ナンパの国イタリア一人旅

ローマを目指すも着いたのはヴェローナ、しかも荷物は行方不明

夢か現実か、フェリーニの幻想の世界に迷い込み街を彷徨う

その姿はあまりにも無防備すぎてヒヤヒヤします(笑)




フェリーニ作品の映像はもちろん

フェリーニの世界から飛び出してきたかのような

キャラクターたくさん登場します

ヒロインの衣装やメイク、表情はジェルソミーナ

パーティでルーシーが出会う映画監督は「81/2グイド

終盤仮面舞踏会は「カサノバでしょう


そこでルーシーはひとりの男性と出会い、恋をします

飲んで、食べて、キスをして、抱き合う

(彼は幼い頃別れた初恋の相手なのでしょうか)




ついにフェリーニとのアポにこぎつけ

再びローマに向かおうとしますが

またしても到着したのはローマではなく、ヴェネチアでした


旅先ではハッピーなことばかりではなく

怖い人間もいれば、時には汚れ傷ついてしまうこともあります

それでもチャンスは待つよりも、自らが掴み取るもの

(「道」にでてくるような)三輪オートをヒッチハイクし、ついにローマに到着

フェリーニの家の前にたどり着くことができました


その時、少女は大人の女性の顔になっていました

もう旅に出た時の自分じゃない

そして旅の終わりの場所は、まわりまわって

始まった場所にっていくのです




まさしく「不思議の国のアリス」というか「フェリーニの国のアリス」

白ウサギよろしくのザンパノ、アリスはジェルソミーナ=ルーシー

自分の憧れの舞台に迷い込むというという設定は

ミッドナイト・イン・パリ」(2011)が好きな人も気に入ると思います


そしてヒロインは「道」という1本の映画との出会いのおかげで

人生の全てを変えることができました

映画には見るだけじゃない、人を大きく変えるチカラもあるのです



私もイタリア旅行をして、フェリーニの迷路に迷い込みたくなりました





【解説】allcinemaより

アニメ「シンプソンズ」の声優などで活躍する女優ナンシー・カートライトが、自身の若き日の実体験を基に書き上げた脚本を「ブラック・スワン」のクセニア・ソロ主演で映画化した青春ドラマ。母親に大切に育てられてきた箱入り娘の20歳のヒロインが、初めて観たフェリーニ作品に心打たれ、イタリアに飛んでフェリーニゆかりの地を巡る一人旅を通して成長していく姿をさわやかに綴る。共演はマリア・ベロメアリー・リン・ライスカブ。監督は本作が長編デビューとなるタロン・レクストン