黄金のアデーレ 名画の帰還(2015)

 
邦題でネタばれしていますが(笑)
 
オーストリアを代表する画家、クリムト
彼が残した名作、「アデーレ・ブロッホ=バウワーの肖像Ⅰ」
別名「黄金のアデーレ」
 
 
これもまた間接的にナチスドイツの悪辣非道を
一方的に取り上げた作品ですが
強奪された美術品を取り戻す物語と言うより
自らの祖国に憤りしか抱けなくなった老女の物語でした
 
確かに戦時「黄金のアデーレ」等、アデーレ一家の資産は
ナチスに略奪されたそうですが、戦後1945年に
アデーレの夫であるフェルディナントに返還されているそうです
そしてアデーレ本人の遺言によりオーストリア・ギャラリーに寄贈されたそうです
 
 
 
本作を見るとオーストリアの対応がいたらなく、腹立たしく思えましたが
そういうことならば、なぜオーストリアが画を返還しようとしないのか
アデーレの実姪であるマリアが途中で諦めようとしたのかもわかります
 
マリアの依頼を引き受けた、ロースクール奨学金返済に追われる駆け出し弁護士
最初はクリムトの画の額の大きさにだけで仕事を始めたものの
次第に彼のほうがマリアより画の返還に熱くなっていきます
 
 
陰険なオーストリア政府側が負けるラストは小気味良いですが
オーストリアの評議会が、自分の国がした事を正視し
マリアに絵画を返すと決定した事実は立派だと思います
 
戦争が終わってから何十年も過ぎたというのに
いまだに同じ国の国民が敵になって戦うのは悲しい
でも、マリアはすでにオーストリア政府を許すことが出来なくなっていました
 
 
 
アメリカに渡ってきた「黄金のアデーレ」はまもなく
化粧品メーカーであるエスティローダーの社長(当時)
ロナルド・ローダーに史上最高値の156億円(1億3500万ドル)で落札され
ニューヨークのノイエギャラリーに展示されているそうです
 
 
「国民の宝」として崇められてきた「黄金のアデーレ」が
オーストリアを離れたあと、このように売却された事実を
オーストリア人はどう受け止めたのでしょう
 
名画になってからさえも
ユダヤ人は祖国を追われる宿命なのかもしれません
 

【解説】allcinemaより
 クリムトの名画“黄金のアデーレ”が辿った数奇な運命に秘められた驚きの実話を映画化した感動のドラマ。ナチスに略奪された“黄金のアデーレ”の正当な持ち主として名乗り出た82歳の女性マリア・アルトマンが、駆け出し弁護士ランドル・シェーンベルクとともにオーストリア政府を相手に一歩も引かない返還闘争を繰り広げるさまと、激動の時代を生きたマリアとその家族の物語を描く。主演は「クィーン」のヘレン・ミレンと「[リミット]」のライアン・レイノルズ。共演にダニエル・ブリュール、タチアナ・マズラニー、ケイティ・ホームズ。監督は「マリリン 7日間の恋」のサイモン・カーティス
 ユダヤ人女性のマリア・アルトマンは、ナチスに占領された祖国オーストリアを捨て、夫フリッツとともにアメリカへの亡命を果たす。1998年、82歳となったマリアは亡くなった姉ルイーゼがオーストリア政府に対してクリムトの名画“黄金のアデーレ”の返還を求めていたことを知る。それはマリアの伯母アデーレの肖像画で、第二次世界大戦中にナチスに略奪されたものだった。マリアは姉の思いを受け継ぐことを決め、駆け出しの弁護士ランディに協力を仰ぐ。しかし、その名画は“オーストリアモナリザ”と称される至宝。オーストリア政府にこれを手放す気は毛頭なく、マリアとランディの闘いは困難かつ長い道のりとなっていく。