「政夫さんは、リンドウの様な人だわ」
80年代を代表するスーパーアイドル松田聖子ちゃん
どうせただのアイドル映画だろうと期待していませんでしたが
意外にも映画としてきちんと作られていていました
むしろ予想以上に良かったと言えます
舟と舟のすれ違い、行灯や引き戸などを効果的に配置した屋内
綿摘みするための遠出、美しい夕景の数々
開放的なロケーションと撮影が素晴らしく、正統派の演出
主演ふたりのド素人で下手な演技も
逆にほほえましく感じてしまいます(笑)
醤油の醸造業を営む旧家の息子、政夫が十五歳のとき
病弱な母きくの世話をするため
従姉で二つ歳上の十七歳の民子が
住み込みでお手伝いにきました
ふたりは、幼い頃から大の仲良し
しかしそろそろ年頃のふたりが親密でいることは
奉公人たちのやっかみを買い、噂になります
そのことがかえってふたりの想いを強くさせてしまいます
やむを得ずきくは政夫を全寮制の中学に入学させ
その間に民子を嫁に出そうとします
ところが民子が嫁に行った先の姑は
嫁をこき使う鬼ババアだったのです
だから単純に感動できます
そして聖子ちゃんと張り合う、勘違いおばさんの樹木希林がもう最高
「民子さん、民子さんて、そんなにも民子さんが良いのかね
でも本当はやさしく、嫁入りに泣く民子に上着を羽織ってあげたり
政夫に知らせに行くシーンではジーンときます
間に合わず、声だけが届いたほうが
もっと悲壮感が生まれたような気がします
私は運よく虐められてはいませんが、私の職場にもいます
準備段階で言えばいいのに、その時その場になってから
あれもできないのか、これもできないのかとまくし立てるのです
流産しても病院に連れて行かなかったのでしょう
何も処置されず、民子は死んでしまいます
昔はこういうことが多くあったと思います
これは若いふたりの純愛でもあるけれど
それよりも残された人間の後悔と懺悔の物語なのでしょう
だから冒頭のお遍路のシーンにつながる
非常にがっかりしました
伊藤左千夫による同名小説の三回目の映画化。宮内婦貴子が脚本を書き、澤井信一郎がメガホンをとった。松田聖子の映画デビュー作であり、澤井の監督デビュー作でもある。
遍路の旅に出た老人の斎藤政夫は、旅の途中で自分の過去を振り返っていた。自分が十五歳のとき、病弱な母きくを看病するため、従姉で十七歳の民子が家に住み込むことに。二人の仲は親密になり、その噂はやがて家の外にまで聞こえるようになっていた。母からあまり会わないようにと言われ、政夫ときくはお互いに恋心を抱いてしまう。やがて二人を中傷する声が聞こえてきたため、きくは政夫を全寮制の中学に入れ、その間に民子の縁談を進めるのだった。そのことを知った政夫は急いで戻るが、すでに民子は花嫁に行った後だった。