陽はまた昇る(2002)

 

 

「何事も、人、ですなぁ」
 
 
2000年に放送されたNHKプロジェクトX~挑戦者たち」で
「窓際族が世界規格を作った~VHS・執念の逆転劇~」と
紹介されたエピソードの映画化ということ
 
VHS・ベータ戦争をもとにした実話+フィクション
西田敏行演じる加賀谷静男は「VHSの父」と称される
高野鎮雄(192392)がモデルだそうです
 
 
若い頃はずいぶんレンタルビデオ屋さんに通いました
店内で映画やミュージックビデオのジャケットを見て回るだけで
時間があっという間に過ぎてしまいました()
 
だけど、ビクターがVHSの生みの親だということは
この作品を見て初めて知りました
 
 
高卒で開発一筋、しかも定年も間近の男が
ビクタービデオ事業部部長就任の辞令を受けます
しかし社内ではビデオ事業部の部長就任は
クビ同然と囁かれていました
 
そして、リストラが経営であるかのように語られた時代
社員をだれひとりリストラしないという信念の元
敢えて開発に打って出るのです
 
技術者が自ら営業にいく(商品知識があるため)という手法を立て
困難を知恵と努力で乗り切る
その姿勢はやがて社員たちにも伝わっていきます
 
徹夜で泊まり込みの作業、サービス残業でしょう
夢と情熱を最後までもち、ついにVHSの開発をやり遂げるのです
しかし販売までにはさらなる困難がありました
加賀谷松下幸之助に直訴に行くことにします
 
やはり松下幸之助さんの発言力は、当時の家電業界では
相当なものだったのではないでしょうか
松下さんが「いい物」と言ったら、それは「いい物」なのです
 
 
しかしSONYにも同じくベータ開発までには
凄まじい努力があったはずなのです
SONYとの確執や、SONY側から見た展開や
開発に当たるメンバーにもスポットライトを当てたなら
もっと共感できた気がします
 
 
 
 
それでも「人と人との繋がり」が
「成功に繋がる」という結果はやはり感動しました
人間にはハートがあって、ハートで人を動かすことができるのです
 
 
この作品を見ている途中、息子が
「おかあさん、ビクターって何?」と質問してきたのです
今の子はビクターを知らないことに驚きました
ステレオやコンポも知らないのです
 
調べたところ、価格低下、ノンブランドの台頭、商品サイクルの短命化
DVDレコーダーの欠陥による損失、ブランドイメージの悪化によって
2004年には赤字転落
2005年度には306億円の当期純損失
 
2007年、ケンウッドとビクターでJ&Kテクノロジーズ株式会社を新設
2008年、JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社を設立
2011年、株式会社JVCケンウッドに吸収合併され
日本ビクターは84年の歴史に幕を下ろしたということです
 
この成功の後の凋落ぶりも、また物語だと感じました
 
80年代~90年代に現役でサラリーマン生活をしていた男性が
この映画を見たら、もしかしたら
泣いてしまう方もいるのではないでしょうか
 
 


 
【解説】allcinemaより

 リストラを迫られながら一人の馘切りもすることなく、家庭用VTRの分野で当時技術的にも優位に立っていたソニーのベータマックスを打ち負かし、ついには世界標準にまで上り詰めた日本ビクタービデオ事業部の伝説の美談を映画化。この有名なベータとVHSによるVTR戦争は人気番組「プロジェクトX」でも取り上げられ、VHS側からの一方的な描写にごく一部のベータ・ファンからは疑問を呈する向きもあったものの、その単純明快な一発逆転の成功譚に多くのサラリーマンが涙した。
 家電AVメーカー・日本ビクター本社開発部門に勤める開発技師、加賀谷静男。あと数年で定年を迎える彼に、横浜工場ビデオ事業部への異動命令が下りる。そこは赤字続きの非採算部門。加賀谷に課せられた指令は大規模なリストラだった。しかし、加賀谷は従業員たちに向かって夢だった家庭用VTR開発の決意を打ち明ける。しかも一人の馘も行わないというのである。それを聞いた次長の大久保は止めに入った。それもそのはず、本社がリストラ対象の赤字部門にそんな計画を認めるはずもない。ましてや、この時、家電メーカーの雄・ソニーが商品化にあと一歩の所まで漕ぎ着けていたのであった……。