原題は「TOUCHINGTHE VOID」(空に触れる)
1985年に実際に起こった山岳遭難事故を
当事者のインタビューを織り交ぜたドキュメンタリー風な再現ドラマ
冒頭から生還者であるジョーとサイモン、キャンプで待機していた
リチャードが解説をするというネタバレなので
あまり入り込めず見るのをやめようかなと思ったのですが
中盤からはグッと引き込まれました
英国人のジョーとサイモンのふたりは登頂には成功するものの
下山中に雪庇がおこり、滑落したジョーは右足を骨折してしまいます
実は登山で起こる事故の80%は下山時にあるというのです
しかしその時点ではサイモンはジョーを見捨てることはできませんでした
二人はお互いの体をロープで縛り、ジョーがロープの長さだけ滑べり落ち
落ちた地点にサイモンが合流するという方法を繰り返しながら下山しました
しかしジョーが氷壁に宙吊りになってしまい、吹雪で視界はきかず
サイモン声も届かない
ジョーを支えるサイモンの体力も限界に近づき
サイモンは覚悟を決めついにロープを切ります
ジョーは45m落下しますが、命はとりとめることができました
氷壁を登ることは不可能で、地下に降りることを決意
偶然にも出口を見つけ、激痛に耐え這いずりながら氷堆石帯まで脱出
そこからは片脚と、杖代りのアイスバインで転がりながら移動し
9㎞の距離を5日間かけキャンプに辿り着くことに成功したのです
骨折の痛み、極寒、飢餓、絶望感、死への誘惑
その苦難は見ているだけでも過酷極まりないもの
なのに頭の中で流れるのは好きでもない
”ボニーM”(ドイツ出身のディスコバンド)の曲が鳴りやまないとか(笑)
幸運にもサイモンはキャンプを去らずに残っていました
ジョーには「生きる」という運命が待っていたのです
彼らは奇跡の再会を果たすことができました
現地で撮影し、クレバスも本物
アイゼンとアイスバイルの大写しを巧みに使い分けていて
山岳美も素晴らしく、山岳映画では最高だということです
空撮で映る姿は俳優ではなく、本人たち
ザイルを切ったことを、お互い理解しあえたとしても
あのときジョーを見捨てたことは、ふたりの思いやその後の人生を
大きく変えたのではないかと思います
でも、この映画の撮影のおかげで再会でき
再び一緒に登山できたことは本当に良かった
ただ実際の事故から、かなりの年月を経ている為
インタビューのほうは少し冗談交じりになっています
それでも、山岳遭難事故の恐怖、人間のもつ生命力、生きる喜び
そして後悔と懺悔の気持ちはよく伝わりました
娯楽色の少ない映画ですが、オススメはできると思います
【解説】allcinemaより
アンデスの過酷な雪山でザイルに繋がれたまま遭難した2人の登山家の奇跡の生還劇を、当事者たちのインタビューと迫真の再現ドラマで描き出した真実の物語。ジョー・シンプソンのベストセラー・ノンフィクション『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』を映画化。監督は99年の「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したケヴィン・マクドナルド。
1985年6月、野心溢れる若き英国人クライマー、ジョー・シンプソンとサイモン・イェーツは、アンデス山脈の難関、標高6600mのシウラ・グランデ峰に挑んだ。ほぼ垂直にそびえる西壁はいまだ誰も成功したことのない未踏のルート。それでも2人は数々の困難を乗り越え、ついに西壁を制覇し登頂に成功する。しかし、悲劇は下山途中に起きた。細心の注意を払って下山する彼らを自然の猛威が襲う。そしてついにジョーが数10メートル滑落してしまう。滑落時の衝撃で片脚を骨折してしまうジョー。雪山での大ケガは、即、死を意味した。事態の深刻さに言葉をなくすジョーとサイモン。意を決したサイモンは互いの体をザイルで結びつけ、無謀な単独救出を試みる。しかし視界不良の中、懸命の救助を続けるサイモンだったが、そこで再びアクシデントが発生、ジョーの体は垂直の氷壁で宙吊りとなってしまうのだった。2人をつなぐザイルは張ったまま、引き戻すこともそれ以上下へ降ろすこともできなくなる。このままでは2人とも死んでしまう。サイモンは運命の決断を迫られる…。